ITライフハック編集部あてに各社より毎日山のように届くニュースリリースに目を通していたところ地味なリリースに目が行った。リリースの文面はドコモからで『「通信プラットフォーム企画株式会社の清算について」に関するリリースを、2012年4月2日(月)15時00分に行いましたので、ご案内申し上げます』とだけあった。

内容的には昨年の12月にドコモが富士通、富士通セミコンダクター、NEC、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、韓国サムスンと通信機器向け半導体の開発・販売を行う合弁会社設立を目的とした合弁契約を締結した。しかし、今年の3月末を目標に合意まで持って行く予定であったにも関わらず目的が達成されなかったため合弁契約が解消されたというものだ。合弁解消の理由はどうあれ世界のスマートフォン・携帯市場から、また一歩置いて行かれることにならないか心配である。

この合弁会社は次世代の携帯電話通信規格である「LTE」(Long Term Evolution)向けの半導体を共同で開発して各社のスマートフォンなどに搭載し、また通信チップも販売しようという目的であった。LTEでは欧米が先行しており、アジアでは日韓でこれに対抗しようという考えがあった。この合弁解消の理由がいろいろと取りざたされているが「日本メーカーが技術の海外流出を懸念」という理由がもっともらしいという話だ。

5社の中で唯一海外メーカーであるのはサムスンで、要するに「サムスンに技術が流出するのがイヤだ」と主張したメーカーがいたことになる。サムスン側としては開発した半導体の技術は5社の中で相互オープンにして欲しいと主張したものの日本メーカーが、それを拒否したというわけだ。「作り方は教えるけど、中身は秘密だから」という、ずいぶんと虫のいい話で、サムスンとしてもそんな条件で合意できるわけがない。

それなら「チップ製造まで日本メーカーで行えばいいのではないか」という話になるが、半導体製造では破たんしたエルピーダの例がある。半導体製造にうかつに手を出したら危険だという認識があるため、そこに手を出そうというメーカーがいなかった。「LTEのチップは欲しい、しかし技術の海外流出は防ぎたい」。この問題を解決する良いアイデアが出てこない限り、LTEチップは海外メーカーから買ってそれを搭載することになる。

ただでさえスマートフォンで世界市場に出遅れた日本メーカーだが、周囲をけん制し合っている間にも、海外メーカーはどんどん進んで行くわけで、このままではさらに遅れを取ることにならないか非常に心配だ。このようにわずか数行のリリースであっても、その実、非常に重い内容である。今後、LTEに関してどう動いて行くかを慎重に見守る必要があるだろう。

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