都知事賞の福井秋廣氏


大正15年に創設された、歴史ある写真愛好家の団体「全日本写真連盟」は、写真教室や撮影会、などの地域活動から、国際写真サロン、全日本写真展、日本の自然写真コンテストなど、国際的な行事まで幅広く展開している写真団体だ。

全日本写真連盟は全国で4つの地域本部に分けられており、約16,000人の会員を有する。そのひとつである、全日本写真連盟東京本部の主催による第38回東京都写真展「東京の今」が、東京銀座にあるリコーフォトギャラリーRINGCUBEで10月12日(水)から10月23日(日)まで開催されている。

東京都写真展は毎年開催されているフォトコンテストで、「東京の今」をテーマに、四季折々の東京の今を様々な角度から表現した作品が集まった。2010年9月5日~2011年9月5日までの1年間に東京都内全域(島部も含む)で撮影された未発表作品の中から入賞した作品80点が展示されている。

今回、最優秀賞といえる都知事賞を受賞した福井秋廣氏にお話を伺った。

東京都写真展の会場の様子

■初の1番を獲得した気分は特別うれしいものだった
福井氏は、同展に4年前から作品を応募しており、これまでに京セラ賞を受賞、その後2回の入選を果たしている。昨年は惜しくも落選し、今年は、奮起して3作品で応募し、念願の都知事賞を受賞した。

「入賞は何回かあるのですが、今回の都知事賞で1番をとれて、やっぱり格別ですね。」と満面の笑みをみせてくれた。
東京都知事賞「釣人」

この作品は、埼玉支部の水元公園での撮影会で撮影したものだが、撮影中に一瞬、5分間くらい光と雰囲気がガラッと変わった際、ひらめいて20枚くらいを無心で撮った中の1枚だという。

撮影後、自宅に戻り見直してみると、「空気感だけで撮ったのだけど、アジアっぽくていい」と感じ、支部の月例会に出したところ、銀賞を受賞した。同時に出した、別の作品は金賞となったそうだが、福井氏としては、今回の作品「釣人」のほうが気に入っていたという。

ちょうど支部長の「これいいね」の一言に励まされて、東京都写真展に作品を出品したそうだ。

■都知事賞の受賞は、タイトルが決め手?
月例会での作品タイトルは、「ザリガニ釣り」だったそうだが、今回は「釣人」に変更した。
「都知事賞をとれたのは、作品のタイトルを変えたせいかもしれませんね。」と、福井氏は、笑顔で答えてくれた。

「釣人」は、一瞬のうつろいやすい光をとらえた作品だ。それだけに、見る人がいろいろな思いを巡らせてくれるという。
「アジアっぽいとか、女性の内面が香るとか評してくださる人も多く、見てくださる方々にいろいろと感じていただいています。あまり私が語らないほうが、よいみたいですね。」と、作品の評価に福井氏も嬉しそうだった。

■写真歴は長いが、まだまだ楽しさはつきない

福井氏の写真歴は、20代のフィルムカメラのころからで、かなり長い。昔は、35mm、中判など、たくさんのカメラの撮影経験をもつが、6年前ほどからデジタル一眼がメインとなっているという。ただ写真の本格的な指導を受けはじめたのは全日本写真連盟に参加してからだそうだ。

デジタルを好まない撮影者もいるが、福井氏は、デジタルの便利さを堪能しているという。
「便利さが断然いいですね。補正や撮影が便利で、枚数がとれるので、何枚かとっている中から、いい写真を見つけ出せるところも楽しい。」と、写真を楽しんでいる気持ちがすがすがしい。

■今後はいろいろなコンテストにもチャレンジしたい
福井氏は、「まだ撮影テーマを絞りきれてないんですよ。まだまだ自由にとっていきたい。」と語る。

「おかげさまで入選もできているので、見ていただける人に認められる写真は作品として、今後も追いかけていきたいですね。全写連とは違うテイストの公募展にもチャンレンジしていきたい。」と、ますます意欲がでてきているようで、福井氏の作品は、今後もたくさん見られそうだ。

福井秋廣氏のプロフィール
4年前から出典し、京セラ賞を受賞、その後2回連続して入選。昨年の落選から、今年は、3点出典し、東京都知事賞を受賞した。受賞作は、埼玉支部での水元公園での撮影会の作品。

■東京の生命力が復活していると実感できた第38回東京都写真展「東京の今」
全日本写真連盟 関東本部副委員長でもあり、東京都本部副委員長の鳥居博子さんに、今回の東京都写真展についてお聞きした。

「東京にもこれだけ、いいところがあるということを表現したかったんです。都会でも人間住んでいる東京が感じられる展覧会にできたと思っています。劇的にかわっていく東京ですが、住んでいる人、時代、場所、時間が異なる東京の生命感が表現できたと喜んでいます。」


■第38回東京都写真展「東京の今」 各賞の紹介
東京都議会議長賞 「春近し」 飯田実氏(東京都)

朝日新聞社賞 「都市空間」 矢川靖子氏(東京都)

全日本写真連盟賞 「開運を占う」 庵地紀子氏(埼玉県)

