暑い夏休みにぴったりな特別企画「海獣たちとにらめっこ」が、東京・銀座にあるリコーフォトギャラリーRING CUBEで8月3日(水)から9月4日(日)まで開催されている。
影から見え隠れするサメや、まるでこっちを向いて「にらめっこ」しているような、子供の目線にあわせた熱帯魚たち、天井をゆったり泳いで行くウミガメ、その巨大さが分かるように床に展示されたマンタなど、大人から子供まで楽しめるような遊び心が満載している。水中写真家・越智隆治氏の写真が、RING CUBEの全面に飾られ、まるで水中散歩をしているかのような気分になる。

今回、1年のほとんどを海外で撮影しているという越智氏が写真展のために帰国し、8月12日にトークショーを行った。この機会にあわせて、お話を聞くことができた。

ほとんどを海外で撮影している水中カメラマン・越智隆治氏

■潜水取材班でカメラの腕を磨く
学生時代からダイビングをしていたという越智氏は、新聞社の報道部門で仕事をしたかったそうだが、水中の取材をするなら写真部でないと機会がないということから写真部に進んだ。
「新聞社で潜水取材班に入って、写真記者として潜って取材したのがカメラマンのスタートですね。そこからは学ぶというよりは技術を盗めという感じでしたね。」と水中カメラマンのスタートを切った。
「入社当初から、10年ぐらい務めたらフリーになろうと決めていました。フリーになって最初のころはダイビング雑誌などから依頼された仕事をしていました。」
写真展では天井を見上げるとウミガメが優雅に泳いでたり

■ベストポイントは情報収集が重要
今回の写真はバハマの海で撮影したものが中心となっているという。

「イルカが集まっている海域があるんです。1998年に、クルーズコーディネーターとして、人を集めて船をチャーターしてドルフィンクルーズを始めたのです。多くの人が参加してくれまして、今回の写真展に来ていただいた人も多いです。」
水中での撮影の様子。優雅に泳ぐザトウクジラの雰囲気も写真展から伝わってくる

このほかにも、トンガのザトウクジラ、フロリダのマナティなど海洋哺乳類を撮影し続けており、写真からは、人懐っこい動物の姿も見えてくる。トークショーでは会場に多くの観客が集まり、素潜りでの撮影の様子、300匹ものジンベイザメとの遭遇、危険なタイガーシャークの撮影、そして今回のテーマとなっている人に寄ってくる動物たちの話で盛り上がった。
「人に寄って来る、人懐っこいところをテーマにしています。海洋哺乳類をただ被写体ではなく、海の中でいっしょに遊べる友達みたいな。そういう感じで接することができるところをリサーチして撮影に行っているんです。」
越智氏はあらゆる場所で撮影してきた。今回の写真展はその集大成ともいえる

単に人を知らないということではないそうで、同じ種類のイルカでも場所によって慣れていたり、慣れていなかったりするという。海の生き物たちの警戒心がない海域を選ぶことで、このような人懐っこい仕草の生き物たちを撮影できたのだ。
ただし、人と近い所で生息している弊害もあり、背びれなどにキズを持つ動物も多い。トークショーでは、そういう動物たちと接することで自然の大切さを感じてもらうための入り口にこの写真展がなることができればと語っていた。
実際の撮影でも海洋哺乳類が人懐っこく寄ってくるのだ

撮影場所の情報などは、やはり独自のネットワークで収集しているという。
「日本では情報が遅いので、海外のカメラマンの交流から情報を得ています。シロナガスクジラをはじめ、さまざまな生物のリサーチを進めています。」
トークショーには会場からあふれるほどの人が集まった

■みんなのアイデアが詰まった写真展に
越智氏は、今回の写真展について、「子供も楽しめる写真展で、いままでとは違う写真展になったのではないかと思います。」と語る。

今回の写真展では、越智氏のアイデアも生かされており、その一つが、床に描き出されているマンタだ。
「マンタを床に展示して、子供たちに乗ってもらって大きさを感じてもらえればと思って提案しました。どんどんおもしろい意見を出してくださいというので、床に展示というのを提案したのです。自分の作品を踏んでもらう感じになるので、カメラマンによっては邪道だという人もいるかもしれませんが、私は写真に親しんでもらえればいいと思っています。夏休みの子供向けの展示で、これからの写真展と思っています。しかも、1人だけでは思いつかないアイデアもいっぱいですしね。」
床いっぱいに広げられたマンタの写真。その大きさが実感できる

今回の「海獣たちとにらめっこ」は、単に写真が並んでいるだけの写真展ではない、新しい展示方法を模索し、いままでにないような動物たちの写真と遊べる新しい体験ができる写真展を実現したといってもいいだろう。

この夏、お時間があれば、是非銀座で「海獣たちとにらめっこ」をしてみて欲しい。
ちょうど子供の目の高さにあわせた展示となるように工夫されている


越智隆治(おち たかじ)
水中写真家
慶応大学文学部人間関係学科卒業。産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリアでのホオジロザメ取 材などの水中取材経験もある。ダイビング経験本数5,500本以上。

夏休み特別企画「海獣たちとにらめっこ」
主催:株式会社リコー
協賛:シーアンドシー・サンパック株式会社、特定非営利法活動法人 OWS
期間:2011年8月3日(水)~2011年9月4日(日) ※休館日を除く
会場:リコーフォトギャラリー RING CUBE
   東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階(受付9階)
問い合わせ先:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)
休館日:火曜日
入場料:無料

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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