ターボリナックスは、手のひらサイズのLinuxパソコン「wizpy」を2月23日より発売する。wizpyは、OSにLinuxを採用した携帯電話よりも小さなパソコンで、パソコンのUSBポートに「wizpy」を接続して起動すると、そのパソコンを自分専用のパソコンとして使用できるというユニークな特長が魅力だ。

価格は、2Gバイトモデルが2万9,800円(税込み)、4Gバイトモデルが3万3,800円(税込み)。カラーバリエーションは、2Gバイトモデルがホワイトの1色、4Gバイトモデルがホワイトとブラックの2色。



このようにユニークなwizpyは、どのような経緯で開発されたのであろうか。プロジェクトリーダーのターボリナックス株式会社 wizpy 事業部 中尾貴光 氏に話を伺った。



■PC2.0で、1:1から1:nへ - ターボリナックス 中尾 氏

編集部:wizpy 開発までの経緯を教えて頂けますか?

中尾氏:ターボリナックスは、ご存じのようにリナックス・ディストリビューションの開発と販売を行っておりまして、店頭でもデスクトップPC向けのパッケージを販売しております。お客様にOSをお届けするときに、パッケージ製品ですと、どうしてもインストールする作業が必要となります。さらに「Linux」という言葉からなのか、利用が難しいというイメージがあるようです。そこで、インストールの手間もなく、簡単に導入できるものとして、「wizpy」を開発しました。



もうひとつは、パソコンの使い方の新しい提案です。固定電話が携帯電話に、Web1.0がWeb2.0に変わったように、ユーザーの利便性があがってきています。「世界中のパソコンがユーザー様のパソコンになったら、便利な世界になるだろう」という考えから、PCの新たなる活用法として、wizpyの開発を進めてまいりました。



wizpyを手に持つ、中尾氏小さいLinuxパソコン「wizpy」



編集部:wizpy の名前の由来は?

中尾氏:with Privacy(プライバシー)、with Portability(ポータビリティ)、with PC(パソコン)、with Player(プレーヤー)という、大きく4つの意味が込められています。ご覧頂くとおわかりになるかと思いますが、これらのアルファベットの頭文字「P」の意味を込めた造語が「wizpy」です。



まずwith Privacyとは、プライバシー・セキュリティを表します。wizpyは、使用するパソコンに履歴を残さずに、かつ使用しているパソコンにも入り込めない仕様なので、高いセキュリティを実現しています。

with Portabilityは、wizpyのコンパクト設計を意味します。wizpyを携帯すれば、会社や出張で重いパソコンを持ち歩く必要がなく、どこでも自分専用のパソコン環境を再現できます。重さも約50gで、USBメモリーとしても各種データを携帯できます。



with PCとは、パソコンに接続するだけで、自分専用のOSが起動することを指します。メールやブラウザなどの利用者の環境をまるごと持ち歩けますので、どこにいても使い慣れた環境でインターネットを楽しめます。

with Playerは、wizpyのマルチメディアプレーヤーとしての機能を意味します。動画や音楽の再生からボイスレコーダー、ラジオ、静止画・テキストビューアまで、あらゆるマルチメディア機能をwizpy 一台に集約しました。



wizpyは、外付けのCD-ROMドライブまたはハードディスクとして起動するwizpyの音楽再生機能



編集部:「wizpy」の販売ルートを教えて頂けますか?

中尾氏:弊社通販サイトおよび大手ECサイト、大手量販店での販売を通して、販売させて頂きます。大型量販店では、店頭デモを考えております。また、場所は決まっておりませんが、wizpy 製品体験会を予定しており、来場者には先着でお得なクーポン券を進呈する予定です。



編集部:wizpy で、パソコンライフは、どのように変わるのでしょうか?

中尾氏:我々は、「PC2.0」というのを定義させて頂いております。「PC2.0」が何かというと、たとえば、会社でノートパソコンを使っている方は、自宅で仕事をするために、会社のノートパソコンを持ち帰る必要があります。また、海外で仕事をしたい場合には、電源コンセントのプラグや、電圧などを気にしなくてはならなかったり、日本語環境が必要となってきます。



wizpyでは、wizpyを挿したパソコンが自分のパソコンになりますので、wizpyだけを持ち歩けばよい訳です。自分の環境が1に対して、不特定多数のパソコンが相手にできますので、パソコンの環境は1:1から1:nへと変わります。これが我々の考える「PC2.0」というものです。



wizpyを会議室のパソコンに接続自分のパソコンとして使用する、中尾氏



次のぺージでは、wizpyのターゲット層や今後の展開について話を伺った。

編集部:wizpy のターゲット層を教えて頂けますか?

