第9回「忘れられない看護エピソード」朗読会

“近代看護教育の母”と呼ばれ近代看護の礎を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日5月12日は「看護の日」に制定されている。同日は「看護の心」「ケアの心」「助け合いの心」を老若男女問わず誰もが育むきっかけとなるようにと、旧厚生省時代の1990 年に制定された。それ以来、5月12日を含む日曜日から土曜日までを「看護週間」と定め、毎年各地で看護に関連したイベントや活動が実施されている。

この看護週間にあたる5月15 日、公益社団法人日本看護協会は日本大学病院にて「看護の日」PR大使の須藤理彩さんを迎え、第9回「忘れられない看護エピソード」朗読会を開催した。患者さんに最も近く、最も頼りになる看護師さんたちが持つ忘れられないエピソードとは? 気になる人も多いと思うのでその様子をお伝えしよう。

■受賞作品を通じて看護の心を感じてほしい~日本看護協会専務理事~
この朗読会に先立ち、主催者を代表して日本看護協会専務理事勝又浜子氏による開催の挨拶があった。
「この朗読会や“忘れられない看護エピソード”の受賞作品を通じて看護の心を感じていただけたらと願っております」と勝又専務理事。

日本看護協会専務理事勝又浜子氏
日本看護協会専務理事勝又浜子氏

引き続き、日本大学病院看護部長である木澤晃代氏が挨拶に立った。
「突然に病気や怪我が起こったことで、患者さんたちは体だけでなく心もバランスを崩します。この影響は、患者さんたちだけでなくて、ご家族の皆さんにも非常に大きな影響を与えます。看護とは、誰かが苦しいときや辛いとき、そして困ったときに、すぐそばにいてあげることです。今後も看護を支える看護師がどんどん増えていかなければならないと思っています」と木澤看護部長。超ハードワークである看護師がまだまだ足りておらず、もっと増えなければならないという必要性を強調していた。

日本は超高齢化社会に突入し、病院で死ぬ人たちも増えてきた。長生きするための医療だけでなく、終わりを迎えるための医療など、医療を取り巻く環境は、昔とは異なり大きく変貌を遂げてきている。そして、どれだけ医療が進歩し、高度化しようとも、患者たちは人である。人との関わりは、やはり人が務めなければならない。その点は昔と何も変わらないのである。人と人とがつながる看護は、大変重要な仕事であることを改めて認識させられる挨拶であった。

日本大学病院看護部長木澤晃代氏
日本大学病院看護部長木澤晃代氏

■看護師たちが患者さんへ寄り添う気持ちを伝えたい
「忘れられない看護エピソード」は、厚生労働省と日本看護協会が「看護の日・看護週間」にあたり、看護職や一般の方々を対象に、看護の現場 や日常の中 で体験したエピソードを募集し、入賞作品を表彰するものだ。今回は全国各地から実に2629もの作品が集まり、厳正な審査を経て20作品の入賞が決定した。

最優秀作品を受賞したのは、
・看護職部門の「部屋の模様替え合戦」後藤史保子さん(岐阜県)
・一般部門の「お母さん」藤本清美さん(山形県)

の2作品である。この作品は「看護の日」PR大使である須藤さんが登壇し朗読した。なお入賞作品は、「第9回忘れられない看護エピソード専用サイト」で閲覧することができる。入賞した胸を打つエピソードがたくさん掲載されているので必読だ。

朗読を終えた須藤さんは「ちょっとぐっと来てしまいましたが、今日は冷静にお伝えできたんじゃないかなと思います。エピソードのケースは患者さんひとりひとり違うんですけれども、看護師さんたちの患者さんへ寄り添う気持ちがぎゅっと詰まっていたので、それをちゃんとお伝えできればなと思って読ませていただきました」とのこと。須藤さんの心のこもった朗読に、筆者を含め来場者は感動しながら聞き入っている様子であった。

朗読する「看護の日」PR大使の須藤理彩さん
朗読する「看護の日」PR大使の須藤理彩さん

■家族にも安心を与えてくれて今でも看護師さんに感謝している
朗読の後、現役看護師とのトークショーが始まった。トークショーには緩和ケア認定看護師として活動されている日本大学病院主任看護師山本恵子さんと、大学病院救命救急センターの看護師宮内美玖さんのお二人が登壇し、須藤さんと3人で看護について語り合った。

山本さんは病院で外来部門に所属しており、抗がん剤投与の管理や看護をしている。入院患者さんに対しては看護ケアチームの一員として活躍しているという。

また宮内さんは救命救急センターに所属しているとのこと。救命救急センターは救急車で搬送される患者さんを受け入れるので、重症度が高い患者さんに対応することが多い場だ。

須藤さん「救命病棟24時」というテレビドラマで救急看護認定看護師の役を演じたことがあるという。その経験を踏まえ須藤さんは「救命は戦場ですよね。(ドラマの役を演じるために実際の医師の)先生にもお話を聞きましたけれども、“本当に救命は戦場だよ”とよく言われていたので、本当に大変だと認識しています」と、救命病棟の大変さについて語っていた。

宮内さんによれば、救命救急センターはいつ患者さんが来るかわからないので、常に緊張感を持って受け入れ体制を整えているそうだ。よくも緊張が続くものだと思う。

「忘れられない看護エピソード」について、山本さんが小児科病棟の話をされた。わずか9歳という若さでお亡くなりになってしまった子供のお母さんについてのエピソードだ。お子さんが亡くなったときは毅然とした態度をとっていたお母さんだったが、3か月後に連絡がきたとき、「子供がいないのが信じられない。一緒に泣いて・・・」と言われ、そのお母さんがひどく落ち込んでいたという。そこでもっと良い看護ケアができるのではないかという思いを持って現在の病院に来たそうだ。

宮内さんの「忘れられない看護エピソード」は、入職した当時に知り合った患者さんの話だった。その患者さんに「患者さんの命を助けるのはお医者さんですが、患者と家族の心を救ってくれるのは看護師さんですね」と言われたことが、今でも忘れられず、その想いは絶対に忘れないようにしようと誓ったそうである。胸を打ついい話である。

須藤さんの「忘れられない看護エピソード」として、ミュージッシャンのご主人が入院されたときの話をされた。
「 2 か月後にライブが迫っていて、開頭手術をしてすぐにギターを持ってきてリハビリしなきゃと慌てていたんですが、そのときの看護師さんが“まずは立ち上がるところから始めましょうか”と現実に戻してくださって、そこからひと月かけて“今日はお部屋のトイレまで歩いてみましょう”“今日は廊下を歩いてみましょう”と、目の前の目標を定めてくれたんです。そういう道筋を示してくださったのが、家族にとって安心材料となりました」と須藤さん。

当時を振り返り、「主人には目標を出してくれ、家族には安心を与えてくれて今でも感謝しています」と 、そのときに看護してくれた看護師さんたちへの感謝の想いを述べていた。

現役看護師とのトークショーの様子
現役看護師とのトークショーの様子


どんなに健康な人でも、いつ重篤な事故に遭ったり、回復が難しい病気になったりするかはわからない。年を重ねるごとに、寿命が近づくにつれて医療や看護のお世話になる機会はグンと増える。また病気ではなくても、65歳以上の高齢者を同居家族に持つ家ともなれば、将来介護が必要になることも考えておかなければならない。なかなか実感の湧かない医療と介護について、あらためて考えさせられる非常に有意義な1日だった。

日本看護協会

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