NHKデジタル衛星ハイビジョンから始まったハイビジョン放送だが、2006年12月1日から関東・近畿・中京の3大広域圏で地上デジタル放送が開始され、ハイビジョン放送が一般家庭にも急速に浸透する下地が整いつつある。ハイビジョン放送の一番の魅力は、アナログ放送に比べてキレイな映像を楽しめる点だが、そのぶんデータ容量が大きく、従来のDVDレコーダーで放送した番組を残せないのが難点だ。そこで注目を集めているメディアが「次世代DVD」と呼ばれるものだ。



ところが、次世代DVDには、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc)とHD DVDという2種類の規格がある。そこで今回は、これらの次世代DVDがどのような技術で成り立っているのかを詳しくみていくことにしよう。


■次世代DVDの種類

次世代DVDは、ブルーレイディスクとHD DVDの2タイプにわかれているので、まずはそれぞれの特徴からみていこう。



●ブルーレイディスク

・どういう仕組み?

ブルーレイディスクとは、ソニーや松下電器産業、シャープなどが「Blu-ray Disc Association」で策定した青紫色半導体レーザーを使用する次世代光ディスク規格のこと。ちなみに「Blu-ray Disc」という名称の由来だが、「Blue-ray Disc」は英語圏において「青色のディスク」という一般名詞と扱われるため商標上使用できないことから、「e」がない「Blu-ray Disc」となった。

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シャープ「BD-HDW20」
写真:RBB TODAY

ブルーレイディスクレコーダーとDVDレコーダーは異なる機器だが、多くのブルーレイレコーダーは3波長化されており、DVD±R/RWメディアやCD±R/RWが利用できるなど、DVDレコーダーとの上位互換性を保持している。



・メディアの容量は?

メディアはCDやDVDと同じ12cmの光ディスクで、DVDレコーダーのメDVDディアがそうであるように、読み込み専用の「BD-ROM」、1回だけ書き込みができる「BD-R」と何回でも書き換えができる「BD-RE」の3類が存在する。単層メディアで現行DVDの約5倍となる25Gバイト、2層メディアで単層メディアの2倍となる50Gバイトという膨大なデータ容量を記録できる(表1)。



表1.ブルーレイディスクの種類と記憶容量
種類単層2層
BD-ROM25Gバイト50Gバイト
BD-R25Gバイト50Gバイト
BD-RE25Gバイト50Gバイト


単層の光ディスク(25Gバイト)の場合、BSデジタル放送※1なら2時間強の、地上デジタル放送※2なら3時間強で、外ビジョンの映像をメディアに残せるわけだ。

※1 1920×1080i、 24Mbps

※2 1440×1080i、16.8Mbps



●HD DVD

・どういう仕組み?

HD DVDとは、東芝とNEC、三洋電機が共同で開発した青紫色半導体レーザー世代の光ディスクの規格のこと。CDやDVDよりも波長の短いレーザーを使用して高密度の記録を可能にした。多くのHD DVDレコーダーは、3波長化されており、DVD±R/RWメディアやCD±R/RWが利用できる。

東芝、HD DVD-Rに長時間録画を実現! HD DVD搭載HDレコーダー――MPEG4 AVC記録に対応
東芝「RD-A301」
写真:RBB TODAY

・メディアの容量は?

メディアは12cmまたは8cmの光ディスクで、読み取り専用の「HD DVD-ROM」、1回だけ書き込みができる「HD DVD-R」、何回でも書き換えができる「HD DVD-RW」、主にパソコン向けで何回でも書き換えができる「HD DVD-RAM」の4種類が存在する。12cmのメディアは片面一層で15Gバイト(片面二層で30Gバイト)の、8cmディスクでは片面一層で4.7Gバイト(片面二層で9.4Gバイト)のデータ容量を記録できる(表2)。



表2.HD DVDの種類と記憶容量
種類片面一層片面二層片面三層
HD DVD-ROM15Gバイト30Gバイト51Gバイト
HD DVD-R15Gバイト30Gバイト-
HD DVD-RW15Gバイト30Gバイト-
HD-DVD-RAM20Gバイト--
※片面二層は未策定


片面一層の光ディスク(15Gバイト)の場合、BSデジタル放送※1なら約75分の映像をメディアに残せるわけだ。

※1 1920×1080i、 24Mbps



●ブルーレイディスク vs HD DVD

・どちらが優れている?

ブルーレイディスクとHD DVDは、いずれも405nmの青紫色レーザーを読み取りに使用しているが、ブルーレイディスクは0.1mmの深さに記録層があるのに対して、HD DVDはDVDと同様に0.6mmの深さに記録層がある。これにより、HD DVDは、ROMの製造に従来のDVDの製造機器の一部を一部流用できるため、ROMの製造コストを抑えられるというメリットがある。



一方、ブルーレイディスクは、1枚の光ディスクの多層化による大容量化が可能であり、BD-ROMについては8層構造まで学会で発表されている。これが実現すれば、1枚の光ディスクで理論上200Gバイト(25Gバイト×8層)の記録容量化が可能だ。



・両方の規格を使えないの?

NECエレクトロニクスはすでに、ブルーレイディスクとHD DVDの両規格の記録と再生が可能となるLSIセットを開発しているので、今後の展開次第では両対応の機器が登場する可能性がある。

現状では、「BD/HD DVDコンボドライブ」と呼ばれるHD DVD-ROMの再生に対応したパソコン向けのブルーレイディスクドライブが発売されているが、両規格に対応した書き込み型の機器は未だ販売されていない。



■次世代DVDとハイビジョン

次世代DVDと深く関係しているハイビジョンとそのプロテクトについてまとめてみた。



●ハイビジョンとは?

ハイビジョンとは、1080i(走査線1080本・インターレース方式)または720p(走査線720本・プログレッシブ方式)以上の解像度を持つ映像のこと。地上デジタル放送やBSデジタル放送は、このハイビジョンのえいぞうを配信している。ちなみに現行の地上波アナログ放送は有効走査線数がおよそ450i、市販のDVDソフトでも480pであり、これらはハイビジョンではない。



●ハイビジョンとコピープロテクト

ハイビジョンはデジタル放送なので、ユーザーが勝手にダビングすると、オリジナルと変わらないコピーが出回ってしまう可能性がある。その結果、あとからドラマなどをパッケージングして販売することが困難となるため、コンテンツに合わせて3種類の制限を掛けた番組を放送している(表3)。



表3.コンテンツの種類
種類内容
コピーフリー録画やコピーが自由に行える
コピーワンス録画やコピーが一度だけ可能
コピーネバー録画やコピーが一切できない




コピーワンスまたはコピーネバーに対応した放送では、この制限を解除するキーがないと、視聴や録画ができない。デジタル放送に対応したテレビやチューナーを購入したときに付属の「B-CASカード」が解除キーというわけだ。こうした制限は、携帯電話で利用するために画質を落としてSDカードに記録する場合でも適用される。



なお、このようなプロテクトは、従来のアナログ放送に比べて明らかに使いづらく、デジタル放送へのスムーズな移行を妨げる可能性が高いため、総務省では現在、コピーワンスによる著作権保護の制限の見直しを検討している。



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社団法人デジタル放送推進協会

地上デジタル放送に関する公開情報

総務省



編集部:関口哲司

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