アップル社が世界各国で発売したiPhone 3Gはスマートフォン市場に大きなムーブメントを巻き起こしたが、iPhone 3G登場の影響は、スマートフォンという端末市場だけではない。それ以上にiPhone 3G上で動作するアプリケーション市場が世界規模で急速に拡大している。



無償の開発ツールとインターネット経由でアプリケーションの販売・ダウンロードができるApp Storeにより、法人・個人といった区別のないアプリケーション販売ができる環境を現実化したことで、ゴールドラッシュとも評される世界的な現象が発生しているのだ。

iPhone アプリゴールドラッシュの悪夢 - インターネットコム



この世界規模で躍動する国境を越えた市場に日本から挑むサムライたちがいる。株式会社CONITは、iPhone 3Gのアプリケーション開発から世界市場へのプロモーションまで手がける新進企業だ。

彼らが世界に公開した「サムライチェス」「メロディベル」は、作品のみならずプロモーションにおいても海外メディアなどでも高く評価されている。

サムライチェスメロディベル


サムライチェス | iTunes store

メロディベル | オリジナルCM | iTunes store



■世界とダイレクトにつながっているiPhoneのアプリ市場

初代iPhoneは、5四半期をかけて約610万台を出荷しているが、最新のiPhone 3Gでは、2008年7月~9月のわずか3か月で約690万台を出荷している。初代iPhoneは米国販売だけでだったが、iPhone 3Gでは世界各国で販売されているからだ。つまり、iPhone 3Gは世界で同じ使い方ができるプラットフォームを実現したということなのだ。

CONIT 代表取締役 橋本謙太郎氏




橋本氏は「携帯はこれまで、各国・キャリアで異なる仕様であったわけですが、iPhoneは世界のどの国にもiPhoneという環境や使い方でリーチできる。国内のケータイ市場をターゲットとするより世界のiPhone市場をターゲットにしたほうが大きなビジネスチャンスがあるわけです。これが一番大きな違いですね。」と、世界で同じ端末(環境)が提供されていることが市場形成の大きな要因となったと指摘し、国内は、携帯電話の海外普及率が低いだけでなくiPhone 3Gにおいても海外と比べ出荷数に大きな差があり、こうした内外格差が市場規模にも繋がっているという。



また橋本氏は、iPhone 3Gが海外でうけいれられた要因の一つに、3G通信のほかにWi-Fiが利用できることが大きいという。米国ではWi-Fiを利用できる場所が多いこともあり、無料もしくは低料金でインターネットが利用できるケースが多いという。今後は、アップルのiPhone 3GやグーグルのAndroidのようにインターネット利用を標準とした方向に向かっていくと感じているという。

ベリングポイントがiPhoneを1000台導入 - ITmedia



■新ネット世代が開くゴールドラッシュ 明日は成功者か

なぜ、iPhone 3Gのアプリ市場はゴールドラッシュといわれるほどの活況を呈したのだろうか。また、iPhoneアプリケーションの何がこれほど人を引きつけるのだろうか。



●ゴールドラッシュを引き起こしたアップルの環境整備

中島氏は、アップルが提供する開発・配信環境が大きなポイントだと指摘する。

「iPhoneのアプリケーションは、Mac OS X付属のXcodeを使用すれば、いきなり開発ができるのです。さらに開発からApp Storeでの公開までが無料でできるので、アプリケーションができたらアップルに提出して全世界に向けてすぐに販売を開始することができるのです。こうした環境が個人プログラマから大企業まで等しく提供されていることで、iPhoneアプリ開発は個人でも大企業と同じスタートライン(土俵)に立てるのです。」



「これまでのサービスだと、たとえば携帯であれば課金とホスティングを自分で用意したうえで、審査とかも必要だったわけですが、iPhoneの場合は課金とホスティングがアップル側で対応されているので、ハードルが非常に低くなった。」と、ユーザーにとって最も面倒な配信・公開という手間が省けたことが爆発的な参加者の増加を生み出した要因だと分析する。



また中島氏は、環境だけなく、iPhone 3Gのアプリケーションにも独自開発者を引きつける魅力があるという。

「iPhoneは、プレステ(PS)以上のポリゴン性能があり市販のゲームクオリティでも動かすことができるのですが、旧来のゲームを移植するのではなく、3Gやネットインフラ、タッチパネル・加速度センサーといった独自インターフェイスを使った新しいアプリケーション作成がプログラマを夢中にさせています。また、こうした独自機能から新しいアプリケーションを生み出せた人が大きな成功を手にしているのです。人気を集めた『オカリナ(Smule)』というソフトは楽器のオカリナ・シミュレーターなのですが、「マイクに向かって息を吹きかけると音が出る」「世界のどこかで演奏されている音がネット回線を通して聴ける」といった今までのゲームにはない発想をポンと出せたことで、大成功しています。」

