アベノミクスで為替は円安に振れ、株式市場は値を上げています。

今回は、資産運用に関する第一回として株式投資について述べますが、あまり一般的なことを書いても面白くありませんので、最近の経済動向と併せて述べてみます。

アベノミクスについては別途、編集部が連載しているので、詳細はそちらに譲ります。確かなことは、黒田東彦・新総裁の下で発表された日銀の「異次元の緩和」に、マーケットがいちだんの円安、株高で応えたという事実です。長年、株式市場を支配していた「諦めムード」は払拭されつつあります。

■超割安だった日本株
まず確認しておきたいことは、アベノミクス発動前の日本の株価は、異常な割安状態だったことです。たとえば、「配当利回り」が6%を超えるような銘柄が多数出ていました。配当利回りとは、株価に対する配当金の割合のこと。株価が500円で配当金が年5円の場合、配当利回りは1%ということになります。一部銘柄では、株主優待を加えると10%を超えていました。

これはあまりに異常で、そう長続きしない水準です(長期金利が1%未満であることを考えてみればよい)。アベノミクス以外でも、何かのきっかけでの株価上昇は「既定路線」といっても過言ではありませんでした。株式投資において、配当利回りは銘柄選びの重要な基準の一つです。

■背景に世界的な資金移動
世界的にも、国債などの安全資産から株式などのリスク資産への資金移動が、世界的な潮流になっています。これはアベノミクスだけでなく、米連邦準備理事会(FRB)のQE(量的緩和)や欧州中央銀行(ECB)による南欧国債の無制限買い入れといった、先進国共通の金融緩和政策と、それに基づく米国経済の復調が背景にあります。

2008年9月のリーマン・ショックで、株式、REIT(不動産投資信託)、商品先物などなどリスク資産はいずれも大きく値を下げました。一時的な株価回復があったものの、2011年にはギリシャなど南欧諸国を中心としたソブリン(国家債務)危機が顕在化。世界の資金は、米国、日本、ドイツなどの国々の国債へと移動しました。「質への逃避」です。この流れが、変化しつつあります。

米国では3月初旬、ダウ工業株30種平均が史上最高値(1万4,164ドル、2007年10月)を更新。英国のFTSE100種総合株価指数、独DAX指数も史上最高値に近づいています。先進国以外でも、フィリピンやインドネシアなどで過去最高値が更新されました。

2013年中に、米国の長期運用資金がアセットアロケーション(運用資産配分)を大きく見直すという観測も高まっています。こうなれば、世界的にリスク資産への資金移動が加速します。市場関係者は、これを「グレート・ローテーション」(資金の大転換)と呼んで期待をかけています。

■日本株の見直しのとき
株価が上がると、消費者の購買意欲が改善します。円安傾向もあり、製造業を中心に受注や採算の改善が改善、補正予算の効果もあり、建設業などでの求人も増加しているようです。国内での設備投資に本格的に火がつけば、日本経済の再生に弾みがつく可能性は大きいと言えます。

2002年秋以降、「いざなぎ超え」と言われる戦後最大の景気回復局面がありました。このときも株価は上がりましたが、経済の実態は輸出主導で、世界に販売拠点を持つ大企業だけが業績を伸ばしていました。今回の回復は、デフレ脱却はもちろんですが、雇用の回復や賃上げ、地方経済の回復など、より幅広い層・地域へメリットが行きわたるものでなければなりません。引き続き、政府の力量が酔われています。

現状は、日本株を見直す絶好の時期です。

(小沼正則)

ITライフハック
ITライフハック Twitter
ITライフハック Facebook

小沼正則の投資・ビジネス塾の記事をもっと見る
アベノミクスとは何か (4) 史上空前の緩和策が発動!
目前の「利」を追うな!投資家バフェット氏の教え
アベノミクスとは何か (3) 「デフレは貨幣現象」が背景理論
複利効果は「宇宙最強」の力!資産運用の考え方
アベノミクスとは何か (2) 白川前総裁と「非伝統的政策」

通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!
著者:ジェームズ・リカーズ
朝日新聞出版(2012-09-07)
販売元:Amazon.co.jp