暑い夏を涼しく過ごすには、打ち水、風鈴、かき氷に瑞々しい夏野菜など・・・。
日本には、さまざまな工夫があるが、忘れてはならないのが海水浴だ。海は日本の食を支えるだけでなく、夏の避暑として日本の生活に根付いている。夏になったら海で泳げば、体も一気に涼しくなる。

2011年、今年の夏もすこぶる暑い夏休みになったわけだが、この期間にあわせて、東京・銀座にあるリコーフォトギャラリーRING CUBEでは、夏の特別企画「海獣たちとにらめっこ」が8月3日(水)から9月4日(日)まで開催されている。この「海獣たちとにらめっこ」は、水中写真家・越智隆治の心温まる海獣写真により、RING CUBEギャラリーがまるで海の中になったような大人から子どもまで楽しめる展示だ。

わざわざ海まで泳ぎに行かなくても、銀座のど真ん中で水中散歩気分が味わえるといった、実に涼しい企画となっている。

この「海獣たちとにらめっこ」は、涼しくなるだけでなく、2009年「銀座どうぶつ園」、2010年「銀座鉄道」に続く夏の特別企画として、来場者が楽しめる工夫が盛りだくさんな展示だ。

今回は、この写真展をプロデュースしたRING CUBE スタッフの坂口亜弥奈さんに、「海獣たちとにらめっこ」の楽しみ方を伺った。

まるで水中にいるような錯覚に陥る。中央に座っているのがRING CUBEスタッフの坂口亜弥奈さん

■大人から子どもまで幅広く楽しめる夏企画
「企画は昨年の10月から考え始めました。8階がまるごと海の中になればいいなと。それをリコーの総合デザインセンターに相談して、こういう展示がいいんじゃないか、ああいう仕掛けをしたら面白いんじゃないかと考え、始まったのです。」と坂口さん。さまざまな企画があったが、海の中のお魚や動物は、赤ん坊からお年寄りまで親しめるうえ、見ただけで涼しくなりそうというのが決め手となり、今回の実施に至った。
魚とにらめっこできるように子どもの目線にあわせている

一緒に写真展を作り上げたリコーの総合デザインセンターは、デジタルカメラから複写機などのオフィス機器まで、リコーの商品デザインを担当している。2009年の銀座動物園以降、写真展では、展示の空間やダイレクトメール、ポスターなどをデザインしているが、これにより写真展全体のデザインの工夫がみられる。単なる水中写真展ではない、RING CUBEらしさを出すのに苦労したとのことだ。
プロジェクターの映像を組み合わせた展示。カラダの動きにあわせて泡が出たりするぞ

最初の難関は写真展のタイトル。どうすればRING CUBEらしさが出るかということで、1カ月ぐらいかけて「海獣たちとにらめっこ」にたどり着いた。イルカとか、クジラとか、写真の中で海獣が親しく寄ってくる。親子連れの方にも楽しんでもらいたいし、それがすぐに伝わってくるようなタイトルにしたいということもあり、“にらめっこ”がキーワードになった。このコンセプトが決まってからは展示写真選びもスムーズになったそうだ。
怖いサメもこんな展示ならかわいく思えてくる

■こんな展示ならやってみたい
「海獣たちとにらめっこ」の企画が決まるのにあわせて、写真家も越智隆治氏に決まった。ちょうど写真集が発売されるタイミングで時期的にもいい。
「今年、2~3冊ぐらい出版されることが決まっていまして、写真展にあわせて新刊も出されます。」

越智氏は最初からRING CUBEに縁のある写真家ではなかった。RING CUBEでは、RING CUBEでは、写真家を先に決めるのではなく、この写真がいいというところから、写真家が決まっていく。


