東芝が2013年秋冬モデルのパソコンとしてdynabookシリーズを発表した。この中で、注目機種はいくつかあるのだが、いちばん注目したいのがUltrabookでも2-in-1コンバーチブルといった最新機種ではなく、従来型のオーソドックスなクラムシェル型のノートパソコンの基本性能を大幅に強化した「dynabook KIRA V634」だ。

繰り返すがこの機種は、Ultrabookなどの最近のトレンドにあわせた製品ではない。プレミアムノートパソコンという位置づけではあるがタッチパネルは非搭載だ。何がポイントなのかといえばバッテリー駆動時間が実に22時間と非常に長いのが最大の特徴なのだ。



■PCの原点に立ち返り何が必要かを再考
AndroidやiOS搭載タブレットが普及することで、Windowsパソコンが駆逐されるのでは? と危惧されている。このためインテルが主導するUltrabookや2-in-1、マイクロソフトがWindows 8から強く普及を促進しているタッチパネルを搭載するような製品が登場してきた。

しかし、タッチパネルや2-in-1などの機構は、従来のノートにさらに機能を付加=コストが増える、ということになり、それが製品価格に反映されてしまうのだ。タッチパネルに対応しているかどうかは、確かに重要ではあるが、現時点でビジネス用途ではタッチパネルは必要ないことが多い。

たとえばNECはLaVie Zシリーズにおいて、最新のカテゴリーではないタッチパネル非搭載のプレミアムノートパソコンとして、世界最軽量を追求したモデルを発表した。すべてを研ぎ澄まし、シンプルを追求した結果だ。今度の「dynabook KIRA V634」(以下、KIRA V634)は、バッテリー駆動時間を従来の2倍へと大幅に伸ばすことで、モバイル性を従来の倍に高めている。実質5~7時間しか使えないタブレットに対して、その倍以上駆動できるという差別化に成功した。

タッチパネルを搭載するUltrabook版の「dynabook KIRA V834」(以下、KIRA V834)も14時間駆動と長いが、KIRA V634は、それよりも8時間長い22時間と、圧倒的だ。そして重量は、1.12kgとタッチパネル付きのKIRA V832の1.35kgより軽いし、他メーカーの一般的なUltrabookと比べても軽量になっている。

最新のパソコンはインテルの第4世代Core iプロセッサー(Haswell)を搭載し、どの製品もバッテリー駆動時間を延ばしているが、その中でもKIRA V634は長時間駆動に入る製品だ。

ただ、このバッテリー駆動時間(JEITA測定法)は、実際の使用時間とはかなり異なる。筆者の経験上、JEITA測定法での表示の6割から7割程度が実使用時間となることが多いが、6割としても14.2時間程度になる。このくらいのバッテリー駆動時間なら、電源が使えない国際線での移動や日帰り出張などでも、省電力設定などをあまり気にしなくとも、問題なく利用できる駆動時間と言える。成田からロスに飛んでる最中バッテリーで作業ができるというのは、ビジネスマンにとって非常に魅力のある性能と言えるだろう。

現在、インテルやマイクロソフトがUltrabookや2-in-1などにおいて、タッチパネルなどの最新機能を普及させようとしている。おそらく、数年後の製品はこれらの最新コンセプトに適合していくだろう。目新しさによる訴求といった点を重視している戦略だ。

その一方で、パソコンメーカーはそれに対応したモデルと、最新コンセプトには対応しないが、自社の技術力を結集し、従来型製品をよりブラッシュアップした製品も展開するというおもしろい状況になっている。

目新しいユニークなほうに目を奪われがちだが、従来と同じような使い方をするなら、ノートPCの原点に立ち返る基本機能を追求したKIRA V634のほうが、結果的に良かったとなることは間違いない。タブレットやスマートフォンのホットニュースに話題を奪われがちだが、なかなかどうしてパソコンもなかなかおもしろくなってきたといえるだろう。

dynabook KIRAスペシャルサイト

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

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