富士重工業<7270>や日野自動車<7205>など、自動車、トラック業界の株価が史上最高値を更新する中、自動車部品関連としての位置づけも大きな、ベアリング業界の株価が大きく出遅れている。

最大の理由は公正取引委員会によって「価格カルテル」を摘発され、ジェイテクト<6473>を除く大手3社が課徴金納付命令を受け、業績面で打撃を受けたこと、また企業イメージの悪化を招いたことだろう。

しかし、米国経済の回復、円安というマクロ環境は引き続き好転しており、関連各社の株価は大いに注目されるところ。大手を中心に動向を追ってみた。

■ジェイテクト
トヨタ自動車<7203>系のジェイテクトは北米で自動車向けなどが堅調で、工作機械も回復傾向が見えてきた。2013/3期純利益が増益に転じるなど、業界内では円安の恩恵はもっとも受けている企業の一つ。海外展開では、中国に続いてブラジルにテクニカルセンターを開設、現地ニーズへの対応を急いでいる。昨年秋には、完全子会社の豊田工機トルセン(差動制限装置・トルセンの開発・製造)を吸収合併、年末には、2009年に取得したニードル軸受け事業の商品ブランドを、同社の「Koyo」ブランドに統合するなど、社内・グループの改革も進めている。

■日本精工
国内最大手の日本精工<6471>は、約60億円を投資して、メキシコ中部に生産子会社を設立する。稼働は2014年の予定で、同国や北米地域での生産を増やしている自動車各社の需要に対応、生産能力は徐々に増強する計画だ。さらに十数億円程度を投じ、中国大手の寧波摩士集団(MOS)と資本提携する。MOSはOA機器やパソコン部品向けの低価格小型軸受けに強く、相乗効果で市場開拓を図る。製品では、微小電気機械システム(MEMS)技術を使った小型・高感度なバイオセンサーを開発、医療・検査装置メーカーなどと連携して実用化を図る計画だ。

■NTN
NTN<6472>は、2013/3期は主力の自動車向けが微増となった。今期は、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)のエネルギー効率を上げるモジュールを開発し納入を開始。より多くの走行エネルギーを回生できる製品で、この分野での強みの発揮をもくろむ。自動車関連以外では、最近は米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)から航空機エンジン用ベアリングの受注を受けることにも成功した。一方、新中期計画「復活2014」では「利益をつくる企業体質への変革」を掲げている通り、物流子会社の設立による輸送の効率化や、国内社員600人規模の早期退職者募集などで業務の効率化を図る。ちなみに同社は5月15日に決算を発表。前期の営業益72億に対し、今期は300億円とV字回復を見込んでいる。

■不二越
不二越<6474>はベアリング以外に、中国で産業用ロボット事業を拡大させる。すでに現地生産を始め、協力会社も2015年までに現在の2倍に増やして販売力強化をもくろむ。中国は労働力がひっ迫傾向にあり、ロボット化の進展が期待できるだけに、シェア拡大を達成したいところ。肝心のベアリング事業も他社同様に回復に転じており、中国市場では工作機械用の精密ベアリング、油圧ユニットなどの需要が伸びている。「長期ビジョン2020」では、中国のほか、インドや中南米諸国を含む新興国市場の開拓を掲げている。併せて、販売業務を担当していた連結子会社のナチ山陽を吸収して国内営業体制の合理化を図っている。

■2007年高値が株価の目安
ベアリング大手は、年頭ぐらいまでは中国などでの設備投資を見送り・縮小する方向性を打ち出していた。だが、ここに米国経済の本格回復、進展する円安などを背景に変化も見られる。従来の「中国頼み」から、世界的な需要拡大への対応は抜かりなく、出遅れた株価だが、今後はこうしたことを織り込む展開となろう。目安はそれぞれ2007年の高値であり、この基準に照らし合わせてみると、NTN、ジェイテクトあたりに妙味がありそうだ。

(小沼正則)

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