前回まで、アベノミクスに関する是非の声を紹介してきた。肯定するにしても否定するにしても、日本経済の復活・再生を願ってのことであることに疑いはない。ただ、株価をはじめとする各種指標から、現状では「肯定論」に勢いがあるのは確かなことだ。

ところで、国内の経済政策であるアベノミクスだが、グローバル化した経済の下では世界的に影響を与える。だから、諸外国のアベノミクスに対する評価も一様ではない。今回は、諸外国からの歓迎論、警戒論について紹介する。

■外交にも影響する
アベノミクスによる諸政策の中でも、外国が注目するのは「異次元」と言われる金融緩和政策だ。日銀の金融緩和政策は円安、つまり外国にとっては「通貨高」となるからだ。通貨高になると、その国の輸出は打撃を受ける。その国の産業が、自動車や電機製品など、日本と競合関係にあればなおさらだ。

とくに、競合企業が多い韓国や中国への影響が大きい。実際、韓国ではウォン高が進んで景気悪化の懸念が高まっており、マスコミが「円安空襲」(中央日報)などの表現を使って警戒を呼びかけている。「円安は北朝鮮の『威嚇(いかく)』よりより大きな韓国経済の障害物」(玄・韓国副首相)という、やや極端と思われる意見まである。過去の発言を見ると、ドイツ、ブラジルなども日本の緩和策への不満を表明している。タイは「功罪両面」という評価のようだ。

こうした警戒論や不満が、単なる「表明」ですんでいるうちは問題ない。だが、20カ国・地域(G20)会合などの国際会議で問題として浮上するとやっかいなことになる。実際、1月のG20会議ではドイツのメルケル首相などが批判的コメントを出している。4月のG20共同声明では、日本の措置は「デフレ脱却と内需支援を目的とする」と明記され、「国際的理解が示された」という報道が多い。

それは事実だが、半面では「デフレ脱却と内需支援」以外の目的(輸出産業への支援策)が垣間見えた場合は非難が不可避的ということでもある。安倍政権や日銀としては諸外国の「誤解」を招かないよう、閣僚の発言にも慎重を期すことが必要になる。


■米英はなぜ「歓迎」するのか
対して、米国、英国は総じてアベノミクスを歓迎している。「米国は同盟国だから『強い日本』を歓迎している」という意見がある。中国に対抗する必要性からそういう面があるのはいくらか事実だが、あまりに「おめでたい」見解だ。

最大の要因は、円安で円キャリー取引が進むことだ。国内外のマスコミでは「ミセス・ワタナベの復活」が言われるとおり、低金利の円を借りて売り、より利回りの高い外国通貨や外貨建て株式・債券への投資が増えている。

円キャリー取引の向かう先は、関係が深く、金融商品も豊富にある米英というのは当然の理。米英の金融機関は、日本から集まった資金を使ってさまざまな商売ができるというわけだ。一部は、日本株の購入などとして「逆流」してもいる。

警戒論も歓迎論も、つまりは自分たちの利益になるかどうか。それが世界の現実である。アベノミクスを考える場合、以上のような国際関係、外交問題の視点ももっておきたい。
(編集部)

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