3メガバンクの業績が好調だ。

投資信託の販売手数料が増えたことや、株価の上昇で保有する株式の減損処理が減ったことが原因だ。「アベノミクス」による円安によって、海外部門の収益がかさ上げされたこともある。

三井住友フィナンシャルグループ<8316>の場合、他の2行に比して、国債や上場投資信託(ETF)の売買でも収益が上積みされた。

■国債に代わり海外へシフト
リーマン・ショック後、メガバンクは収益の3割を国債に依存する状況だったが、日銀の「量的・質的緩和」による国債買い取りに応じたこともあり、いずれも国債保有残高を減らしている。6月末の残高は合計約90兆円で、3月末から約20%減。償還までの平均残存年数(デュレーション)も短縮化の傾向にある。

国内融資は増加傾向だが、国債減少分を埋めるほどの「収益源」とは言い難く、メガバンクにとっては海外展開や新分野への進出を急いでいる。

みずほ銀行(みずほフィナンシャルグループ<8411>)は、現地の大手ズベルバンクと提携し、ロシア法人の資本金を3.5倍に引き上げて資金需要増加に対応する。みずほの措置は、三井住友と三菱東京UFJ(三菱UFJフィナンシャルグループ<8306>)の増資に対抗したもので、規模でも勝るとも劣らない。日本企業の現地進出をテコに、ビジネス機会は順調に広がっている。

各行はインドでも支店を開設、日本企業はもちろんだが、インド企業の資金需要に応えている。インドでは外貨調達での規制が残っているため、邦銀が現地に進出することへの要請は強い。中でも、みずほは最大規模の財閥であるタタ・グループと良好な関係を築いている。

また、各行とも海外での協調融資が伸び、シェアを拡大させている。今年上半期は北米とアジアを中心に伸び、総額は前年比で約25%も増加。危機の影響で退潮した欧州銀行の地歩を奪いつつある。ブラジルに対しても、国際協力銀行(JBIC)とメガバンクが連携し、国営石油会社ペトロブラスに最大で15億ドルを融資することが決まった。

■国内でも新サービスに乗り出す
日本国内では、三井住友がフランス大手ソシエテ・ジェネラルの日本での信託部門(預かり資産は約5000億円)を買収した。投資額は約100億円で、富裕層向けのプライベートバンキング部門を強化することが狙い。同行は英バークレイズと提携して富裕層向けビジネスを進めており、資産運用に加え、遺産相続や資産承継などのニーズに対応していく計画。三井住友はメガバンクで唯一、大手信託銀をグループ内に有していないことから、この分野を強化するという戦略でもある。

日銀が、貸し出しを増やした金融機関に低金利(0.1%)で資金を供給する新方針を打ち出したことも生かし、3行は「期間3年で固定金利0.6%」という住宅ローンの取り扱いも始めた。住宅部門では、来年4月の消費税増税前の「駆け込み需要」も期待できそうだ。

加えて、官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」を中心に、各メガバンクは農林漁業の「6次産業化」を進めるための子ファンド事業にも乗り出している。これは、「農業の成長産業化」という、安倍政権の進める成長戦略の一環でもあり、みずほは100億円規模、三菱UFJは東北地方の地銀と連携して20億円を出資する。

「ソブリン危機」を契機として、世界的に歴史と実績のある欧州銀行が退潮傾向な中、メガバンクの事業拡大は順調だ。だが、欧州大手は巻き返しつつある。メガバンクはこの競争に勝ち残り、国際的に存在感を高めて欲しい。

ここ数日は、みずほが出来高上位に登場している。メガバンク銘柄は、いずれも中長期的に強気のスタンスで臨みたい。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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