自作パソコンの世界でもパソコンの性能を極限にまで高めるオーバークロック(OC)の世界は最高峰の楽しみでもある反面、パソコンを壊す危険性もある世界ながらパワーユーザーの多くがチャレンジしているほど、魅力的だ。

この現象は、日本だけでなく世界中のPCユーザーに共通であり、「ギガバイトPC道場」でも紹介しているように、オーバークロックの世界大会が開かれているほどだ。
そんなオーバークロックの世界で、またひとつ驚異的な記録が生まれた。

世界的に有名なオーバークロッカー hicookie氏が、GIGABYTE「GA-X58A-OC」+Intel Core i7 Extreme Editionの組み合わせで、約7.1GHz(7092.6MHz)という前代未聞の記録を樹立したのだ。この組み合わせでは、現時点で世界最速となる。

「GA-X58A-OC」は、オーバークロックのために設計されたOC専用マザーボードであり、オーバークロックのための様々な機能が盛り込まれている。
そこで今回は、世界最速OCマザーボード「GA-X58A-OC」の真相に迫ってみよう。

990X X58A-OC (動画)

■「コールドブート問題」に対策したマザーボード「GA-X58A-OC」
「オーバークロッカー」と呼ばれる世界の強者たちは、日夜、その腕を磨いているわけだが、オーバークロックで重要なPCパーツがマザーボードだ。

世界最速のスコアをねらう場合、CPUを極限まで高速化するが、安定動作を維持するために必要なのがオーバークロックで派生する問題に耐えられるマザーボードなのだ。

強者たちは、CPUの処理速度を高速化させるために規定外のオーバークロックを行うが、高速化すればするほど、CPUは高熱を発生させる。そこでオーバークロッカーは、高熱を発生するCPUを安定動作させるために「液体窒素」という最終兵器を使うわけだ。しかし、これが問題で、CPUを冷やすために使った「液体窒素」が、マザーボードを低温にして動かなくなる現象を発生させる、いわゆる「コールドブート問題」と言われている問題だ。

「GA-X58A-OC」は、そんな「コールドブート問題」に対する対策が施されたマザーボードなのだ。


■OC専用マザーボードを支える、5つの機能
「GA-X58A-OC」は、Intel X58 Expressチップセットを搭載した、OC専用マザーボードだ。

LGA 1366ソケットを採用しており、コンシューマー向けとしては最高峰のCPU「Intel Core i7-990Xプロセッサ・エクストリーム・エディション」に対応している。

このマザーボードの開発にあたり、GIGABYTEは世界中のオーバークロッカーを対象に調査を行った。

オーバークロッキングに必要のない機能やパフォーマンスに影響する機能は取り除き、純粋にオーバークロッカーが求めている機能を積極的に採用した。搭載されている部品だけではなく、レイアウトにも細心の注意が配られている。

たとえば、冷却用のコーティングが塗りやすいようにスペースを確保し、部品間のデータや電力の転送を最短化するための回路設計も採用しているのだ。

その他にも、「OC-VRM」「OC-Touch」「OC-PEG」「OC-Cool」「OC-DualBIOS」といった、5つのオーバークロッキング機能も備えている。

では、これら5つの機能を詳しくみてみよう。

●低温でCPUに高電流を供給する「OC-VRM」
液体窒素による究極のオーバークロックでは、低温の中でCPUに高電流を供給する必要がある。そうした状況に対応するために開発されたのが新しいVRM設計「OC-VRM」だ。

「OC-VRM」では、導電性の高いPOScap、50A定格MPFC (Max Power Ferrite Core)チョーク、ドライバMOSFETなどが採用されており、高効率・低温でCPUに高電流を供給することができる。

オンボード・スイッチを操作することで、リアルタイムでPWM周波数をオーバークロックすることも可能だ。CPUが最大電力を要するときPOScapやMPFC Choke設計により、PWM周波数を上昇させ、より多くの電流を供給することができる。

また、特別に小型部品を吟味してレイアウトを慎重に設計したことで、よりすばやく簡単にマザーボードをコーティングできるようになっている。
高効率・低温でCPUに高電流を供給できるシステム設計


