お笑い×漫画のコラボが話題の漫画雑誌「コミックヨシモト」。創刊号は当初「30万部完売」が目標とされていましたが、実際は15万部程度に留まったと聞きます。雑誌の売り上げは発行部数の7割を越えるのがひとつの目標とされていますので、売り上げ5割という数字だけを見ると、一見失敗したかのように見えます。ですが、現在の出版不況の中で15万部を売ったというのは大したもの(※1)。少なくとも創刊号に関しては、成功したと言っていい気がしています。過度の期待から刷りすぎたようですが、部数は今後調整していけば問題ないですしね。



(※1)漫画雑誌の発行部数例:アフタヌーン(12.7万部)、ガンダムエース(19.5万部)、モーニング(43.7万部)、週刊ヤングジャンプ(100.6万部)



今のところ新参者の「コミックヨシモト」は、漫画ファンの中でもなんとなくスルーされています。面白そうな漫画が他にもたくさんある状況下で、正直"地雷"の可能性が高い漫画を手に取る必要はない、というのがリアルな反応なのでしょう。今回はそんな「コミックヨシモト」の中身と今後について考えてみます。



まずは、簡単に連載中の作品紹介をしていきたいと思います(感想は個人の主観ですので、その点はご了承願います)。各作品は「面白い」「まあまあ面白い」「いまいち」「つまらない」「意味不明」の5つのカテゴリに分けます。個人的には、面白いものとつまらないものが同居している現状のカオスっぷりがちょっと面白かったりもします。



●面白い作品

『ハローバイバイ関暁夫の都市伝説』

原案:関暁夫(ハローバイバイ) 漫画:野田正規

(解説)「口裂け女」「ロールス・ロイス」「ミミズバーガー」など、都市伝説ネタ好きにはおなじみのネタがいろいろ出てきます。主人公の名前が「スティーブン・セキルバーグ」だったり、都市伝説を語る前に謎の「真実を見てる」ポーズを取るなど、ワケワカラン部分もありますが結構面白く読めます。



『おんたま!』※月イチ連載

原作:前田登(はりけ~んず) 漫画:吉井ダン

(解説)まさかの萌え漫画(作画はぷにぷに)。原作はアニヲタ芸人として有名な、はりけ~んず前田。主人公は小学4年生の女の子で、母親が父親(再婚相手)に虐待を受けるなど、家庭に問題を抱えている不幸っ娘です。あえて鬱要素を取り入れるところに、アニヲタ作家としてのこだわりがキラリ! 本当のお父さんに会うために、過去にタイムスリップして、卵から出てくるという強引展開もファンタジーなのでアリでしょう。内容は映画やアニメで例えると『バック・トゥ・ザ・フューチャー』+『ちょこッとSister』+『ぽてまよ』という感じ。かなり好きなんですが、月イチ連載なのが残念!



『Geeks!(ギークス!)』

年寄:デーモン小暮閣下 絵師:山中健司

(解説)相撲漫画です。相撲通で知られる閣下の原作はなかなかいい仕事をしています。絵柄はちょっと古臭いんですが、この題材ならば適材適所でしょう。内容は、同じ施設で育った16歳&無職の若者二人が力士を目指すという王道ストーリー。閣下ならではの相撲ウンチクも効果的に使われています。今のところアクションシーンはそれほど出てきていないので、スポーツ漫画として大成するかどうかは未知数ですが、とりあえず現段階では高評価。



●まあまあ面白い作品

『んなアホな!!』

原作:倉科遼  漫画:ナカタニD.

(解説)原作は『女帝』『夜王』などで著名な倉科遼。お笑い芸人を目指す二人の若者の姿を描く成長ものです。お笑い業界の時事ネタを取り入れるなど、ベテラン原作者ならではの小技が利いてます。主人公は、二枚目で元生徒会長の「虎之助」と三枚目で元暴走族の「竜馬」の"タイガー&ドラゴン"コンビ。元ヤンの竜馬が自分の野望実現のために、お人好しの虎之助を利用してやろうと腹黒く考えていたりします。



『いつか見た島』

原作:島田紳助 漫画:高田桂

(解説)舞台は沖縄の離島。ケガで廃業した元Jリーガーが、亡き祖父の牧場で牛飼いの仕事を考えるようになるという、「お笑い」とは無関係すぎるシリアスな内容。言われなければ原作が島田紳助だと気付く要素は一切ないのがスゴイです。1話はあまりにも先の展開が読める内容だったのでイマイチでしたが、回を重ねるごとに次回が気になる作品になってきました。



