電子書籍が持つメリットとは異なる部分で紙の本のメリットがある。その最大のメリットとは、保存をきちんとすれば千年以上に渡って保存がきくことがある。日本でも正倉院で結果的に千三百年以上保存されている紙が存在している。データをデジタルで保存できるようになってまだ20年数年しか経っていないため電子化されて記録された書籍は、まだまだ少ない。紙での保存のほうが実績がある分優れているように思えるが、デジタルの利点を生かせば、長期保存のコストは紙よりも圧倒的に少なくなると予想できる。
紙を単に倉庫などに放置しておくだけで千年以上保存できるなら苦労はしないが、全国の図書館などは古い本などの維持管理に多額の費用を必要としている。たとえば、国立国会図書館の2011年度の予算は約200億円だ。これは単に保管しているだけではなく、湿度を一定に保ったり直射日光を避けるようにしたりといった様々なコストも含まれる。こうした保存用のコストは世界中の図書館で必要なわけで書籍を取り扱っている施設を含めた総費用を合計すると莫大な金額になるだろう。

■紙の保管コスト

紙の資料を長期保存するためには、第一に空調などの管理が重要になる。もちろんそのためにはその土台となる建物がしっかりしている必要もあるし、地震や台風、津波などの自然災害への対策も必要になる。先述した正倉院で長期保管されていた和紙の資料は、和紙という特性と、正倉院という特殊な環境で保管されていたことで長期保存できていたのであって、どんな紙の資料でも同じように長期的に保管できるわけではない。

たとえば、1980年代までに一般的に使われていた紙は酸性紙といい、紙自体に酸性の成分が含まれており、ただ保管しておくだけでも紙自体が勝手に自己崩壊していく。また、古い本が黄ばんだりすることがよくあるが、これはリグニンという紙に含まれている成分によるもので、これも紙の劣化の一つだ。一般に酸性成分もリグニンも含まれていないのが和紙だが、上質な和紙であっても虫食いやカビなどに耐えることはできない。このために、空調や防虫など様々な対策が必要になり、このコストたるや膨大になる。

一方電子化されたデータは、コピーが簡単にできる。オリジナルを保存する意味も無いので、コピーを世界中様々なところに置いておけば、どんな自然災害でも簡単にデータを復旧することができる。テクノロジーが進化することで、ストレージの容量も増え、年々増え続ける重要なデーターの管理コストも年々低下する。これには当然、電力は必要になるし、定期的に設備の更新も必要だ。紙の場合は、年々増え続ける資料の保管に施設の拡張が必須となる。

もちろんデジタルが完璧なわけではないが、紙の保管コストなど実態をしっかりと把握してから、デジタルがいいか紙がいいか、長期的な保管はどちらが優れているかを考える必要があるだろう。

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

digi2は「デジタル通」の略です。現在のデジタル機器は使いこなしが難しくなっています。
皆さんがデジタル機器の「通」に近づくための情報を、皆さんよりすこし通な執筆陣が提供します。

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