中尾氏:まずは、コンシューマーです。プロシューマーといわれている、ガジェット好きな方、リナックス好きの方をターゲットに販売していきたいと考えております。もうひとつのターゲットとしては、中古パソコンや遊休資産の活用市場です。某社さんの新OSは、明らかに高性能なハードウェアを必要とします。「wizpy」であれば、512MB以上のメモリーを搭載したパソコンであれば、快適にお使い頂くことが可能です。



さらにライセンスの問題もクリアになります。現在の中古パソコンでは、OSのライセンスはユーザー側に渡すのですか、パソコン側に渡すのかが、グレーな状況です。「wizpy」であれば、中古パソコンと一緒に販売することで、ライセンスのグレーな状況がなくなります。



編集部:wizpy と他社OSとを比較した際、wizpyの優位な点はどこにありますか?

中尾氏:先ほど申し上げた導入のしやすさがひとつ。もうひとつは、コストパフォーマンスです。他社の新OSでは、OSの価格が約3万2,000円で、オフィスソフトを追加しますと、プラス5万円の出費を覚悟する必要があります。wizpyは、2万9,800円から購入できますし、オフィスソフトも標準で入っております。あとは、単体でのマルチメディア機能を備えている点です。



wizpyの優位性について語る、中尾氏wizpyのオフィスソフト



編集部:マルチメディア機能を具体的に教えて頂けますか?

中尾氏:音楽はMP3/WMA/OGG形式、動画はXviD形式のファイルを再生できます。静止画は、JPEG形式のファイルを表示できます。テキスト表示もあります。たとえば、打ち合わせに行くときに、メールのフッタをテキストファイルで「wizpy」に入れておけば、パソコンを開かなくても、「wizpy」で相手の連絡先を確認できます。そのほかにも、内蔵マイクを利用してMP3形式のファイルで録音できるボイスレコーダー機能や、FMラジオ機能などが用意されています。



ボイスレコーダー機能音楽プレーヤーとしても使用できる



編集部:今回、SDスロットを搭載しなかった理由は?

中尾氏:本体の厚みが増してしまうことと、メモリへのアクセスに時間が掛かってしまうことから、SDスロットの搭載は見合わせました。ユーザーからの要望が多ければ、次期モデルで検討したいと考えております。



編集部:「wizpy」の拡張性について、教えて頂けますか?

中尾氏:「wizpy」を購入すると、インターネットサービス「wizpy Club」の1年間の利用が付いてきます。「wizpy」は、2Gバイト、4Gバイトのメモリーを搭載していますが、それでは足りないお客様のために、「wizpy Club」では、500MBのネットストレージを用意しております。有料となりますが、さらに容量が欲しいお客様には、1Gバイト、2Gバイトのネットストレージを提供することも可能です。我々は、万全をきしておりますが、ソフトウェアでございますので、セキュリティアップデートもご用意させて頂く予定です。



また「wizpy Club」では、無償/有償の追加プラグインソフトウェア、SNSサービスなどを利用できます。「wizpy Club」では、ユーザー様のご要望に添うかたちで、プラグインのアプリケーションをご用意させて頂きたいと思っております。将来的には、いろいろな企業とアライアンスさせて頂くかたちで、音楽や動画を配信させて頂くことも考えております。



無限の可能性を秘めたwizpy「wizpy Club」のイメージ



編集部:最後に、今後の展開をお聞かせ頂けますか?

中尾氏:インターネットサービス「wizpy Club」を拡張させて頂いて、ユーザー様に継続利用して頂きたいと思っております。搭載できなかったアプリケーションは、「wizpy Club」を通してご提供させていくつもりです。通信機能を持たせるなど、ハードウェア的に変更しなければならないものは、社内で協議をさせて頂きながら、次期製品での導入を検討させて頂きたいと考えております。コンシューマーだけではなく、法人向けにもパートナー様ごとにOEMのかたちで提供していけたらよいと考えております。



編集部:本日は、ありがとうございました。



「wizpy」は、リナックス・ディストリビューションのメーカーがOSをハードウェアごと提供するという、今までに前例のない新しい試みであるだけに、今後の展開が楽しみな製品である。



wizpy 公式サイト

ターボリナックス株式会社



編集部:関口 哲司

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