シンセサイザーは、電気的に音を合成して音楽を自在に作れることから今日では音楽制作の現場に欠かせない存在となっている。あの“ビートルズ”も「MOOGシンセサイザー」と呼ばれるシンセサイザーを楽曲の中で使用しているほどだ。今回はそんなシンセサイザーの原型と言われている楽器「テルミン」を実際に作り、楽曲を奏でてみる。


■科学者が作った楽器

テルミンは1920年、ロシアの物理学者 レフ・セルゲーエヴィッチ・テルミン氏によって発明された世界最古の電子楽器。テルミン本体には手を触れず、2本のアンテナの間の空中に手をかざし、手の動きによって音程を変えることで音楽を奏でる楽器だ。手のわずかな動きが音程と音量を決定するため、安定した音階を出すことが難しく、演奏者には高い技術が要求される。



テルミンの演奏家は少ないのだが、熱心な愛好家が多いのも事実だ。シンセサイザーの父であるロバート・モーグ氏もテルミンに没頭したというのは有名な話である。イギリスのロックバンド「レッド・ツェペリン」も代表曲のひとつ「胸いっぱいの愛を」の中で間奏にテルミンを採用している。



市販のテルミンには、いろいろな回路の製品が存在するが、2つの高周波発信器を使って発生させた高周波の電気信号の差を音として取り出すという基本的な原理は同じだ。詳細な説明は割愛するが、興味がある人は学研のサイトにある「菊池教授のテルミン原理詳解」を見てみると良いだろう。

大人の科学「テルミンmini」の中身大人の科学「テルミンmini」
大人の科学「テルミンmini」の中身大人の科学「テルミンmini」

■チューニングが"命"

組み立ては、本体に脚を付けて回路基盤を組み込み、スピーカーとアンテナを取り付けるだけの手軽さだ。所要時間は約20分。回路は基板に組み込み済みなのでハンダ付けが苦手な人でも簡単に組み立てられるだろう。テルミンを演奏するためにはチューニングから始めなければならないが、実はチューニングの作業が一番難しい。というのは、テルミンは演奏者を含めた周りの環境に大きく影響されるからだ。そのために演奏者は演奏の前に必ずチューニングする必要があるというわけだ。

本体に脚を取り付ける基板とスピーカーを取り付ける
本体に脚を取り付ける基板とスピーカーを取り付ける

アンテナとスイッチレバーを取り付ける「テルミンmini」が完成
アンテナとスイッチレバーを取り付ける「テルミンmini」が完成

具体的には、音が下がりきって発音しなくなる状態「ゼロポイント」の位置をアンテナから約20cmの場所に設定する。付属の調節棒で「テルミンmini」本体の調節ネジを回してチューニングしてみよう。チューニングのコツだが、最後の微調整は棒を回すというよりも少しだけ力を入れるという微妙な調整だ。正しくチューニングができたら実際に音を出してみよう。アンテナに手を近づけると高い音が鳴り、逆に遠ざけると低い音が鳴る。



音程は連続的に変化するので、どのくらいの音域があるのかを手を動かして確認しよう。あとは「習うより慣れろ」の精神で、ひたすら練習するだけだ。テルミンから発せされる音は境目がなく、手をわずかに動かしただけでも音程が変わってしまうほど微妙なものだ。最初のうちは根気よく音階の位置をさがすことに集中しよう。ド・レ・ミ・ファ・ソの5つの音をみつけたら、「日の丸」などの簡単な楽曲をテルミンで演奏できる。



実際に演奏を試みたが、慣れていないこともあり音階を出すのは一苦労だ。テルミンの応用としては、演奏中にアンテナを揺らすと音が不安定になり、ビブラートが掛かったようになる。また外部アンプを所有している人は、「テルミンmini」を外部アンプに接続することで音質と発音域が改良され、より深みのある音質で楽曲を演奏できる。



正しい音階での演奏は難しいが、手の位置や指の微妙な動きで音階が変わるため、自由に手を動かすだけで不思議な音色を奏でられるのもテルミンの楽しみ方の一つだろう。楽譜どおりに演奏するのも良いが、ジャンルを超えた独自の音楽を追究できるあたりも時代を超えた人気を誇るテルミンの魅力であろう。



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大人の科学「テルミンmini」

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編集部:関口哲司

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