越智氏に写真展への協力をお願いに行ったところ、「非常に驚かれていましたね。メーカーギャラリーの写真展を見に行ったことがなかったとのことでしたので、RING CUBEで開催した写真展『銀座どうぶつ園』展示した様子を写真で見せたんです。ドーナツ型のギャラリーで次にどんな動物が来るか分からないから、すごく面白い。こんな展示ができるならやってみたいという話になったんです。」
ヒレなどを立体的に組み合わせて展示している

■ワクワク感いっぱいのにらめっこ
次に何が来るか分からないワクワク感が写真展を楽しくしている。RING CUBEがキューブ状であることが活かされ、意図的に目隠しをするようなレイアウトにしたり、あえて次がチラッと見えるようにしてみたり。実際に海に潜るときもそう。必ずそこに、イルカがいるとは限らない。
愛くるしい海獣たちがお出迎えする、子どもでも安心できる写真展だ

写真展にはいろいろな写真が必要なため、数多くの写真をもらって、スタッフが選定し、本人に確認。それでも、ぴったりな写真がない場合もあるため、こういう写真が欲しいという要望も出した。海獣たちとにらめっこできる写真、イルカの群れが階段を下りていくような写真などをオーダーし、越智氏に探してもらう。それを何回も繰り返していった。
そうして、「海獣たちとにらめっこ」というタイトルにぴったりな写真展ができあがっていった。
水中散歩のスタートが感じられる階段の展示

■ダイレクトメールまでこだわる
その一方で、越智氏がバハマにいるための苦労があったとのこと。それは、展示の全てがスタッフにお任せだったからだ。
事前に作った会場のモックアップ

基本的に、越智氏の作品を展示する個展だから、こういうパターンは通常はない。事前にモックアップを作って、打ち合わせをしたのだが、最終確認は写真家にしてもらうのが普通だ。それをスタッフが行った。モックアップで全体のイメージは共有していたが、どの写真をどのように使うかなどのやりとりは全部バハマとメールで行った。「土日は船から下りられるので、メールで送ってチェックできるのですが」、越智氏は船に乗ったら1週間は乗りっぱなしだった。
ただ、「現地で作品を撮っていらっしゃいますから、写真を選んでいる途中でも、作品がプラスされてくるんです。」というよい面もあった。タイミングさえあえば、欲しい写真をオーダーできる。
こだわりのダイレクトメール。動物たちが飛び出してくる

写真展だけでなく、ダイレクトメールにもこだわっている。ダイレクトメールを見て、来場してもらうため、写真選びには力を入れる。それは当たり前として、その先の工夫を行った。
「ダイレクトメールはたくさん準備しましたが、すぐになくなったのでさらに追加したんです。」
越智氏に了解を得て、アイデアも出してもらったほど。にらめっこだと、普通に動物のアップの写真にはたどり着くが、それだけじゃ満足できない。もう一工夫と言うことで、切れ目を入れて飛び出させた。3Dが流行っているが、それをいかにローテクでできないかと。ダイレクトメールは重要視されないものだったりするが、これで話題作りができないと注力した結果、多くの人がダイレクトメールを手に取り、増刷するほどの人気となった。
迫力満点のゾウが泳ぐ写真

これほど、こだわっている「海獣たちとにらめっこ」は、いままでにないような写真展となっている。新しい写真展の形を楽しむうえでも、暑い夏を涼しく過ごすうえでも、おすすめできる写真展と言えそうだ。
外からも海獣が挨拶してくれる

越智隆治(おち たかじ)
水中写真家
慶応大学文学部人間関係学科卒業。産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリアでのホオジロザメ取 材などの水中取材経験もある。ダイビング経験本数5,500本以上。

夏休み特別企画「海獣たちとにらめっこ」
主催:株式会社リコー
協賛:シーアンドシー・サンパック株式会社、特定非営利法活動法人 OWS
期間:2011年8月3日(水)~2011年9月4日(日) ※休館日を除く
会場:リコーフォトギャラリー RING CUBE
   東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階(受付9階)
問い合わせ先:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)
休館日:火曜日
入場料:無料

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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