米国経済の回復が鮮明になりつつある。5月以来、連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が繰り返し「出口」に言及しているように、数々の経済指標が米国経済の回復を示している。

まず、2013年第1四半期の経済成長率は1.8%(年率、前期比)、第2四半期は1%程度の成長にとどまる見込みだが、年末は2%半ば以上の成長が予想されている。第1四半期の内容は、自動車販売を中心に個人消費が2.6%増、住宅投資が14%増と全体を引っ張り、マイナス0.09%の外需やマイナス4.8%の政府支出を補った。企業景況では金融部門や消費財関連の製造業が好調だ。失業率も7月は7.4%と前月から0.2ポイント低下した。

■力強さを増す米国経済
何より、GDP(国内総生産)の7割以上を占める個人消費が堅調であること、リーマン・ショックで大きく落ち込んだ住宅投資が順調に伸びてきていることは力強い。

量的緩和縮小がもたらす影響についての議論は百出しているが、長期的な視点から見れば、ポジティブな結果をもたらすだろう。緩和が続けば資産バブルが発生する可能性が高まり、世界経済にとっては大きなリスク要因となり兼ねない。すでに欧州中央銀行(ECB)はベースマネーを順調に減少させており、FRBがこれに続けば、「出口」をめぐる国際協調も首尾良く進行することになる。緩和政策を本格化させる日本にとっては、米欧が「出口」に進むことは世界的資金の動きの面から歓迎すべきことでもある。

■出口戦略を織り込む
一方、米経済の回復に疑念を示す向きもある。

それは、個人消費や住宅投資の堅調さは金融緩和による効果がもっぱらで、「出口」に向かえば失速するという意見である。確かに、個人消費の一定部分が株高に支えられているのは否定できないし、7月の非農業部門雇用者数が予想を下回るなど、雇用情勢も万全とは言い難い。

だが、バーナンキ議長は「出口」に言及しつつも、その実施は慎重に進めようとしており、「出口=引き締め」ではない。FRBが資産買い取りを縮小させたとしても、直ちに景気に悪影響を与えることはないと思われる。

5月末以来、「出口」発言を契機に市場が一時的に混乱したが、新興国からの資金流出ともども、ここのところは落ち着きを見せている。FRBにとっては、慎重なコミットメントについて教訓を残すことになったわけで、今後に生かされるだろう。

そもそも出口戦略の採用は経済の回復が本物になってきたからで、中期的にマーケットにマイナスの影響を与えるものでではない。金利正常化(経済の回復)が、株式市場にとってネガティブな材料になるというなら、株は単なる「需給の産物」に堕してしまう。緩やかな金利上昇は短期的には悪材料かもしれないが、中期的には間違いなくポジティブな材料である。

■日本株への対処法
史上最高値更新後に調整に向かう米国市場、底値圏で波乱の状況となる中国市場を両にらみで、このところ日本株の動きは鈍い。しかし、こうした局面こそ日本株を仕込むチャンスである。

仕込むべき銘柄の筆頭は、米国経済の再生の恩恵を最大に受ける自動車関連だろう。米国での売上比重が高いトヨタ自動車<7203>、富士重工業<7270>など、押し目買いの好機が訪れたと判断する。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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