ここ数年で日本の携帯事情は激変した。いちばん大きかったのが昔ながらのフィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が一気に進んだことだろう。

ことスマホに関してはアップルのiPhoneシリーズやサムスンのGalaxyシリーズ、ソニーモバイルコミュニケーションズのXperiaシリーズ、シャープのAQUOS PHONEシリーズといった人気機種へフィーチャーフォンからの乗り換えが進み、スマホへの移行もひと段落した感がある。

各キャリアとも2年縛りや割賦方式による端末発売で、機種変更の際には解約手数料や、割賦の清算等が必要になるため、スマホの機種変更が一気に進むような大きな動きは、新型iPhoneシリーズの登場まではないだろう。そして昨年暮れくらいから、スマホユーザーが気にするようになったポイントが、スマホにかかる料金、特に通話料に関してユーザーの注目が集まっている。

■携帯キャリアによる通話料値下げ合戦
今年に入ってから通話料金の値下げ合戦が激化している。2014年1月24日、ソフトバンクモバイルがNTTドコモやauに先駆けて、音声定額を掲げる「新定額サービス」を発表した。

続いて2月14日にIT系大手企業の楽天が、海外を中心に人気を集める無料通話・無料メールアプリ「Viber」の買収を発表。また2013年12月に楽天のグループ会社であるフュージョン・コミュニケーションズが、通話料節約サービス「楽天でんわ」を開始したばかりでViber買収は楽天でんわ強化の動きと見ていいだろう。

そして、2月26日には、いまでは無料コミュニケーションツール最大手となった「LINE」がLINEへの追加機能として「LINE電話」を開始すると発表。今年に入って、低価格、もしくは無料を売りにした通話サービスが一気に出てきた印象だ。

■無料通話、話料割安サービス機能を持つアプリ
先日、新しく通話料割安サービスへの参入を発表したブラステルの「050 Free」など、今後も通話料節約サービスは増えていくと思われる。

そこでユーザーとしては、どのサービスを選べば、より得なのか、そして安心して利用できるのか?といった部分に注意する必要がある。

この手のサービスは「電話回線利用」「インターネット経由」「IP電話利用」と大きく3つに分けることができる。当然ながら携帯キャリアの通話機能、楽天でんわといったものが「電話回線利用」、LINEやViber、Skypeといったものがインターネット経由、050 plus、SMARTalkといったものが「IP電話利用」だ。

通話機能をサポートする各種サービス


■アプリによっては不具合も・・・
たとえば、全世界で3億人を突破した「LINE」を見てみよう。LINEでは、LINEアプリの利用者同士であれば、無料で通話できた。しかし、これまで090や080で始まる普通の携帯電話番号、もしくは固定電話に電話をかけることはできなかった。

それが3月にサービスインした「LINE電話」を利用すれば、有料にはなるものの090の携帯電話番号や固定電話番号に電話をかけられるようになった。つまり、相手がLINEを利用していなくても、LINEを通じて電話回線に対して音声通話が可能になる。

しかし「LINE電話」では、相手先がNTTドコモの携帯電話を利用している場合、相手には「非通知」「通知不可能」といった状態で表示されるといった不具合が生じてしまう。

また、マイクロソフトが買収したメッセンジャーツールである「Skype」にも固有電話番号を割り当てて、携帯や固定電話に通話する「Skype Out」といったサービスがある。こちらも海外では発信者番号通知が可能だが日本では「非通知」「通知不可能」となってしまう。

■番号通知が可能な携帯キャリアとIP電話サービス
携帯キャリアの通話サービスや楽天でんわは、電話回線を利用するためその端末が持つ番号を相手側に通知できる。また、番号は元々割り当てられた番号ではなく050番号となるがNTTコミュニケーションズの「050 plus」や、フュージョン・コミュニケーションズの「SMARTalk」は、端末固有の電話番号とは別に050から始まる番号を割り当て、それを相手側に通知できる。以上のように無料通話、通話料割安サービスは複数存在していることが理解できたことと思う。

■条件次第では割高になるソフトバンクの新定額サービス
冒頭で紹介したように2014年4月に開始が予定されるソフトバンクモバイルの「新定額サービス」は、音声定額とパケット定額をパックにした、これまでにない料金体系になっている。

Sパックは月額5,980円でパケット(2GBまで通信規制無し)および3分以内の通話は50回まで無料でかけることができる。Mパック(7GBまで通信規制無し、通話は5分以内が1000回まで)とLパック(15GBまで通信規制無し、通話は5分以内が1000回まで)で、短時間しか電話を使わない人にとっては、通話料が無料になる。

ただし、既存の利用者はこのサービスを利用できない。現在ホワイトプラン契約者がこのサービスに乗り換えることは基本的にできない。一度、解約して再度新規で契約するなどしないと新サービスは利用できない。しかも、使い方次第で、電話料金が急激に跳ね上がる危険もあるのだ。

