Motorolaはこの夏にAndoridスマートフォンの新製品を相次いで発売する。いずれも普及価格帯のミッドレンジクラスの製品であり、価格もそれほど高くは無くスマートフォンの入門者層にも手が届く手ごろな製品だ。Motorolaはこの1年でスマートフォンシフトを進めてきたが、ハイエンド以外の製品もラインナップに加えることでスマートフォンシェアを今後大きく伸ばしていくだろう。

新製品はベーシックモデルとなるQuench XT3、縦型でQWERTYキーボードを備えるCharm、そしてCharmのキーボード部分を180度回転させることで小型サイズになるFlipOutの3機種である。Quench XT3はHVGAディスプレイに3メガピクセルカメラ、HSDPA対応などスペックとしてはSony Ericsson X8とほぼ同等のスペックで、派手さはないもののコストパフォーマンスを重視。ボリュームを確実に稼げる製品だ。
Motorola Quench XT3


CharmとFlipOutは、スマートフォンというよりも手軽にメッセージやSNSサービスを利用するための端末である。この2製品を購入する層はアプリケーションにお金を払うよりも友人同士のコミュニケーションツールとして端末を購入するだろう。そのためあらかじめ関連のアプリをプリインストールしておくことで魅力有る「SNS端末」として販売できるわけである。スマートフォンとしての活用をユーザーに提案するのではなく、ユーザーが求める機能をあらかじめアプリケーションとして搭載する、そのプラットフォームとしてスマートフォン化を図ったわけだ。
Motorola Charm(左)とFlipOut(右)

Motorolaが、Android OSを採用したスマートフォン、Droidをアメリカで発売したのは昨年の11月である。それまでの同社はハイエンド端末の開発に苦しみマーケットシェアと利益の両方を下落させただけではなく、Motorolaのブランドイメージも低下させていた。

Droidは同社が起死回生を狙って投入した製品だが、発売事業者となるVerizonの強力な後押しもあり販売開始後あっという間に大ヒット製品になった。その後Droidoの通信方式を変えて市場に投入したMilestoneもヒットを続け、この2つの製品で「MotorolaといえばハイエンドのAndroidスマートフォンメーカー」というイメージを短期間に確立させたのである。キーボードの無いXT701、カメラを強化したXT702とハイエンドスマートフォンも立て続けに投入、今ではMotorolaの次の新製品に世界中の消費者が注目を集めるほどになっている。なお初代Droidも後継となるDroid Xが発売されている。

また今年になってディスプレイ解像度を落としながらもフルキーボードが反転するBackFlipを投入し、スマートフォンのターゲット層を広げることに成功。そしてこの夏に相次いで投入する3機種により、同社のスマートフォンはハイエンドだけではなくミッドレンジまでにもラインナップが広げている。

昨年わずか1機種でスタートしたAndroidスマートフォンだが、今年中には10機種を超える勢いである。さらに販売方式が特殊な韓国でもXT720の韓国版であるMOTOROIを投入、中国ではAndroidをベースとしたOPhone OSのMT710 ZhilingやCDMA/GSMデュアルモードのXT800 Zhishangと親しみやすい愛称の端末を投入し、いずれもが話題&人気の製品となっている。加えてこの秋にはタブレット型Android端末をVerizonから発売という話も出ているなど、MotorolaのAndroidスマートフォンはあらゆる市場、様々な形状の製品が登場しているのである。
韓国でもスマートフォンに注力

Motorolaは今後もスマートフォンを強化し、スマートフォンのリーディングメーカーとしての地位を確立しようとしている。一方従来から販売している一般的な携帯電話は今後OEM品を増やすなどして自社開発は縮小していくだろう。その結果同社の携帯電話販売台数の総数は今よりも減少してくだろうが、スマートフォンの比率が増えることで利益は向上すると見られる。その結果メーカーとしてのブランドイメージもさらに高まることが期待できる。

復活の兆しが見えたMotorolaだが、残る期待は日本市場への再参入だろう。例えばMilestoneであれば十分日本の消費者にも受け入れられるだけのスペックを備えている。

Android OSはローカライズが簡単なだけに、日本語化も容易なはずだ。そうなればどこの通信事業者から販売されるかが気になってしまうところだが、日本では来年からSIMロックフリーが本格化する兆しもあり、またプリペイドで音声もデータ通信もできる回線が日本通信から提供されている。

話がやや飛躍してしまうが、Motorolaがその巨大なブランド力をバックに「メーカーによるSIMロックフリー端末の直接販売」に乗り出すことも十分可能な環境が整っているのである。いずれにせよ今後海外で発売される同社のスマートフォンは日本にいつでも投入可能な製品が多数となるだろう。Motorolaの動きは海の向こうだけの話ではなくなりつつあるのである。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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