アベノミクスの「3本の矢」の中で、国際的に影響が大きいのは、黒田総裁率いる日銀による「量的・質的緩和」である。ベースマネーを2年で2倍に引き上げるという、史上例のない金融緩和は、世界的にも影響を与えている。

とくに否定的な反応を示しているのが、お隣りの韓国である。というと、「韓国は反日だから」というお決まりの答えが返ってきそうだが、それは皮相な見方。韓国の立場からすれば、黒田日銀の緩和策に警戒せざるを得ないのである。

■激烈な韓国マスコミ
「アジア通貨危機は一時的かつ単純な危機だったが、現在は総体的かつ長期的な危機状況」(朝鮮日報)、「さらに強まる円安空襲」(中央日報)と、韓国マスコミはアベノミクス、とくに金融緩和への危機感を隠さない。

なぜだろうか。竹島問題や橋下大阪市長の「慰安婦発言」の影響も皆無とは言えないが、それは本質ではない。何しろ、米国の「ウォールストリートジャーナル」も、「特に韓国経済に最も大きなマイナス影響を与える見込み」と報じているからだ。

第一の理由は、韓国の「輸出依存」の経済構造だ。日本の場合、国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は10%台中盤だが、韓国は何と50%以上。これは、先進国の基準である経済協力開発機構(OECD)加盟国中でも、もっとも高い国の一つだ(オランダなども高いが、ユーロ圏への輸出が多いため為替の影響は限られる)。

つまり、韓国は輸出がなければ成り立たない経済構造となっている。そこに、黒田日銀の金融緩和による「円安」(韓国からすれば「ウォン高」)が襲いかかった。しかも、主力企業は自動車や電機産業で、日本とモロに競合するため「円安」の影響を受けやすい。実際、現代自動車、LG電子などの輸出はたちまち影響を受けた。さほど影響を受けていないのは、中国やベトナムでの生産が多く、「ウォン高」の影響を受けにくいサムスン電子ぐらいだ。

■朴政権の事情も影響
頼みの輸出が振るわず、韓国企業は軒並み業績不振となっている。株価も下落した。これに拍車をかけているのが、朴槿恵(パク・クネ)政権の「財閥改革」政策である。

朴槿恵大統領は、評判が悪かった李明博前政権との違いを打ち出そうと、政党の名前を変え(ハンナラ党→セヌリ党)、保守政党でありながら「財閥改革」「格差是正」といった左派的な公約を掲げて当選した。

朴大統領の公約は、具体的には、大企業への増税や中小企業との取引価格の是正、定年の60歳への引き上げ、解雇要件の強化などである。これらをそのまま実施すれば、ただでさえ「ウォン高」で苦境にある企業の経営は、いちだんと厳しくなりかねない。

かといって、秘書官のセクハラ・スキャンダルで揺れる朴政権にとって、公約をまるまる投げ捨てることもできない。政権支持率がさらに下がってしまうからだ。朴政権にとっては、アベノミクスは「最悪のタイミング」で行われているということになる。

問題は、安倍政権としても、対北朝鮮関係を考えれば、韓国のこうした事情をすべて無視するわけにもいかないということだ。「出だし好調」のアベノミクスだが、隣国から揺さぶられる可能性もないとは言えないのである。

(編集部)

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