クリエイター列伝 今回は、現在27歳ながらFlash デベロッパーでもあり、テクニカルライターとしてもアクティブに活躍中の池田泰延氏だ。

■ネットでの活動と成功がフリーへの原動力となった
池田氏は、Flashデペロッパー歴歴6年。21歳頃からFlashと関わってきたという。学生時代で1年、卒業後のWeb制作会社で3年、フリーランスで2年といった具合だ。

学生時代は、映像も手がけていた放送サークルに所属。このサークルは、地元の茨城県ケーブル局の番組制作を行っていたそうで番組告知などでWebサイトやFlashの作成を手がけていた。この時期に番組制作という総合作業を経験できたことは、後々の仕事にも役立っているそうだ。

卒業後は、Web制作会社での3年でFlash、HTML、PHPまわりなどのWeb全般の技術を学ぶことができたという。Web制作会社での仕事には不満はなかったという池田氏が3年でフリーランスとなる決断をした理由は、どこにあったのか。

当時、池田氏はWeb制作会社での仕事と平行して自主アプリの制作も開始しており、Adobe CS3風のアイコンが簡単に作れるアイコンジェネレーターを発表。そのアプリが海外のユーザーたちから評価をうけたことによりダウンロード数が一気に増え、AIRアプリケーションのまとめ記事にも取り上げられるほどになったという。ちなみに、Adobe AIR Marketplaceで公開された同アプリは、トップ4にランクインしている。

アプリ成功の直後からブログを立ち上げ、Flashの新技術の研究や発表もあわせて開始。サイトアクセスの上昇を機に、新しいことに挑戦したいという気持ちを抑えきれずにフリーランスに転向した。

■アクティブすぎる活動
フリーとなった池田氏は、様々な可能性に挑戦を始めることになる。
これまでのFlash開発、アプリ制作に加え、フレームワーク解説本の執筆やテクニカル記事のアウトプットといった情報発信を展開し始めたのである。

特に執筆活動は活発で、2009年12月はじめから8か月で5冊を出版している。
執筆内容は、これまであまり書籍化されていなかったFlashの中上級者向け解説書が多く、なるべく短いソースコードにすることで、理解しやすく飽きない解説を書くようにしているそうだ。

池田氏に執筆活動で思い入れのある書籍を上げていただいた。
・『Flash 3Dコンテンツ制作のためのPapervision3D入門』
3Dのフレームワークは自身のサイトでもサンプルとソースコードを公開していたが、覚えにくい分野ということや書籍が少ないこともあり、これらをまとめて書籍化したという。

もう一つが、下記だ。
・『Progression によるFlashコンテンツ開発ガイドブック』
こちらは、共著で参加したものだが開発者の阿部氏との情報交換で書籍もスムーズに執筆できたという。5月には出版を記念したイベント「Progression 4の取扱説明書(トリセツ)」も開催された。

■ロクナナワークショップで講座を開設へ
池田氏は、今年になり執筆活動に加えてロクナナワークショップでの「Progression入門講座」も開設した。講座開設のきっかけは、5月の出版記念イベントが話題となり、より実践的なハンズオン講座を開く話が決まったという。

池田氏の講座は、ロクナナワークショップで現在開講中のProgression開発者 阿部氏の講座に加え、もうすこし入門者向けの位置づけとして、ActionScriptが書けないデザイナーでも参加できる内容だという。

この講座は、月1回、1日6時間のワンディ集中講座で8月6日から開始されており、随時申し込み受け付け中だ。素早くFlashサイトを作りたい方や、Progressionのスピード性を学べる講座として評価も上々のようだ。

池田氏も実際に講義をおこなってみて、初心者ユーザーが実際にはじめにつまずくポイントが発見できたという。特にユーザー視点から使い方、苦手なところが見つけられたことは、大きな成果だという。

■池田氏が気になる技術
書籍でも取り上げたPapervision3Dは、ActionScript 3.0の登場により2.0より10倍近く速く処理できるようになった技術。2.0の頃は、上級者しか使えなかった3D処理が中級者でもできるようになったライブラリだ。英語圏で開発され拡張されていたものだが、池田氏も2008年頃から本格的に取り組むようになったという。

池田氏は、Papervision3Dは思ったとおりに動いてくれるところが良いところだと説明する。3D処理というと、数式や数値計算が多くなると思わがちだが、Papervision3Dは数式を使わなくても動かせる点が取り組みやすい。もちろん複雑な動きには数式が必要になるが、シンプルなモーションであればイメージのままに作っていけるため、ActionScriptの基礎さえあれば扱いやすい技術だという。

iPadなどで話題にもなっている「HTML5」
最近、もりあがってきた感がある「HTML5」だが、ブラウザの実装が鍵で、IE9などのブラウザがサポートすれば標準になるという。現状では、FirefoxやChromeが先行実装しているので、その環境を使って試すことができる。

池田氏がHTML5を試すのに利用しているのが、面白法人カヤックが公開している「jsdo.it」だ。
この「jsdo.it」は、ブラウザベースでソースを書けて実行できるサービスだ。投稿したものがランキングで表示されるだけでなく、ほかの人のコードから実装の技術を学ぶこともできるので、有効に使えるサービスだという。

このサービスを使って池田氏もFlashの動作をHTML5で置き換えられるかなど、試している。実際に試してみた感想としては、HTML5には得手、不得手があるということ。単純なものだと問題なく動くが、複雑なものでは動作が重くなるなど課題も多い。特に書きやすさの違いに大きな差はないが、ブラウザ依存による動作速度差は、かなり大きいという。

■発信により、技術の普及に貢献していきたい
最近話題になっているAndroidについては、(「AIR for Android(プレリリース)」で)Flashを使ったAndroidアプリケーションも作ってみたいそうだ。また、Flashとほかのプラットフォームで生かせる環境や方法を探ってみたいとも意欲を語ってくれた。

これまで多くの先人から多くの技術と知識を与えてもらってきたので、今後は、自分からネットにアウトプットして恩返しをしていきたいと、どこまでもアクティブである。

・Progression によるFlashコンテンツ開発ガイドブック
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・池田氏のClockMaker Blog


池田泰延のProgression入門講座
ロクナナワークショップ

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