定額といわれているが、例えばSパックの場合、「3分を超える通話時には超過分として30円/30秒の通話料が発生する」というのだ。Sパックで3分31秒から4分までの通話だと60円余計にかかる。51回目の通話では、最初から30円/30秒かかってしまう。

Mパック、Lパックでも同様に、5分を超える通話時には、30円/30秒の通話料が発生する。5分31秒から6分までの通話だと60円余計にかかる。1001回目の通話から最初から30円/30秒かかってしまう。

4月以降でも契約が可能なホワイトプランで20円/30秒であり、通話料節約サービスの「050 plus」が16円/30秒であることを考えると、超過分の通話料は高い。しかも、制限を超えたら青天井で通話料がかかってしまう。1時間通話なら1分60円×60分で3,600円という金額だ。

さらに注意したいのが、相手先が同じソフトバンクのユーザーであっても、新定額サービスでは、制限を超えた超過分は無料にならない。対してホワイトプランでは、1時から21時の間、ソフトバンク同士であれば無料通話できる。ということで契約について以下にまとめた表を載せておく。これを念頭に入れておいてもらいたい。



■各サービスの料金を比較してみる
ということで料金表を念頭にソフトバンクの「新定額サービス」Sパック、Mパック及び、各社の通話料金節約サービス、さらにはNTTドコモ/au/ソフトバンクの一般的な料金プラン(タイプXi にねん/LTEプラン/ホワイトプラン)及び、ウィルコム/イーモバイルの「だれとでも定額」を対象として、対携帯電話、対固定における1回の通話時間、その長さで料金がどのように推移するかを検証してみた結果が以下のグラフだ。




グラフを見てみるとソフトバンクの「新定額サービス」は、20分も話せば、同社のホワイトプランで通話するよりも高くなる。さらに通話料節約サービスと比較したものを見るとSパックでは4~4分30秒超で、すでに「LINE電話」「050 plus」「SMARTalk」よりも通話料が高くなっている。

Mパックでも、7分超で「LINE電話」「050 plus」「SMARTalk」より高くなる。そのまま20分通話した場合、差額はさらに600~700円程度にまで開いてしまう。これがいかに高いか分かるだろう。

■現実問題として3分以上、5分以上の通話はけっこうある
「○分以上は超過料金が発生する」という通話料体系は、ウィルコムやイーモバイルの音声定額サービスも同様だ。ただし、この両社は発信先が同じキャリアなら、契約の種類問わず24時間通話料が無料な上、超過料金が発生するのは制限として「10分を超える通話」からとなっており、そうそう超過する設定にはなっていない。

むしろ新定額サービスの3分以内/5分以内といった通話時間がポイントで、これが現実的ではないユーザーは結構いると思われる。例えば食事やホテルの予約をするようなケースでは、お店側やホテルのフロントが端末等を操作して確認を行っている最中、通話を保留されるだけでも制限時間を超えてしまう。だからといって通話を切るわけにもいかない。

外出先から職場に電話して上司に報告する場合などは、いくつかの上司の質問に答えているとあっという間に20~30分はかかってしまう。こうなると「LINE電話」「050 plus」「SMARTalk」のほうが圧倒的に安くなる。

これはソフトバンクに限らず、ウィルコムやイーモバイルの音声定額サービス、今後登場してくるかもしれないドコモやauの通話定額サービスであっても、1回の音声通話が長時間になる可能性が高いのであれば「050 plus」「SMARTalk」「LINE電話」といった通話料節約サービスの利用を検討すべきであることがわかるだろう。

■それじゃあ、どのサービスを選べばいいか?
以上のように携帯キャリアによる定額サービスは、使い方次第では、逆に割高になってしまうことが理解できただろう。ドコモやauが同様のサービスを提供する可能性もあり、契約次第では思いがけずに高い通話料金が請求されるかもしれない。

特にスマホを使って頻繁に通話を行うビジネスパーソンにとっては“自衛”のために「050 plus」「SMARTalk」「LINE電話」「楽天でんわ」といった電話回線に通話が行えるサービスを契約しておくといいだろう。

その中でどれがおススメかというと、「050 plus」「SMARTalk」の2つに絞られる。「LINE電話」はサービスインしたばかりなので、いつ不具合が発生するか不明だ。電話回線を使う「楽天でんわ」も魅力だが買収したViberと楽天でんわをどうするのかまだ見えない。

いっぽう「050 plus」「SMARTalk」は既存サービスでサービス開始から相当数経過しており、トラブルフリーで利用できる安心感がある。特にNTT東西以外で自前の長距離および海外への電話回線を持つ回線業者でもあるNTTコミュニケーションズの「050 plus」は、“回線業者”であるという安心感がある。同社は固定回線が安くなるプラチナラインを提供していることもあり、自社の強みを生かし通話先に固定電話が多いと料金がお得になるのでおススメだ。

またフュージョン・コミュニケーションズのSMARTalkは基本使用料が不要という特徴がある。月額の利用料が不要なので使わないときは一切料金がかからないのは魅力だと言える。

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