私が最初にそのゲームを知ったのは「月刊アルカディア(※1)」の記事だったと思います。第42回AMショー(※2)出展作品情報として掲載された『オシャレ魔女 ラブ and ベリー(以下ラブベリ)』は、カードを使って遊ぶ、女の子向けの着せ替えゲームのようでした。先にヒットしていた『甲虫王者ムシキング』の筐体を流用しているところから、二番煎じ的なイメージがあり、最初は特に興味を持つことはなかったのです。



その後しばらくして、ゲーム誌以外の一般メディアから「女の子の間で大ブーム」「母親も娘と一緒に夢中」「アパレル業界にも参入」「ショップにはお母さんたちが殺到」といった盛り上がり情報を見かけるようになり、徐々に気になる存在へと変化していきました。何度か意を決して、プレイしてみようと思ったこともあったのですが、子供たちが群がって遊んでいる中に、アキバ系男子が突撃するというシチュエーションは、想像しただけであまりにも"痛い"光景で(悶絶)。ついにその野望は未遂に終わったのです。



ラブベリは、デパートのゲームコーナーやおもちゃ屋などに置かれています。設置場所はやけに目立つ、人通りの多い場所が選ばれているようです。いわゆる「大きいおともだち」が気軽に遊べるような状況では決してないのです(周囲の視線が絶対に避けられない)。プレイするのを半ばあきらめていたところ、ふいに入ってきたのが「ラブベリがDSで出るらしい」との情報でした。「もう希望はこれしかない!!」とばかりに、私はソフトを購入しにショップへ出撃。「いやあ、娘に頼まれちゃってね~」的な表情になるよう自己暗示をかけながらレジへ直行したのです(店員は、当然ながら淡々と対応)。



その後、突如襲ってきた仕事の嵐に忙殺され、しばらく積みゲー(※3)となっていましたが、この度ようやくプレイできたので、以下にレビューを書いてみようと思います。アーケード版未プレイの男が、DS版でラブベリを初プレイするという趣旨なので、ヘビープレイヤーな女性陣からするとヌルい内容だとは思いますが、そこは大きな心で見守ってやってください。



(※1)月刊アルカディア:日本で唯一のアーケードゲーム専門雑誌。ちなみにラブベリ情報を掲載した2004年11月号は『機動戦士Zガンダム エゥーゴ VS ティターンズ DX』の機体別攻略や、『鉄拳5』『クイズマジックアカデミー2』の稼働1ヵ月前の最新情報などが載っていたりします。



(※2)AMショー:「アミューズメントマシンショー」の略称。ゲームセンターなどのアミューズメント施設に設置されるゲームの総合展示会。入場料を払えば、展示してあるゲームは無料でプレイできるのがウリ。メーカー各社の新作発表の場でもあります。



(※3)積みゲー:購入後、プレイされずに放置されているゲームソフトのこと。プレイする時間が不足しがちな社会人ゲーマーによくみられる。未プレイソフトの本数が増えて、どんどん部屋に積まれていく様子が、読んでない本が積まれていく「積ん読」に似ているところから、そう呼ばれるようになった模様。



DS版ソフトのパッケージ内容は「ソフト」「カードリーダー」「オリジナルカード10枚パック」の3点セット構成。早速ソフトをDSに差し込みプレイ開始!と気合いを入れた瞬間「カードリーダーがはずれているよ」というメッセージが画面に表示。「いや、どうせカードは持ってないし、付属のカードもとりあえず使う予定はないんですが」と思いながらも、渋々カードリーダーを装着してゲーム再開。私は、この時まで「オシャレまほうカード」はゲーム中でゲットしながら集めるものだと、勝手に思いこんでいたのです。



とりあえず、大人っぽい方のベリーを選んでプレイ開始。選択ステージに行く前にオシャレをする場面で、私はようやく気付きます。「こ、これって、カードがないと全くオシャレができないってこと?!」。そして何度かプレイした後、ゲーム中のカード入手はできない仕様だということを理解したのです。大ショックでした。このままだとベリーは、Tシャツに短パンという"超イケてない"格好を永久に続けるしかありません。



付属のカードリーダーは、カードを持ってる人達向けのサービスアイテムで、別になくても問題なく遊べると思っていたのは、大きな勘違いだったのです。しかも「いけてるど(※4)」を競う相手は、オシャレでダンスも上手なラブ(相方)。ダンスパートは音ゲー要素なので、音楽に合わせて正確にリズムを取ればなんとか……という、淡い期待も一瞬で粉々に粉砕される始末! オシャレの時点で相手に100ポイント以上差を付けられては、どんなにダンスで頑張っても勝てないのです。目の前に「絶望」の二文字が浮かんできました。



(※4)いけてるど:オシャレ度を表す「オシャレパワー」と、ダンスの正確さを表す「ダンスポイント」を合計した数値のこと。ラブベリは、この数値の高さを競うゲーム。分かりやすく書くと「イケてる度」。ゲーム中は平仮名で「いけてるど」と表示されるので、一瞬どこかの方言かと思ってしまったのはここだけの秘密。