●ワンプッシュで4GHz化する「OC-Touch」
「OC-Touch」は、素早く簡単に最高性能を引き出すことができるボタンだ。オンボードのOC-Touchボタンを使えば、手動でCPU動作倍率の上げ下げや、BCLKの設定が簡単にできる。

さらに、OCギア(Gear)ボタンひと押しでBCLKを0.3MHzまたは1MHzずつ引き上げるように設定することも可能だ。

これらの変更は、BIOS、DOS、またはWindowsのいずれかで、システムを再起動させることなくいつでもリアルタイムに行うことができる。このように微調整をすばやく行えるため、このボタンだけで自己新記録を達成できるユーザーもいるだろう。

オーバークロックを始めたばかりで複雑な設定が苦手な人は、オンボードの4G Readyボタンをひと押しすれば、自動的に4GHzに到達させることができる。

慣れたオーバークロッカーはこのボタンを活用することによって、CPUの最良マージンを見つける作業を続けなくても、4GHzに到達させることができる。ボード上に電圧測定モジュールも埋め込まれているので、CPU、メモリなどの電圧測定も可能だ。
素早く簡単に最高性能を引き出すことができるボタン


●より安定したPCIe電源を供給する「OC-PEG」
自作パソコンでは、ビデオカードの3枚挿しの「3way SLI」や4枚挿しの「4way CrossFireX」によって、グラフィックスの処理能力を高めることができる。ここで問題となるのが安定した電源の確保だ。

3wayや4way・グラフィック構成を組んだ時にPCIeへより安定的に給電するために、OC-PEGと名付けたSATA電源コネクタを2個設置した。各コネクタは、別々の電源フェーズから電力を汲み取るよう設計されているため、さらに安定したグラフィック・オーバークロックを楽しむことができる。

また、PCIeスロットに独立した電源回路が提供されるため、グラフィックカード一枚差しでのオーバークロックの性能もアップ。4way CrossFireXの時も、OC-PEGを使えば24pin ATXコネクタでの過電流を回避するのに役立つわけだ。

ボード全体にPOScapが使用されているため、ボードのコーティングが簡単にできる。面倒な処理は手早く済ませて、オーバークロックに集中することができるわけだ。
C-PEGと名付けたSATA電源コネクタを2個設置


●システム全体の温度を制御する「OC-Cool」
オーバークロックの世界では、マザーボードの温度制御が重要だ。
「OC-Cool」は、ヒートシンクにLEDを搭載した全く新しいサーマルデザインを採用した。LED発色の熱設計および7x 4ピンSmart Fanコネクタを備えており、システム全体の温度を簡単に制御することができる。

OC-Coolヒートパイプは、システムの対流を最大化して、IOパネルを通して熱気を排出し、パッシブ冷却(受動冷却)を最適化する。ノースおよびサウス・ブリッジのLED発色でX58A-OCをさらにクールに引き立ててくれる。
全く新しいサーマルデザイン


●BIOS障害を回避できる「OC-Dual BIOS」
突然のBIOS障害を回避できる有り難い機能が「OC-Dual BIOS」だ。
「OC-DualBIOS」は、オンボード上にBIOSスイッチャとLEDインジケータを備えた、Dual BIOSとは一味変わった設計となっている。通常使用とオーバークロック用に2つのBIOSを使い分けることができる。

オーバークロック中にBIOSに障害が発生した際、通常使用BIOSをバックアップ用BIOSとして起用することもできる。さらに、2つのBIOSを使用して、最大16種のオーバークロック・プロファイルの保存が可能だ。新しいBIOSにアップデートしたくても、元の設定を失いたくない、といったオーバークロッカーの声を反映させた機能といえる。

2つのBIOSの切り替えが可能なため、両方のBIOSをアップデートしなくても片方のBIOSを使って新しいバージョンのBIOSを試すこともできる。このように、不要なBIOSアップデートを防ぐことができ、時間の節約にもつながるわけだ。
BIOS障害を回避できる「OC-Dual BIOS」


GIGABYTEの「GA-X58A-OC」は、最新技術を凝縮したオーバークロック専用のマザーボードだ。オーバークロックを意識したパーツと機能を備えている。オーバークロックの頂点を極めたい人には、魅力的なマザーボードと言えるだろう。

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