星は毎晩天空にあって、場所を問わず私たちの頭上で瞬き続けている。深夜まで明るい都会でも、私たちが気づかないだけで、実は美しい星が私たちを照らしている。

doughnuts企画 写真展「都会の星-写真:東山正宜 ナビゲート:石井ゆかり-」では、都会の灯りとともに光る星をとらえた、比較明合成による星景写真と、その写真にインスピレーションを得た文章のコラボレーションを通じて、都会の星の魅力を伝えている。

そんな写真展の開催を記念して、東山氏と今回の撮影でも使用した「GR DIGITAL IV(GR IV)」の開発者とのトークショーが行われた。

トークショーでは、作品を制作するにあたって採用している比較明合成や、GR IVに新たに搭載されたインターバル合成機能について、撮影のエピソードや展示作品についての話しがあった。

満席で立ち見も出た、トークショー


■GR IVのインターバル合成機能は、東山氏がキッカケだった
トークショーは、作者の東山正宜 氏とナビゲーターの石井ゆかり氏、GR IVの開発に携わったリコー 山本勝也 氏の3人をゲストに迎え、doughnutsメンバー 浦島茂世氏による司会で行われた。
作者の東山正宜 氏(左)、GR IVの開発に携わったリコー 山本勝也 氏(中央)、司会のdoughnutsメンバー 浦島茂世 氏(右)

東山氏は、小学校5,6年生の担任が星好きでハレー彗星を望遠鏡で見せてくれたり、父親がガジェット好きでカメラもあったりしたことから、星とカメラの両方を会わせた天体写真を撮り始めたという。最初に撮ったのは北斗七星。中学から大学まで天文部だったそうだ。
星空を撮るキッカケについて語る、東山正宜 氏

山本氏は、物心がついたときに、自分が好きで見ていた本が星の図鑑だったという。カメラは自分のものとして買うことはなく、親も興味がなかったので、あまり撮ることはなかったという。物理が好きで、写真に関連した仕事をしたことで、今の仕事に繋がった。まじめに写真を撮りだしたのは7年くらい前で、星空の写真を撮りはじめたのは4年くらい前だそうだ。

今回の写真展では、星の軌跡はインターバル合成機能したものを合成して描き出している。
星の軌跡はインターバル合成機能したものを合成して描き出している

東山氏は、
「たまたま僕が東京本社に転勤になりまして。そうすると、田舎から大都会になるので、星の写真は撮りにくくなると思っていました。一方、PhotoShopに比較明合成という機能があるのは知っていましたので、それが使えるかもとも思ったんです。試しに、カシオペア座を10分くらい連続撮影して合成したところ、意外に安易に写ってしまいました。夜景を写すのと同じなので、そこからいろいろ撮り始めました。」と、「都会の星」を撮影するまでの経緯を語ってくれた。

東山氏は作品のひとつを例にとり、
「これは、11時間21分でバッテリが切れて終わりました。1,754コマです。なんで覚えているかというと、手で合成したからです。」とのこと。比較明合成はPhotoShopで15時間くらい掛かったという。ひとつの作品を作るだけでも、当時は莫大な時間が掛かったわけだ。ただ、その後、大学の先輩に比較明合成を自動でできるソフト「キクチマジック」(フリーソフトとして公開中)を作ってもらい、ボタン一つで合成できるようになったという。
GR DIGITAL IVの開発について語る、山本勝也 氏

ちなみに、「GR DIGITAL IV」にインターバル合成の機能を入れたことについて、山本氏は、
「星空の撮影を始めた頃にネット検索で東山さんの作品を知って、比較明合成の説明が懇切丁寧だったので、自分でもできると思って試してみました。そのとき、商売柄、今の仕事をしていたので、すぐにカメラにのせることができるとわかりました。あとは、どうやって上司に説得するかでした。GRはスナップショットの用途が多く、三脚が必要なインターバル合成機能をどう訴求するか課題でした。」と、話してくれた。

