絵画のような不思議な女性が会場をうめつくす、そんな幻想的な村山 長 氏の写真展「Travels with an imaginary girl」が東京銀座のリコーフォトギャラリー「RING CUBE」で4月13日から4月24日まで開催されている。目の前に不意に現れては消える女性の姿を写し出した作品たちは、夢か現実か分からない不思議な空間を表現し、独特の雰囲気を持っている。ありきたりの言葉では説明しづらいような妖艶さが会場にはただよっているのだ。

■絵を描く感覚で不思議な作品を仕上げていく
「タイトルは想像の少女との旅なのですが、旅というよりも人生なんです。女性もシンボルで、そのような世界観を写真で表せればと思っています。でも、言葉で語ると偏ってしまうので、見たままに感じてほしいんです。
文字で表現するなら本、写真に言葉を付けるのであれば映画を作る方がいいでしょう。」

村山長さんは、写真でしか表現できないものを追求している今回の不思議な感じの作品展を開口一番、こう語った。

「絵を描くのが好きで、その感覚で作品を作っているのかもしれません。不必要な情報を削除する作業をしています。Photoshopで何か情報を加えるのではなく、暗室で行っていたようなアプローチで作品を仕上げています」と語るように、1枚の作品を仕上げるのに3日ぐらいはかかっているのだそうだ。

■被災地での撮影の機会をいただいたことに感謝
ニューヨークのInternational Center of Photography(ICP)で写真を学んだ村山さんは、そのつながりからフランスなどを中心に作品を発表してきた。

このようなつながりから、雑誌ル・モンドから東日本大震災の取材を依頼されている。
「いままで、ドキュメンタリーやフォトジャーナリズムには興味がなかったというか、あまりつながりがなかったのです。しかし、日本人ですし何かできないかと思っていたところ、ル・モンドの取材で被災地に行くことになったのです。」

普段の活動とは違う、報道よりの取材は、村山さんにも多くを学ぶ機会にもなったという。
「面と向かって30分ぐらい話を聞いて、写真を撮らせていただくんです。まっすぐ撮るというか、向かい合うことに重点を置きました。そうなったんです。想像を絶した話でしたので、自分の中でコントロールしたのではなく、引きずり込まれていく感覚ですね。」

■人生観を変えるような写真を目指す
今後の活動について、「以前は、外国へ行きたいと思っていましたが、いまは、日本が好きなので、日本でしたいことができれば、日本でできることがあるのではないかと思うようになりました」と、日本に活動の拠点を置くという。

詳しい活動について村山さんは、「一緒に被災地に行ったジャーナリストは、チェルノブイリで取材をしました。自分はチャリティーイベントに呼ばれて、被災地の話を伝える側になっています。」と、震災関連の仕事もすすめていくという。

その一方で、「本を読んで人生観が変わるようなことを、写真で表現したい。」と、抱負を述べてくれた。

村山さんが、これからどのような写真を撮っていくのか、これまでの経歴に加えて、新たな日本での活動により、写真の奥深さを広げて言って欲しいものだ。今後の活動を期待とともに見ていきたい。

村山長 / Hisashi Murayama 写真展「Travels with an imaginary girl」
2011年4月13日(水)~2011年4月24日(日)※休館日を除く
開館時間:11:00~18:00(火曜日休館)※最終日17:00 まで

村山 長
世界各地の写真祭でのグループ展覧会・スライドショーに参加する。2003年より写真コレクティブグループ“Tangophoto”のメンバーとして活動する。2009年よりプロジェクト“The Singled Person”に参加。2010年3月、日本へ活動の拠点を移す。
村山長ウェブサイト

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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