東京都本部長賞 「二つのツリー」 白田誠氏(千葉県)

堀内カラー賞 「フレンドシップ」 塩谷一郎氏(東京都)

フレームマン賞 「男たちの夏」 濱野節子氏(東京都)


■特選
「ワアー!冷たい」 山口 欽一(埼玉県)、「広く!高く!美しく!」 栗原 洋子(東京都)、
「デイナーを楽しむ」 杉本 絹枝(東京都)、「おふくろの店」 谷田貝 好雄(東京都)

「鳶職たち」 福岡 義夫(神奈川県)、「一  隅」 吉野 義昭 (千葉県)、「都会のオワシス」 伊藤 宏史(神奈川県)、
「踊る阿呆に!」 北原 清久(埼玉県)、「貴婦人」 遠田 政治(埼玉県)、
「楽しい休日」 四元 昌子(東京都)


■入選





「風まち」 望月 美代子(東京都)、「同好の士」 麓 直美(東京都)、「水ごり」 槇野 弘二(東京都)、「鎮魂を祈る」 小山 公一郎(東京都)、「竜舞いおりる」 岡庭 加奈(東京都)
、「揃  う」 於保 好美(東京都)、「多摩川いかだレースの応援」 片岡 英二(東京都)
、「まわりの期待」 楠瀬 彰彦(東京都)、「重たいなあ~」 河野 利興(東京都)
、「夏のカーテン」 佐々木 満(東京都)、「家  族」 渋谷 和夫(東京都)、「熱  演」 中溝 春夫(東京都)、「青の世界」 岩瀬 昌子(東京都)、「ハイ、お手を!!」 松下 峯子(東京都)、「三次元の新幹線」 首藤 義憲(東京都)、「宇宙人」 萩谷 恭子(東京都)、「かくれんぼ」 木内 賀津子(東京都)、「都議会議事堂」 佐藤 光明(東京都)、「レインボウ・レインボウ」 小川 桂子(東京都)、「ビルの道は近道、寄り道、探索の道」 庄村 勝男(東京都)
、「夢はなでしこ」 広沢 重雄(東京都)、「祈  り」 鈴木 博(東京都)、「川辺でのひととき」 早野 由香(東京都)、「快  走」 佐藤 春夫(東京都)、「ドッキング2日前」 廣木 昭一(東京都)、「「トモダチ」に感謝の竹飾り」 吉田 久明(東京都)、「雨の夕景」 有原 和彦(東京都)、「田んぼのドン」 小林 重光(東京都)、「写しますよ」 池場 孝昌(東京都)、「いかがですか」 立花 栄二(東京都)、「夕暮れ時」 竹島 和正(東京都)、「ホコ天再開」 塚田 容三(東京都)、「撮るな!」 佐藤 一男(東京都)、「朝のターレはいそがしい」 印東 三郎(東京都)、「担いだ」 岡田 康一(茨城県)、「復興応援」 見富 昌信(埼玉県)、「未来の掛け橋」 斉藤 憲子(埼玉県)、「都市空間」 牧野 一夫(埼玉県)、「お元気で来年も会いましょう」 仙波 晋(埼玉県)、「がんばっぺ!!茨城(物産展)」 齋藤 怜子(埼玉県)、「ミラーに映える」 佐藤 昌市 (埼玉県)、「ポーズ」 堀之内 稔(埼玉県)、「賑やか打ち水」 大崎 博行(埼玉県)、「憧  憬」 小林 浩(埼玉県)、「ことしも泳ぐ」 谷森 正之(埼玉県)、「いつの日か二人で」 柴田 宏(埼玉県)、「暇だなー!」 日髙 猛(埼玉県)、「カップルで川面を」 松本 浩直(埼玉県)、「ほうずき市の帰り」 鈴木 きみ子(埼玉県)、「小洒落れた東京クルー」 植松 晃一郎(千葉県)、「佃の夜景」 横田 孜(千葉県)、「観  察」 斎藤 君枝(千葉県)、「喝  采」 国広 妙子(千葉県)、「踊  る」 塚越 康晴(千葉県)、「亀もビックリ」 十河 正守(千葉県)、「故きを温ねて」 神山 敏文(神奈川県)、「思いよせる」 佐藤 治道(神奈川県)、「歩行者天国のシルエット」 藤城 京輔(神奈川県)、「下  町」 井上 和人(神奈川県)、「私も成人よ」 渡辺 義之(神奈川県)、「夏の縁日」 斎藤 文夫(神奈川県)、「未来都市」 赤池 裕貴(神奈川県)、「ビル街に咲く」 椎名由美子(神奈川県)
(順不同)

第38回東京都写真展「東京の今」
主催:全日本写真連盟東京都本部・朝日新聞社
後援:東京都
協賛:株式会社堀内カラー、株式会社フレームマン、サンディスク株式会社
特別協賛:株式会社リコー
期間:2011年10月12日(水)~2011年10月23日(日) ※休館日を除く
会場:リコーフォトギャラリー RING CUBE
東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8階・9階(受付9階)
問い合わせ先:RING CUBE 03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)
休館日:火曜日
入場料:無料

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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