日本の株式市場は、昨年末の安倍政権の登場とアベノミクスへの期待によって急回復を見せている。とくに、「異次元緩和」が打ち出されて以降は、為替に円安も手伝って堅調な展開が続いている。さらに、証券取引所が1月から実施した信用取引の規制緩和、2014年1月からのからNISA(少額投資非課税制度)開始といった好条件もあり、投資熱は温まるばかりだ。

これを背景に、証券各社の業績は大幅に伸びている。金融緩和策による金利低下、国債などの債券価格が上昇した効果も大きい。現在のところ、証券各社こそ、アベノミクスの最大の恩恵を受ける業種と言えそうな勢いだ。


■アベノミクスの恩恵を受ける証券各社
まず、最大手である野村證券(野村ホールディングス<8604>)は4~6月期の営業益が1132億円に膨らんだ。主に支えたのは、すでに述べた受入手数料とトレーディング損益だ。10月に始まったNISA口座申込みでは、専用マスコットを用意するなど熱心な取り組みを行い、初日分では全NISA口座の4分の1を確保するなど、滑り出しは好調だ。

大和証券(大和証券グループ本社<8601>)も、4~6月期の営業利益が623億円となった。前期は通期利益が838億円だったことを考えるならば、見違えるような業績の伸びである。経営陣はNISAにはグループをあげて取り組む方針を明言、コールセンターなど営業人員を5割増やす方針だ。最近の動きでは、インドネシアの政府系バハナ証券と、M&A(企業の合併・買収)助言業務を中心に業務提携した。さらに、アジア各国が発行する債券の取り扱いを拡充するなど、アジア進出に意欲的だ。

対面型証券各社は、丁寧な情報提供をはじめとする顧客対応がNISA下での差別化要因になると判断、力を入れているといえるだろう。

■ネット証券も絶好調
一方、ネット証券大手7社の2013年度上期(4~9月)の株式売買代金は前年同期の4.6倍(181兆452億円)と、半期では7年半ぶりに最高を更新。こちらも好調だ。

最大手のSBI証券(SBIホールディングス<8473>)も、純利益を8倍近くに伸ばしている。昨年同期は株式市場が冷え込んでいたとはいえ、脅威的な伸びだ。さらにSBIは、上海陸家嘴集団などと提携して中国でネット証券会社を立ち上げ、新設の「上海自由貿易試験区」で事業を始める計画もある。

ネット証券間の手数料競争はほぼ限界にきている。ユーザーの「乗り換え」も比較的多いため、今後は、スマートフォン(高機能携帯電話)対応アプリケーションの操作性の向上が重要な差別化要因になってこよう。クライアントが充実し、口座開設前でもチャートなど一定のサービスが閲覧できる上、楽天市場とのポイント連動ができる楽天証券(楽天<4755>)のような特徴が必要になってこよう。

マネックス証券(マネックスグループ<8698>)は、ユーザーの要望を社員が直接聞く「オリエンテーションコミティー」を定期的に開いたり、要望への回答をサイトに掲載したりするなど、ネットだと遠くなりがちなユーザーとの距離を縮めるための細やかな工夫が好評だ。このような取り組みは、ネット証券と対面型証券をつなぐ取り組みともいえよう。

■証券各社は押し目買い方針を堅持
マクロ経済面で当面のリスクであった米国の財政問題をめぐる混乱も、政府・与野党の合意が見えた。代わりに、米国の量的緩和(QE3)の「出口」が来年に持ち越しとなる気配が高まったこと、日本の景気回復と東京オリンピックでの投資や波及効果もあり、日本の株式市場の先行きは明るさを増している。証券各社は、その先頭で恩恵を受けることになろう。各社とも押し目買いを堅持してみたい。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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