Ocarina - Smule | Ocarina - ダウンロード



次のページでは、世界を変えてる「新ネット世代(デジタルネイティブ)」や「インターネット時代のプロモーション」について伺った。



●新ネット世代(デジタルネイティブ)のネット力が世界を変えていく

iPhoneのアプリ市場を支える開発者と購入ユーザーは、これまでとどこが違うのだろう。

iPhoneのアプリケーションは、稚拙なアプリケーションから驚くほど高いクオリティの作品まで様々な作品がある。こうした品質の差を橋本氏は、個人としてのプロとアマの開発者の混在が生み出しているという。



橋本氏は「iPhoneアプリの市場には、これまでアイディアはあるけど会社では出せない・製品化できないといった制約を受けていたプロの技術者が個人として作った作品をリリースできるという利点があります。個人といってもプロが作っているわけですから、非常にクオリティの高い作品が現れたりするわけです。iPhoneのアプリ作家には起業しようと思っている人もかなり多いのです。

また個人レベルで自分がやりたいことをビジネス化できるわけですから、経費も安く抑えられるので販売価格も安くできるわけです。それがiPhoneアプリケーションの安さにもなっています。ただ弊害としてアプリの価格が安くなりすぎたこともあり、最近では価格を是正しようという動きもおきています。100円アプリとかはやめようよって。」



「プロが制作する作品がある反面、iPhoneのアプリには試しで作ってみたり、息抜きで作ってみたり、そういう楽しみ方があります。そこが短時間で多くの開発者とアプリケーションを集め、市場規模を大きくできた理由であり、参加する多くの人の楽しさでもあります。だから安いアプリがまったくなくなるということは今後もないと思います。」と、初心者の制作した作品も多いことが市場規模を支えているという。



橋本氏は、アプリケーションの購入者にもこれまでとは異なる変化が現れていると指摘する。

「iPhoneアプリの購入で特徴的なのは、検索して欲しいものを探すスタイルが増えたことです。これまでのように店で並んでいるもの、そこにあるモノしか買わないというのではなく、欲しいものは検索して探して購入する。こうしたインターネット世代の増加も市場が変化してきている要因だと思っています。ショップのおすすめを買うのではなく、自分が欲しいものを探して買うというネット力が市場を変え始めているのだと思います。」



■インターネット時代のプロモーション

ネットとリアル世界のプロモーションの違いとは、どこにあるのだろうか

取締役中島敦氏




中島氏は、iPhoneでのプロモーションの特徴を「これまでのポータルサイトなどに大々的に掲載するといったことより、ブログやSNSにリンクや紹介をするなどして口コミで広がることが原動力になることが多い」という。

iPhoneのアプリケーションのようなものはネットを辿って購入するというケースが多いため、ネットの中でプロモーションをしかけていくのが効果的だと語る。



橋本氏は、「iPhoneのアプリのターゲットは日本国内だけではなく、全世界のユーザーなので日本だけの媒体を利用することは、これまでと違い有効な手法ではないのです。世界に売り込むには、TwitterやSNS、ブログなど、世界につながるサービスとブロガーなどにリーチしていかないといけない。プレスリリースの大量投下といった手法はもはや通用しないのです。手間をかけた人海戦術なども時には必要だったりします。」



プレスリリースがまったく不要かというと、そうではなく、情報を広めるプロセスにおいて、プレスリリースを大量配布するという手法がネットの世界で効果を生み出さなくなっているということなのだ。ターゲットに訴求するための工夫や対象者へのアクションに手間をかけなければインターネット世代には届かなくなっているのだ。





●何が新世代(デジタルネイティブ)に届くのか

では、どのような手法がユーザーに届くのだろうか。



橋本氏は、「Twitterは予想以上に効果あります。日本では今ひとつといった感はありますが世界向けには強いです。さらに今ですと、リアルタイムなメーリングリスト的な使い方もできますよね。Twitterはメルマガの新しい形と考えてみてもおもしろいですよね。」



たしかにメルマガは1日1回しかユーザーにアプローチできないわかだが、Twitterであれば1日何回も伝えたいことをピンポイントで届けられる。



中島氏は、「マスの力や大金を使ったプロモーションと違って、嘘やハイプ(誇大宣伝)が通用しない。本当におもしろいコンテンツでないとバズ(口コミ)では広がらないし、ちゃんとまじめにコンテンツを作らないと通用しない時代。」と、ただ口コミに便るだけではダメだとも指摘する。橋本氏も「嘘はすぐバレますし、ネットでたたかれる原因となり、逆効果となる。」という。



「レイティング(評価)もありますので、App Storeでレイティングが低いアプリには辛辣な意見が多く書かれています。我々もそうした評価にならないようにユーザーの声には敏感になっています。」と中島氏はいう。



インターネットは、ユーザーの声の伝達が早く、評価も厳しい世界である。また、ネット世代はネットの声に信頼を置く傾向が強いため、ネットでの評価やユーザーの意見には敏感である必要があるのだ。

※バズ マーケティング

バズ語源は、蜂がぶんぶんと飛ぶ音という意味。ターゲティングを明確にした口コミ手法での宣伝方法。





次回は、アプリケーション開発やプロモーション制作の担当者にも同席していただき、開発や制作の苦労・ノウハウについて伺った模様を紹介する。



CONIT





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