東山氏の写真を例に、撮影領域を広げるというアプローチで、GR II、GR IIIでもできることを実証し、GR IVでの実装につながった。

GR IVにインターバル合成機能が実装されたのは、東山氏がキッカケというわけだ。
太陽の写真の下には、企画を担当したDoughnutsスタッフによる実際と同じ比率の惑星の模型が陳列されている


■星に色がつくのが凄い
「アンタレスが赤いじゃないですか。それ以外の星が青くて、星の色が綺麗に出て1枚撮りでしょ。某雑誌の編集長に『お前の作品は面白いんだけど、星に色がつかないんだよ。』と言われたことがあって、もの凄い苦労して、星に色を付けられるようにしたんです。そのノウハウは今後、ブログで紹介したいと思いますが、ぶっちゃけ彩度をあげればいいんです。しかし、それだと、ビルとかの色は毒々しいくらい彩度があがっちゃう。GR IVがそうならないのは、なぜですか。」と、東山氏から山本氏に疑問がぶつけられた。
「GR DIGITAL IV」による、星空の写真

この疑問について山本氏は、
「JPEGで出力された写真は、光を受けるセンサーがダイレクトに出力したデータをそのままJPEGに変換しているわけではないんです。いろいろとお化粧をしている。ひとつは、エッジ強調という処理があったり、ノイズを目立たなくなるように処理したりもします。

夜景と共に写されている小さな星の点は、自動判断の中でノイズとして処理しまいがちです。ノイズと判断されないちょっと大きく明るめのものは、エッジ強調処理で、輪郭近辺の明るいところは明るく、暗いところは暗く処理してしまいます。この効果だと、星は白に近い色になってしまいます。

GR IVが、なぜ、綺麗に星の色がつくかというと、そういった画処理をあとまわしにしたんです。比較明合成をして、小さな光をしっかりとした線として集めたあとに、通常の処理を行っています。」と、こたえてくれた。
GR DIGITAL IVのインターバル合成機能について語る、山本勝也 氏


写真展の作品づくりの秘話から、GR IVのインターバル合成機能のしくみまで、誰にでもわかる解説であり、大盛況のうちに幕を閉じた。

トークショーの終了後は、懇親会が催され、来場者との親睦を深めることができた。

星空の撮影方法を理解するには、絶好のトークショーだった。

・特別寄稿:インターバル合成モード 【入門編】 / 【応用編】

●写真家のプロフィール
東山正宜(ひがしやま まさのぶ)氏
1975年香川県丸亀市生まれ。名古屋大学理学部卒、素粒子宇宙物理学専攻修了、博士課程中退。朝日新聞社入社後、東京本社への異動に伴い、比較明合成注 2による星景写真を始める。2009年に若田光一飛行士、2010年に野口聡一飛行士の帰還を取材。小惑星探査機「はやぶさ」帰還の写真で東京写真記者協会特別賞。
http://www.itaime.com/

石井ゆかり (いしい ゆかり) 氏
独学で星占いを習得し、2000年よりWEBサイト「筋トレ」を起ち上げて星占いを掲載し、独特の文体で人気を集める。現在は雑誌やWeb媒体占いを執筆 するほか、占い以外の分野でも著作を発表。2010年WAVE出版より刊行された『12星座シリーズ』は100万部を突破した。他に「星をさがす」 (WAVE出版)、「禅語」(piebooks)、「愛する人に。」(幻冬舎コミックス)等。
http://st.sakura.ne.jp/~iyukari/

写真展概要
名  称:doughnuts企画 写真展「都会の星 -写真:東山正宜 ナビゲート:石井ゆかり-」
期  間:2012年7月4日(水) ~ 2012年7月29日(日)  ※休館日を除く
場  所:リコーフォトギャラリーRING CUBE ギャラリーゾーン
所 在 地:東京都中央区銀座5-7-2 三愛ドリームセンター8F/9F(受付9F)
電  話:03-3289-1521
開館時間:11:00~20:00(最終日17:00まで)※入館は閉館時間30分前まで
休 館 日:火曜日 
入 場 料:無料
U R L:http://ringcube.jp

リコーフォトギャラリー「RING CUBE」

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