中国は11月23日、沖縄県の尖閣諸島上空を含む空域に「防空識別圏」を設定したと、周辺国に通知した。本来、防空識別圏は領土・領海・領空とは別に定められたものではあるが、日本の領土である尖閣諸島上空に設定したということは、中国が尖閣諸島を自国領土、もしくはきわめて近い部分と見なしたことと同義である。

日本政府がこれに反発し、撤回を求めたことは当然だ。ただ、今回の措置を通して、中国は日本や米国だけでなく、韓国や台湾との関係も一定悪化させてしまった。中国はなぜ、そこまでして「防空識別圏」を設定する必要があったのだろうか。



■中国は米国を試した?
結論から言えば、中国は防空識別圏の設定を通して、米国の反応を試した可能性が高い。後述するように、米国が識別圏をすんなり認めるとは思っていなかっただろうが、どこまで反応するか、確かめようとしたのではないだろうか。

まず、現在の米国は、国内の財政問題、シリアやイラン問題の処理など懸案が山積みである。オバマ政権も内向きになっている。中国が防空識別圏を設定した場合、どこまで反応するかを見定めることは、以降の対米外交の参考になると思っても不思議ではない。

というのも、この問題が起きる直前の11月20日、ライス米大統領補佐官が、米中による「G2論」を認めるかのような発言を行ったからだ。G2とは、要するに米中の連携で世界を取り仕切っていこうというもの。オバマ政権発足直後、米国側からこの構想を提案したことがあったが、当時の胡錦濤政権は国際政治での負担を強いられることを嫌い、事実上拒否した。だが、習近平政権はこの6月の米中首脳会談の際、「新しい大国間関係」という言葉で、中国側から「G2論」を持ち出している。ライス発言は、これを認めることを示唆したものだ。

中国が「では、本当か?」と、米国の反応を見ようと思ってもおかしくない。日本に対する挑発もあるだろうが、これは第二義的なものだろう。

■米国の措置は「予想外」なのか?
これに対して、米国はB-52爆撃機を派遣するなど、一見すると厳しい対応を取った。マスコミ報道では、この反応は「中国にとって『予想外』ではないか」という報道がある。果たしてそうだろうか。

そもそも、日本、韓国、台湾の防空識別圏は、第二世界大戦後に米国が設定したものを引き継いでいる。日本の識別圏に、北方領土や島根県・竹島が入っておらず、逆に、韓国が領有を主張する「離於島」(中国も領有を主張している)という岩礁が含まれているのはこのためだ。中国の今回の措置は、米国が大戦後に定めた極東の「秩序」を変更することにほかならない。

しかも、今回、中国が設定した識別圏の圏内には、在日米軍の演習空域も含まれている。米国が中国の措置を認めるはずはないし、中国も米国がすんなり認めるとは思っていなかったろう。だとすると、「中国にとって予想外」という見解は間違いで、「予想の範囲内だが厳しい対応」といったところではないだろうか。B-52の飛行以降、中国が激烈な反応をしていないのは、そのためだと思う。

■米中の結託?
編集部としては、以下の可能性が高いとは思っていない。それでも、今回の出来事が、米中が示し合わせたものだという懸念をぬぐい去ることはできない。

今回の措置で、中国政府は国内世論に対して「釣魚台(尖閣諸島)の支配に向けて努力している」というポーズを演じることができた。米国も、日本に対して「頼りになる同盟国」ということを見せつけることができた。つまり、どちらにとっても損はないのである。

「日米同盟強化」を唱える安倍政権は、米国にとってありがたい存在だ。一方で、靖国神社問題など心配材料がある政権であることも事実。米国は、たとえ相手が同盟国であっても、一方的に善意を示すだけの甘い国ではない。国際政治は複雑で、冷静な観察が必要なゆえんだ。

(編集部)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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