日本に新たな写真の撮り方、見せ方、見方を伝えたい──そんなディレクター・伊藤 剛氏による「Project Basho」フォト・コンペ受賞作品展「ONWARD」が、東京・銀座リコーフォトギャラリーRING CUBEにおいて5月4日(水)より開かれることになった。

「ONWARD」は、伊藤 剛氏によって設立されたアメリカ・フィラデルフィアの写真センターである「Project Basho」が行っているフォト・コンペティション。4回目を迎えた今回のコンペでは日本を含む全世界から約2,200の作品が集まった。その中から写真家/写真教育家として知られるラリー・フィンク氏によって選ばれた70点の入賞作品が、今年初めて東京はRING CUBEにて展示される。

今回選ばれた70点の写真は、撮影方法もテーマも、その写真としてのあり方も、それぞれが全くに違う。ここにあるのは現在の「写真」というアートが勝ち得た可能性の広さとクオリティであると言っていい。この写真たちとこの写真展は、現在の日本の写真界に対してどのような意味を持ちうるだろうか? 

写真展開催に先立ち、今回、一足先に来日した伊藤 剛氏の話を聞くことができた。1974年生まれの彼は、アメリカの大学で写真を学び、卒業後の2002年、フィラデルフィアに写真に関するコミュニケーション・センター「Project Basho」を開設する。それから8年、今回の彼の来日と「ONWARD」展の日本開催は、ある意味で、アメリカに於ける写真の文脈を日本にぶつけることとも言えるだろう。

■アメリカに於ける「写真」の層の厚さ
──フィラデルフィアに写真センターを作ろうとしたきっかけは?
「単純に、まだフィラデルフィアに写真センターがなかったからですね(笑)。アメリカの写真の層はすごく厚いんです。中学校でも教えているくらいだし、プロ/アマを問わず、写真が本当に幅広く楽しまれている。例えば週末に撮るだけの写真好きな方、でも素晴らしい写真を撮る人もたくさんいます。そういう人たちがコミュニケーションできる場を作りたいと思ったのがきっかけですね」

──しかし、どうしてフィラデルフィアだったのでしょう?
「やはり写真のメッカはニューヨークのマンハッタンなんです。でもそこは既にマーケットやキュレーターのあり方が成熟していて、競争もすごく激しい。そのぶん縦割りになってしまっていたり、キュレーターの権力の強さによる弊害があったり。ニューヨークまで2時間のフィラデルフィアであれば、写真を撮る人々の層の厚さに応じた活動ができるんじゃないかなと」

──実際、写真センターをアメリカに作ってみていかが思われましたか?
「やっぱり潜在的なニーズがあったんだなと思いましたね。色々な人が自分の写真を持ち寄ったり、それについて語り合ったり、時には僕が写真を教えたりもしながら、いいコミュニケーションの場になっていると思います。Project Bashoの“Basho”は“場所”のことなんです。暗室を介してみんながつながっているようなイメージかな」
Rebecca Soderholm“Emma and Water Glass, New Haven”

■「写真」の持つ多彩さを見てほしい!
──初めて「ONWARD」展が日本で開催されることになったわけですが、アメリカと日本に於ける写真をめぐる環境の違い、そしてこの写真展が日本で開かれることについてはいかが思われますか?
「今回は初めて日本語での募集も行ったので、日本の写真家の応募が増え、3人の入賞がありました。このことは、日本の写真家のレベルの高さを物語っていると言えるでしょう。一方で、日本に於ける写真をめぐる状況の貧しさも指摘しておく必要があります。まだまだ写真についての議論は硬直していると言えるんじゃないかな。
 とにかく一度、ラリー・フィンクが選んだこれらの写真を見てほしい。一人の審査員が選んだとは思えないほど多彩な写真たちが揃っています。今回の写真展をきっかけに、これも“写真”なのかという再認識が起きてくれれば嬉しいですね」

──伊藤さんにとっては、「写真」とはなんですか?
「自分を豊かにしてくれるためのツール、かな。写真を撮ることや見ること、語ることによって、新しいものの見方を知ることが本当に多くありましたから。また、写真ほど平等でありながら、なおかつ個人の傾向が出るものは少ないと思うんです。そして視覚的であるぶん、国境も越えやすい。その意味でもやはり、写真はコミュニケーションの“場所”なのかもしれませんね。この写真展が日本で開かれるということも含めてね」
Virginie Blachere “Richard Feliz”

Project Bashoフォト・コンペ受賞作品展「ONWARD」写真展情報
主催:リコー
期間:2011年5月4日(水)~2011年5月22日(日) ※休館日を除く
会場:リコーフォトギャラリー RING CUBE
東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階(受付9階)
問い合わせ先:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)
休館日:火曜日
入場料:無料

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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