※アイシェア調べ


リサーチ・マーケティング事業を展開する株式会社アイシェアは、全国の20~40代の会社員1000名を対象に「業務環境に関する意識調査」を実施しその結果を発表した。この結果を基礎資料とし、人事領域を専門とする作家兼コンサルタントの城繁幸(じょう しげゆき)氏に専門家の立場で調査結果の解析と業務環境の問題について解説をしてもらっているので調査結果に加えて紹介しよう。

■携帯代や接待費の自腹負担が多い
昨今、業務環境が劣悪な企業を「ブラック企業」と 呼称するなど、業務環境に対する問題が浮き彫りになってきている。そこで業務に従事する上で発生する様々な経費における自腹負担の現状を聞いたところ、自腹経験のある人が実に59.7%となり、自腹経験のない人の40.3%を大きく上回った。

自腹経費として、最も多かったのが「携帯電話代(30.8%)」で、以下「接待費(30.7%)」「交通費(27.3%)」「コピー・プリント代(14.9%)」と続いた(グラフ1)。年代別にみると、全体から「自腹をしていない」人を引いた何かしらの自腹をしている人は20代が72.2%、30代が54.2%、40代が52.9%となり、若い社員ほど「経費を自腹負担」していることが分かった。年代が上がるごとに稟議や経費申請における承認が通しやすくなるため若い社員の自腹負担が増えるのは納得できる結果だ。

■経費の自腹への大きな不満
携帯代自腹に8割以上が抵抗。自腹経費への不満の大きさについては「大きい」30.0% 「やや大きい」26.9%で、合わせると全体で56.9%が大きいと回答しており(グラフ2)、また、最も回答が多かった「携帯電話代」の自腹について抵抗があるか聞いたところ、80.8%が「抵抗がある」と回答(グラフ3)していることが分かった。

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■私用の携帯電話を仕事で使うことを強制され個人情報が広がることにも不満
個人のプライバシーについては、仕事で自分の個人情報(TwitterやFacebookなどのSNSアカウント、私用携帯電話の番号)を使わざるを得ない状況への不満については、「大きい」「やや大きい」と58.6が回答(グラフ4)。また、62.4%が私用携帯電話の番号(=プライベート番号)を取引先などに知られることに「抵抗がある」と回答している。本来、仕事用の携帯電話は会社側が負担するのが当然だ。プライベートの携帯を仕事に利用することで、教えたくない人にまで番号を知られてしまうことの抵抗は大きいと言える(グラフ5)。

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【人事コンサルタント城 繁幸氏の解説】
近年、経済環境の変化や若者自身の価値観の多様化により、20代の社員の離職率は高止まりする傾向にある。いっぽうこの調査結果からは、個人端末の業務利用に対し、若手社員も含め費用的にもプライバシー的にも強い抵抗感を抱いていることが明らかとなっている。若手の会社への定着率引き上げの手段として“自腹負担”の排除をすることで一定の効果が見込めると言えるだろう。

■経費の自腹、仕事での個人情報の利用
経費の自腹の実態や仕事での個人情報の利用が仕事に対する影響はどのくらいあるのだろうか気になる。そこで経費の自腹や個人情報の利用について、これらを「間接的なパワハラだと思う」かを聞いたところ、全体の60.9%が「間接的パワハラだと思う」と回答(グラフ6)。

その6割の「間接的パワハラだと思う」人たちに、さらに業務のモチベーションが低下するか聞いたところ、「間接的パワハラだと思う」と回答したうちの91.5%が「モチベーションが低下する」と回答した。「間接的パワハラだと思わない人」でも25.6%が「モチベーションが低下する」との回答になっている(グラフ7)。

また上記のような「間接的パワハラ」により「転職を考える理由のひとつになるか」との問いに対しても「間接的パワハラだと思う」人の88.6%が「転職を考える理由になる」と回答。「間接的パワハラだと思わない」人でも18.9%は「転職を考える理由」になっていることが分かった(グラフ8)。

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会社全体の「離職率に影響しているか」の問いでも「間接的パワハラだと思う」人の74.5%が「影響していると思う」と回答しており「間接的パワハラだと思わない」人でも23.3%は「影響していると思う」と回答(グラフ9)。「間接的パワハラ」な業務環境である企業は『モチベーション低下度合い』、『転職意向』、『離職率への影響』の3項目でいずれも高い数値を示す結果となった。

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【人事コンサルタント城 繁幸氏の解説】
特に現在の20代は、十代半ばからネット環境に親しみ、自分でネットワークを構築することで個を確立してきた世代である。また社会が成熟する中、従来のような「仕事第一的な価値観」に違和感をおぼえる世代でもある。「携帯端末の業務利用」は、上の世代からすればあって当然の自腹負担かもしれないが、若手の抵抗感を減じて定着率を上げるためにも、公私を切り離す仕組みの導入が必要だろう。

■解説者プロフィール
氏名:城繁幸(じょう しげゆき)
職業:作家、人事コンサルタント。株式会社ジョーズ・ラボ代表取締役。
略歴:
・1997年東京大学法学部卒業後、富士通人事部入社。
・2004年同社を退社し『内側から見た富士通成果主義の崩壊』を上梓
・現在作家兼人事コンサルタントとして活動中。
著書:
『日本型『成果主義』の可能性』(東洋経済新報社刊)
『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社刊)
その他「若者を殺すのは誰か?」など


■業務環境に関する意識調査概要
回答数:1000名
男女比:男性53.1%、女性46.9%
年代比:20代33.1%、30代33.6%、40代33.3%
調査期間:2013年7月
※数値は小数点第二位で四捨五入


株式会社アイシェア

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