米連邦議会が混乱している。暫定予算の議会審議で与野党が合意に至らなかったため、一部政府機関が10月1
日より閉鎖されている。

しかも、米議会が17日までに連邦債務の上限を引き上げを決議しないと、米政府は国内外の債権者に対する支払いができなくなる可能性、つまり債務不履行(デフォルト)となる危険性がある。

いったい、米国はどうなってしまうのだろうか。


■政府機関停止の影響
政府機関の停止で、まず、数十万人の政府職員が一時帰休となった(規模は若干縮小された)。国立公園は閉鎖、裁判所では民事訴訟が延期された。政府職員の外国出張も延期が続いている。

民間企業でも、政府との関係の深い場合は影響がある。ボーイングなど航空産業などからの納入は遅れ、観光地が閉鎖されているため観光客にも影響が出ている。雇用統計などの経済指標の発表が停止されたため、これをベースに投資を行う関係者も影響を受けている。

デフォルトとなると、大量の米国債を抱える日本や中国、産油国などは、金利や元本の支払いを受けられなくなる。

■議会はなぜ一致できないのか
議会が一致できない最大の理由は、下院の多数を占める共和党が、オバマ大統領が力を入れている医療保険改革(オバマケア)に反対し、実施延期を要求していることだ。だが、大統領は妥協する姿勢を見せていない。

また、債務の上限引き上げについては、無条件の引き上げを求める大統領に対し、共和党は本格的な社会保障費削減などを要求している。オバマ大統領は、期限を区切った一時的な上限引き上げという「妥協案」を示しもしたが、共和党はこれも拒否した。

共和党議員には、医療保険などの社会保障制度を無条件に「社会主義的なもの」として退ける「茶会党」の支持を得た議員が多い。国民皆保険制度のある日本や欧州諸国からするとこっけいな理屈だが、宗教じみているだけにやっかいである。しかも、米国は来秋には中間選挙があり、下院議員はすべて改選される。ここでのパフォーマンスは、議員にとっては「肝心」なのである。

■世界経済のリスクに
政府機関の閉鎖が続けば、米国経済への負の影響は不可避だ。仮に閉鎖期間が1か月近くになれば、第4四半期の経済成長率は1.4ポイントも押し下げられるという。5月以来問題となっている、金融緩和の「出口」も遠のくことになる。米国経済と関係の深い日本への影響も必至だ。

ましてデフォルトとなれば、世界経済全体に対する負の影響は避けられない。下手をすると、「第2のリーマン・ショック」のような金融パニックとなる可能性さえある。ようやく、リーマン・ショックや欧州の国家債務(ソブリン)危機から抜けだして回復基調に乗りつつある世界経済にとって、大きなリスクとなる。

政治への影響もある。今回のゴタゴタで、オバマ大統領はインドネシアで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合を欠席せざるを得なくなった。「アジア重視」を掲げたオバマ政権の権威を失墜させるには十分で、逆に、中国はほくそえんでいることだろう。米中国の間で国のかじ取りを行っているアジア諸国は、大いに失望したのではないか。

米議会は、自国が世界経済に責任のある存在であるということを自覚してほしいものである。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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2006-12-14