『フース』

原作:後藤ひろひと 漫画:イシデ電

(解説)悲しくて、残酷で、夢のある、前後編二部構成の読み切り漫画。なかなか面白いんですが「コミックヨシモト」的には明らかに場違い。アフタヌーンあたりで連載したら、普通に人気が出そうなんですが……? 西岸良平の描く短編漫画に通じるものがあります。



『桂三枝の上方落語へいらっしゃ~い』

原作:桂三枝 漫画:高井研一郎

(解説)落語家・桂三枝の自伝で、ちゃんと人情話になっています。キャラがデフォルメされすぎていて、誰が誰だか分かりにくいのが難点。

●いまいちな作品

『探偵事務所H・G』

漫画:永井豪 キャラクター協力:レイザーラモン

(解説)レズ探偵「本田聖子」のイニシャル"H"と、ゲイ探偵「権田助平」のイニシャル"G"を取って「H・G」という設定。権田の見た目は、まんまレイザーラモンHGで、ヒネリとかは特にありません(永井先生……)。読者を激しく選ぶことは確実。



『OLちゃんダイアリー』※月イチ連載

原案:ハリセンボン 漫画:北沢バンビ

(解説)ほのぼのOLコメディにしたいというのは分かるんですが、イマイチです。キャラの顔もギャグ用にしては可愛すぎ。芸人を変に美化する姿勢はいただけません。コントのネタをそのまま漫画にしたような、ユルイ内容も見直すべき。



『ガングリオン』原作:白岩久弥 漫画:いつきたかし

(解説)悪の組織のサラリーマン戦闘員が主人公。仕事帰りにおでん屋でグチをこぼしたりします。漫画家は大友克洋系で、今となっては懐かしい絵柄。美味しんぼオマージュな場面もあったりします。嫌いではないんですが、盛り上がりに欠けるのがちょっと……。



●つまらない作品

『14歳』

原案:千原ジュニア 漫画:中川一良

(解説)原作は自身の引きこもり体験を題材にしたベストセラー小説。作画は全体的に白っぽい画面で、なんというかネオガロ系? 第1話(全24P)における主人公の少年のセリフが、最終ページの「ヒョ~~ッ」だけだったのには仰天! 無口にもほどがあるって!



『あとん』※月イチ連載

原作:2丁拳銃 漫画:板羽皆

(解説)ホームレスの父親を持つ小学生男子の話。人情コメディみたいですが、全く面白くありません。父親のポジティブな性格が逆効果になっているのが致命的。ホームレスの負の部分を避けて通ったらダメ! 絶対!



『吉本壱番館』

原作:大工富明 漫画:昌原光一

(解説)吉本興業の芸人伝。「島木譲二(1~2話)」はともかく、「おかけんた・ゆうた(3話~)」というチョイスは渋すぎ。地味な絵で淡々と進む内容も不満です。



『水野キングダム』

キャラクター協力:水野透ほか 漫画:松田望

(解説)同名タイトルのバラエティ番組の漫画版のようですが、笑えるところが本当に1ヵ所もありません。火事で大変な時にやってくるのが、消防車じゃなくてゾウ坊車(脚に車輪を付けて走るアフリカ象)って……。いったいどこの国のセンスなんですか。



●意味不明な作品

『Dr.アホー診療所!!』

漫画:シャシャミン

(解説)テラ落書き。一応4コマ漫画みたいです。今年読んだ漫画の中で一番ひどいです。



■今後の「コミックヨシモト」

こうして見ると「コミックヨシモト」の掲載作品は、非常にバラエティ豊富であるということが分かります。お笑いとイコールの関係にある"ギャグ漫画"雑誌にするのではなく、あくまで一般の漫画雑誌として真っ向勝負を挑んできたところに、「コミックヨシモト」の"覚悟"が感じられます。当面は、面白い作品とつまらない作品の間にある、おそろしいまでの格差をなんとかするところから始めるべきでしょう。



定期刊行物として生き残っていけるかどうかは、これからが正念場です。タレントパワーに依存しないで読者を引きつけるには、まだまだ課題は山積みですが、将来性を感じる部分はあるので、なんとか頑張っていただきたいものです。





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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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