『北斗の拳』で知られる漫画家の原哲夫先生の書いた『うる星やつら(新装版)』25巻のラムさんの絵が話題になってます。昔からラムさんはセクシーの代名詞でありましたが、原哲夫Ver.のラムさんはセクシーさが予測不能な方向に突出してスゴイことに。人智を越えたダイナマイツなプロポーション、尋常でない腰のくびれ、さらに飛び出るバストトップ! これはもはや事件であります。とにかく漫画好きなら一度は見ておくべき、というかこの25巻は一家に一冊置いておくべきかと。



そんな最近の原先生ですが、書店を見渡せば『北斗の拳』を原案とした「外伝」シリーズをいくつか発見できます。以前から気にはなっていたのですが、『北斗の拳』ファンとしては抵抗があり、なんとなく避けてしまっていました。原先生もラムさんにチャレンジされたことですし、私も今回思い切って一連の「北斗の拳外伝」作品を読んでみることにしました。以下にその内容を書いてみます。


■『天の覇王 北斗の拳ラオウ外伝』

作画:長田悠幸

原案:武論尊/原哲夫 

発行:新潮社



●北斗の拳度:★★☆☆☆

●オススメ度:★☆☆☆☆



絵柄だけを見るとまるでドラクエの漫画版みたいな印象です。作者は何らかの形で鳥山明先生の影響を受けているんじゃないでしょうか。ちなみに原哲夫テイストは1mgもありません。なんだか明らかにファン層を読み違えているというか、少なくとも既存の北斗ファンには全くなじまない作家チョイスに感じます。



『天の覇王』1巻。絵柄は嫌いではないんですが、北斗の世界観には合わない気が……。別の作品は読んでみたいかも。



これはラオウが「拳王」として成り上がっていく姿を描いた作品ですが、なんだかキャラの立ち位置が妙なことになっています。例えば1話の冒頭で村人が盗賊に襲撃されるお約束のシーンがあるのですが、そこに「力の無い者達は… 祈るしかなかった 救世主の出現を……」というモノローグが入ってしまうのです。まるでこれからケンシロウが出てくるみたいな雰囲気です。ところが実際に登場するのは当然ラオウなわけで、さらにラオウは「オレがこの世界を救う」とか言ってしまうのですから、北斗ファンの私は自室で悶絶してしまいました。



ラオウは己の野望の為には手段を選ばぬ極悪非道の男です。心の片隅で世の乱れを正すという目的を持っていたとしても、そんな青臭い台詞を簡単に言うはずがありません。それが1話目であっさりと……。さらに敵対する相手を容赦なくぶちのめすところはいいとして、肝心の相手が悪人ばかりというのも違和感を感じます。善人だろうがなんだろうが、刃向かう者には死を与えるのが「拳王」なのに、なんだかやたらいい人に見えます(あくまで『北斗の拳』のラオウと比較しての話ですが)。



アクションシーンは『ダイの大冒険』に血しぶき&スプラッタ分を混ぜたような感じ。またはちょいハードな天下一武道会という趣です。世紀末というよりは、剣と魔法の国が舞台のRPG的世界観に見えるので、「北斗の拳外伝」を読んでる気分には全くなれませんでした。作者の長田氏は、ちゃんと漫画を描ける人物に思えるだけになんだか可哀想な気もします。これは明らかに編集サイドの人選ミスのような……。



コミックバンチでの連載は既に終了していますが、世の北斗ファンがこれをどう評価するか気になります。連載は1年ぐらい続いていたようなので、そこそこ人気はあったかも知れませんが、自分にはちょっと合いませんでした。今回は試しに1巻だけを読みましたが、続きは漫画喫茶で軽く流し読みして終了しようと思います。

■『蒼黒の餓狼 北斗の拳レイ外伝』

作画:猫井ヤスユキ

原案:武論尊/原哲夫 

発行:新潮社



●北斗の拳度:★★★☆☆

●オススメ度:★★★★☆



これも前述の『天の覇王』と同じバンチ作品です。この作品は、主人公のレイがさらわれた妹・アイリを探すために旅を続けている時代を描いています。この1巻ではケンシロウもラオウも出てきません。レイは基本的に冷血無比の男として描かれているので好印象。これなら原作ファンも納得です。