慌ててマニュアルを読むと、一応付属の「DSコレクションカード×3種」でオシャレアイテムを作成することはできるようです。ただし、保存できるのは「ヘア&メイクアップ」「ドレスアップ」「フットウェア」3種それぞれ6枚のみ(最大18枚)。「スペシャルアイテム(※5)」は作れないのです。しかもオシャレパワーに影響するラッキーカラーのうち、設定できるのは青・赤・ピンク・白の4種のみ。ゲーム内では黄・黒・緑・紫という他の色も普通に出てくるというのに、これは一体どうすればいいんだぁぁぁ……。



(※5)スペシャルアイテム:オシャレに使うヘアカラーやサングラス等のアイテムを指す。ラブベリのオシャレ基本要素は、ヘアスタイル+衣装+靴の3要素。スペシャルアイテムは、これら3要素に追加する形で使用する。スペシャルアイテムが使えないということは、単純に1アイテム分損をすることになってしまう。これはキツイ。



ラブベリとの戦い"第二章"は、次のページに続きます。
この時点で、私はこの事実を前に「カードを手に入れるか、ゲームを封印するか?」2つに1つという選択を迫られることになりました。……しかし、このままでは終われません。私は意を決して、ラブベリのカードをバラ売りしている、秋葉原の某ホビーショップに向かう決心をしました。ショップに到着後、店内のカード置き場を確認し、ベリーに似合いそうなアイテムを選択開始。近くを通る客の"痛い"視線を感じたりもしましたが、もはや気にしていられません。とりあえず、ストリート系アイテムを中心に21枚を購入。価格は4千円弱で1枚平均190円程度。「これでなんとか戦えるはず!」と、希望を胸に自宅へ戻ったのであります。



気を取り直してプレイ再開。購入してきたカードで着せ替えをしてみます。魔女っ娘アニメっぽい効果音と共に、ベリーの服が買ってきたカードの絵柄と同じものに変化した瞬間「お、面白い!」と、もの凄く単純に感動してしまいました。永久に封印しようかとも思ったDS版ラブベリに対する不満は、ベリーがオシャレをした瞬間に"一瞬"にして吹き飛んでしまったのです。なるほど、女の子や母親が夢中になるのも理解できます。判定がシビアだったダンスパートも、オシャレのラッキーカラーを対応させることでミスを減らす効果があることも判明しました。とにかくラブベリは、オシャレをしなければ始まらない、カードありきで制作されたゲームソフトだったのです。



それならそうと、ゲームの広告やパッケージ等に「付属のオシャレまほうカードだけでは満足に遊べません」という旨を明記してほしかったですね。世の中には私のように「ラブベリを遊んでみたいんだけどゲームコーナーじゃ無理」という人もいるはずですし……。



その後、手持ちのカードでなんとか2面クリアできるようにはなりました。ちなみに、私がプレイした「おすすめかんたん」モードでは、2面クリア時の判定で「1級」を取ると3面に進めるようなのですが、何度やっても私は「2級」が限界。煮詰まってネットで色々調べたところ、どうやらまともに戦うためのカードは100枚くらいは必要という情報が目に入ってきました。



ううむ、こうなると悩んでしまいます。仮に追加で80枚カードを入手するとして、概算で190円×80枚=15,200円。元々大量にカードを持っている上で遊ぶのならともかく、一からスタートのプレイヤーがカードに2万円近く投資するというのは、正直厳しい気がします。確かに着せ替えパートは楽しいのですが、ダンスパートは楽曲が子供向けだけに微妙で、私のようなアキバ系男子が本気で攻略しようと思うには微妙なハードルがあります。



キャラのデザインにもう少し萌え要素があるとか、楽曲もゴリゴリのラップとかトランスとか、"モー娘。"的なアイドルソングとかなら、超気合いも入ろうというものなのですが……。さらに調べてみると、どうやらラブベリはあえて「萌え系」にカテゴライズされるのを避けて設計されたようなので、我々アキバ系は最初から眼中になかったみたいです(泣き)。全身打撃をくらって感じで、めまいを覚えつつ、しばらく封印する決意をしました(ぐすん)。



もしDS版の次作があるならば、その時は「カードを持ってなくても楽しめる」ゲームになることを期待しています。ちなみに映画も公開されていたので、しっかり観てきましたが、同時上映のムシキングの方が、私的には面白くて、やや困りました(アニメファン必見の出来。声優・ドランクドラゴン塚地の演技力は本物)。いや、ラブベリもそれなりには面白かったのですが、TVシリーズを1年間続けて世界観が確立しているムシキングと、初のアニメ化でキャラ説明からスタートしなければならないラブベリを単純に比較するのは酷というものでしょう。



結局ラブベリは、女の子たちの愛すべきものだったようです。アキバ系男子が安直に手を出すものではなかったのかも知れません。映画も結局、甲虫バトルで燃えるムシキングの方が私的には楽しめてしまいましたし。少女漫画や少女向けアニメなら問題なく楽しめるアキバ系も、セガの綿密な戦略の基に生み出された「少女向けゲーム」の前には"無力"であったということでしょうか。

いつかアキバ系に超ストライクな、着せ替え系家庭用ゲームがセガからリリースされることを熱望しつつ、ラブベリからは一時引退します。余談ですが、もしカードが余ってる方がいたらゆずってください。カードがあれば再度遊んでみたいとは思ってますので……(好きなんですね)。



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レッド中尉(れっど・ちゅうい)

プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。


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