リコーフォトギャラリー「RING CUBE」で開催している「OVERSEAS 2011―世界を選んだ写真家たち― PartⅡ」 (2月19日~3月6日)では、日本で活躍する3名の外国人写真家、マーティン・ホルトカンプさん、ジェン・ケイさん、ルシール・レイボーズさんの作品が堪能できる写真展だ。

東京は、雑多でにぎやかで、常に動いている。その一瞬を外国人写真家の目を通して1枚の作品として切り取られている。我々が普段から見慣れているはずの風景が、会場ではいつもと違う顔をのぞかせるのだ。そんな東京について、マーティン・ホルトカンプさんは、「ひとつの都市というよりは、ひとつの国ですね」と、あらゆるものが集まっている東京の魅力を語ってくれた。


■作品に色彩が表れてきた - マーティン・ホルトカンプさん
マーティンさんが、最初に日本を訪れたのは仕事で来日した1995年の大阪。その途中で東京に立ち寄ったのが出会いだという。マーティンさんは、東京は大きな街で、映画「メトロポリタン」「ブレードランナー」のように感じたそうだ。
2007年からマーティンさんは、東京に暮らしはじめ、写真に変化が表れてきた。「以前に住んでいたロンドンは雨が多くて、灰色のイメージでしたが、東京に住み始めて、作品に色が出てきましたね。テクスチャーアートのようにさまざまな色があるわけではないのですが、ひとつの色が強く表れるようになりました。」」と、意識したわけではないが、自然と東京から影響を受けているという。

■人種、国籍を超えた作品を
すでにマーティンさんが東京を拠点にしてから4年が過ぎようとしている。仕事ではファッション系の写真撮影が多いマーティンさんだが、今回の展示では東京の風景を撮影した作品で埋め尽くされる。

「観光客のような視点からは脱却していると思います。国籍を超えて、人としての興味で撮影しているのです。そのため、日本人にも通じる作品になっていると思います」

テーマはひとつには絞らず「一連の作品を見ていただいて、ひとつのイメージを抱いてもらえればうれしいです」と、作品全体を通して感じられるテーマとなっている。

特に、建物とか、人物を撮りたいということではなく「何か自分に訴えかけてくる状況があり、それを写真にしたらどうなるのかを考えるのです。まずは撮って、それを見て撮りなおして。非常に多くの枚数を撮影することもあります。その中で徐々に絞っていくのです」と、写真に対する姿勢が、この独特の雰囲気を作り出しているのだろう。

■ロンドンともベルリンとも違う東京
「ロンドンやベルリンは、芸術作品の情報が洪水のように押し寄せてきます。東京だと積極的に取りに行かないといけない。生活はあまり差がないのですが、情報では差がありますね」と、大都市ながらロンドンと東京の違いを語る。

「今は違うかもしれませんが、ロンドンに住んでいたころは、テロを警戒して、街中でカメラを構えるとすぐに警察が来ました。東京は安全なので、そういったことがないですね。どこに行っても迷うことはありません」と、世界と東京の危機意識の違いや安全性を教えてくれた。

東京に魅せられたマーティンさんだが、最近では東京以外にも興味が出てきているという。「都市部に住んでいますが、郊外はぜんぜん違いますね。今は東京の外に出ることが面白いです。」と新しい東京にも興味津々といった様子だ。

最後に「すべてを見てしまったという考えでは、何も見えてきません」と、これからもマーティンさんは自分の気持ちひとつで、さまざまなものが見えてくることを訴えた。

日本人では感じにくい東京の一面を、1枚の写真に収めた写真展「OVERSEAS 2011」。外国人写真家が感じた日本の文化から、東京を見つめなおしてみると、新たな発見ができそうだ。


OVERSEAS 2011―世界を選んだ写真家たち― PartⅡ
2011年2月19日(金)~3月6日(木)
11:00~20:00(火曜日休館)※最終日は17:00終了
入場無料

マーティン・ホルトカンプ
ドイツ生まれ。イギリスのBournemouth & Poole College of Art & Designを卒業後、約15年間ロンドンを拠点とし、ファッションや音楽業界のフォトグラファーとして活躍。2007 年以降、東京に拠点を移して活動中。これまでに、Levi's やNikeをはじめとする数々のインターナショナルブランドのキャンペーンや、「i-D」「GQ」などのエディトリアルページなどを手掛けている。
マーティン・ホルトカンプさんのサイト

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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