あとはとにかくすごいエロスです。爆乳オネーサンの半裸&裸のシーンがこれだけ出てくる「北斗の拳外伝」は後にも先にもない気がします。女だらけの街で用心棒としてスカウトされたレイはモテモテになるのですが、表情は険しいまま。アイリが心配でたまらない重度のシスコンは、ハーレム状態にあっても揺るがないところが実に素晴らしいです。エロスとは言っても、非常に美しく描写されているので、いやらしさとかはそんなにありません。まあでも、電車の中では読まない方がいいでしょう。

『蒼黒の餓狼』1巻。本作の南斗水鳥拳は最強。シュウとユダも出てきますが北斗の出番はなし。まさに南斗一色。


レイは個人的にも好きなキャラなので、読む前は非常に不安でしたが、これは予想外のヒットでした。絵柄はイマっぽい耽美な感じで最初は違和感がありますが、少なくとも私は読んでいくうちに「これはこれで」と納得できてしまえました。あと、修業時代のレイの師匠である南斗水鳥拳伝承者・ロフウ様が、激シブでダンディなところも高ポイント。こういう格好いいオヤジキャラは今時貴重です。



これでアクションシーンにもう少し迫力があって、ストーリーにヒネリがあれば満点(★★★★★)の出来にも思えます。原作のイメージを引きずりながら読むとキツイかも知れませんが、これは別物と割り切って読めば結構楽しめると思います。北斗ファンなら一度見ておいて損はないでしょう。これは2巻が出たら必ず買います。



■『慈母の星 北斗の拳ユリア外伝』

作画:笠井晶水

原案:武論尊/原哲夫 

発行:小学館



●北斗の拳度:★☆☆☆☆

●オススメ度:★★★☆☆



これはある意味問題作です。テイストがすごく腐女子なんであります。表紙にも描かれている主人公のユリアの絵はまあ理解できるんですが、まずケンシロウが全く北斗神拳の伝承者に見えません。なんかキツネ目で体格のいいラガーマンというか、革ジャン+Tシャツ+ジーンズという服装も妙に現代風で生活感が漂っています。

オビに注目の『慈母の星』。止め絵は確かに美しいです。これが漫画だといきなり腐女子な同人誌展開に……。


そんな体育会系のケンシロウは、前半1/3のエピソードに登場するのみ。しかもケンシロウは北斗神拳を一度も出さないのです。唯一のアクションシーンは、野犬を追い払うために放った左裏拳1発のみ。さらにストーリーは薄幸の少女を救おうとする愛の物語、という世界名作劇場的な超展開。本当にこれが北斗関連の作品なのかどうか、読んでいくうちにワケがわからなくなってしまいます。



残り2/3の物語には、南斗のシンとジュウザが登場。二人とも腐女子の方々に受けそうなビジュアル系キャラとして描かれているので、見た目は完全に王子様です。そしてユリアをめぐって争うラブコメ展開に……!? ここまで来ると、一周回って面白いです。もはやギャグ漫画にしか見えません。



また、シンとジュウザが本気で殺り合うシーンでは、二人の間にATフィールドみたいなものが描かれてあるなどツッコミどころも満載。悪役キャラが誕生パーティーのケーキを床にぶちまけて「へへへ、ざまあみろ」と嫌がらせをするとか、安い学園ドラマみたいなノリには目が点になってしまいました。



単行本のオビに「巨匠絶賛」と書いてあったので、わりと期待して読んだのですが、正直この内容は予測できませんでした。一読した後にオビのコメントを読むと、「見るがいい、ユリアの気高い"透明感"を(武論尊)」とか、「一枚のイラストレーションのようで素晴らしい(原哲夫)」とか、結局褒めているのは絵の部分だけということがわかります。まあ、オビのコメントを頼まれたらとりあえず褒めるものなのでしょうが、本音はどうだったのかが気になるところではあります。腐女子っぽいのが好きで、変化球的な漫画を読みたい人限定で3つ星です。



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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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