Verizon Wirelessは1月に開催された家電関連展示会「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」の場でLTE搭載スマートフォン4機種を発表した。発売は4月以降の予定で、北米38都市で本格的に開始したLTEサービスを一気に加速させる起爆剤となるだろう。

既存のHSPAやEV-DOより高速な通信規格であるLTE(Long Term Evolution)は2009年12月に北欧の通信事業者、TeliaSoneraがスウェーデンのストックホルムとノルウェーのオスロで世界初の商用サービスを開始した。

だがその後各国で本格展開する国は増えておらず、2010年にNTTドコモが開始したLTEサービス"Xi"も東名阪の一部エリアに留まっている。また各国のサービスはデータ通信端末によって提供されており、スマートフォンなどハンドセット型端末の登場は2011年半ばころと見られていた。

Verizon Wirelessも2010年12月にデータ通信端末によるLTEサービスを開始したものの、スマートフォンは1機種程度を年明けに投入すると見られていた。だが蓋を開けて見れば4メーカーから4機種のスマートフォンが発表され、LTEサービスの魅力を大きく引き上げている。

Samsung電子の4G LTE Smartphone、LG電子のRevolution、HTCのThurnderBolt、そしてMotorolaのDroid Bionic 4Gは、いずれも4.3インチの大型高解像度ディスプレイを備えており、WEBサービスやSNSの利用だけではなくストリーミングビデオの視聴などLTEの高速なネットワークを十分活用できる端末になっている。また消費者にとってもLTEサービスの加入を魅力的なものにしてくれる製品だ。
LTE端末をいち早く導入したMotorola

今回製品を投入する4社はここ数年スマートフォン開発に力を入れており、LTEに対応した製品の開発も各社が準備していたところだ。だが製品を投入するとしてもLTEサービスが限定的な国では販売数も期待できず、開発コストが上がってしまう。

一方通信事業者側にとってもユーザー数の増えないLTEサービス向けの端末数を増やすことは難しく、結局メーカーか事業者のどちらも一歩前に踏み出せない状況が続いていた。しかしVerizon Wirelessが北米全土にLTEサービスを開始する姿勢を見せたことから、各メーカーも相次いで製品化に踏み切ることができたのだろう。

北米の携帯電話市場はW-CDMAやHSDPAの開始の遅れなど、これまではヨーロッパやアジアに遅れを取っていた。またW-CDMA/GSM方式が事実上世界の標準方式となった今となっては、CDMA2000方式がメジャーな北米市場はなおさら携帯電話技術において遅れを取っているという印象が強かった。

だがVerizon WirelessのLTEの本格的な開始により、次世代通信技術に関しては北米が世界を一歩リードした格好になった。タブレット端末も含め多数のLTE端末がまずは北米向けに投入される、しばらくはそんな時代が続くことになりそうである。

そして各メーカーは北米以外へのLTE端末の開発も進めるはずだ。Verizon Wireless向けのLTE端末はCDMA2000とLTEのデュアルモードに対応しているが、LTEオンリー、あるいはLTEとW-CDMAの両方式に対応した製品が世界各国向けに出てくるだろう。

各国の通信事業者としてもUSBモデムによる高速インターネット接続サービスよりも、スマートフォンによるマルチメディアサービスを含めたリッチコンテンツの体験提供のほうがLTEサービスへの顧客の移転を進めやすい。そのためLTEをこれから開始する通信事業者はスマートフォンを中心とした製品とサービス展開を進めていくと予想される。

このようにLTEのサービス拡大がスマートフォン中心に行われていくとなると、各メーカー間の力関係にも大きな変化が現れてくるだろう。

例えば世界シェア1位のNokiaは今回北米向けにLTEスマートフォンは投入していない。同社は多数のエントリーモデルを販売しながら上位のスマートフォンも提供し、自社ラインナップの中から消費者に好みの製品を提供してきた。

だがLTEではスマートフォンがハンドセット型端末の標準であり、フィーチャーフォンやエントリーモデルが出てくることは当分ないだろう。つまりLTEマーケットではNokiaの今の製品戦略は消費者へアピールしにくく、下落気味のシェアを保つためにもスマートフォンへの注力がより必要だ。

また高速なLTE回線により端末が常時インターネットにオンライン接続されるようになれば、スマートフォン上で利用するサービスやアプリケーションのスタイルも大きく変わっていくだろう。たとえば翻訳アプリならば翻訳リクエストのたびにサーバー上の辞書を閲覧するといった使い方も実用的になる。

クラウド型サービスがローカルストレージと同じ感覚で利用できるわけで、そうなると高速回線にアクセスできないスマートフォンでは新しいサービスが使いにくくなっていくだろう。販売が好調なAppleのiPhoneも、LTE版が出遅れればシェアの下落もありうるのだ。


今年は各国でLTEサービスが開始される予定だが、スマートフォンの登場によりユーザーのLTEへの移行が一気に進むかもしれない。それにより各端末メーカーの製品開発方針も様変わりし、販売台数シェアにも大きな変動が起きることが予想される。

いずれにせよ2011年はスマートフォンの携帯電話販売台数に占める割合がさらに増加し、スマートフォンに強いメーカーが力を発揮する時代となるだろう。

山根康宏
著者サイト「山根康宏WEBサイト」

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