ITライフハック読者であれば、IT関連の知識としてNAS(Network Attached Storage、読みはナス)という機器を知っているという人が多いだろう。実際に使っているという人もいるかもしれない。NASは文字通り、ネットワークに接続するストレージのことだ。外付けHDDをUSBではなく、LAN経由にして同一のLANからであれば、複数の端末からアクセスできるようにしたストレージということになる。



■そのサービスがいつまでも無料とは限らない
NASの最大の使用目的は、ファイル共有である。ストレージ容量が少ない端末、たとえばSSDしか搭載していないノートPCでSSDの残り容量が少なくなってきたようなケースでデータの保存先をNAS上の割り当てられた領域に指定することで、容量不足を補うことができる。もちろんPC以外の端末、スマホやタブレットでも、データの保存先をNASに指定することができる。

ちなみに巷にはDropboxやOneDrive、GoogleDriveといったクラウドストレージのサービスが無料で利用できるようになっている。ただし、無料のDropbox Basicでは利用できるのは2GBまで、マイクロソフトのOneDriveは5GBまで、GoogleDriveも15GBまでが無料だ。それ以上の容量を保存する場合、有料コースへの移行が必要となる。

■クラウドストレージの割り当て容量を超えるのは時間の問題
たとえば、前述したクラウドストレージがスマホのカメラ機能と連携していた場合、無料で使える容量を使い切るのはあっという間だ。15GBと使える容量が多く見えるGoogleDriveの場合、実際はGoogleフォトやGmailに割り当てる容量も含まれており、各サービスを全部合わせて合計15GBとなっているのだ。

それ以上の容量を使うとなると、有料版を契約する必要が出てくる。カメラで撮影した画像をクラウド上にアップし続けていれば、いつかは必ず無料の割り当て容量を超えてしまう。スマホとの連携サービスを切るか? 有料コースを契約するか? といった選択に迫られるのは時間の問題だ。

そして、そのどちらの選択もしない、第三の選択に“自宅にNASを導入する”がある。

■容量制限がないに等しいNASの導入
NASは、こうした有償のクラウドストレージサービスを自前で用意するのと同じである。自宅にNASを設置することで、無料(データ通信費は別)で利用できるクラウドストレージが完成する。

使える容量も、2GBや15GBなどという少ない容量ではなく、NASに搭載するHDDの容量次第だ。2~3TBのHDDを搭載しているのであれば、1TBでも2TBでも自由に割り当てることができる。スマホ向けに容量1TBのストレージとは、多すぎる気もするが、これだけの容量が使えるのであれば、実質容量制限がないのに等しいと言ってもいいだろう。

たとえば月額千円程度で1TBが使えるクラウドサービスを1年続ければ1万2千円となる。実は、それだけの金額があれば3TBのHDD(AmazonでWD Redの3TBが約1万2千円程度)が買えてしまうのだ。

もちろん1TBのクラウドサービスは、契約をし続けて維持している限り、データを失うことはない。しかし、契約を解除した場合、そのストレージ上のデータは一定期間が経過すれば、削除されてしまう。データを残したいのであれば、お金を払い続けるしかないのだ。

しかし、自宅に設置したNASであれば、維持のためにお金を払い続ける必要はない。しかもデータは、NASの中に存在し続け、勝手に削除されることもない。NASは元々データ保護も得意なので、データ消失が不安であるならRAID機能やバックアップ機能でデータを保護することも簡単にできる。

■急速に進化し多機能化してきた最近のNAS
10年前ならNASは単なるファイルサーバとした位置づけでよかった。解説記事も自宅のLANに接続したら、ユーザーアカウントを作成し、そのアカウントごとに利用できるHDDの容量を割り当てる設定を紹介すればよかった。それ以外の特殊な設定として外部から接続できるようにVPNの設定をしたり、ブロードバンドルーターのポート開放を説明したりするだけでNAS導入の解説記事は完了した。掲載回数も1回、せいぜい詳しく解説しても2回もあれば十分だったのだ。

ところが、NASは進化を続けてきており、現在では単なるファイルサーバとは呼べなくなった。高機能化が進み“なんでもできる魔法の箱”へと進化しているのだ。

ただし、それはNASを知っている人にとってであり、万人にとっての魔法の箱ではない。知っている人だけがNASを魔法の箱として、さまざまに活用することができるのだ。

■“知らない人は損しているなと思う”NASの様々な機能を12回に分けて紹介
今回、ITを活用して自分の生活を豊かにすることが目的のITライフハックとしては、NASのセットアップから、活用方法までを、長期に渡って紹介する連載を企画した。

この企画で最初に問題となったのが機材の選択と手配である。ぶっちゃけるとNAS本体とHDDを買う予算が出なかったのである。そこで今回、国内向けのNASの老舗メーカー「QNAP」の“Turbo NAS”、そしてNAS用HDDの鉄板と言える“WD Red”、その両方を取り扱っている国内有数の大手代理店テックウィンドに企画趣旨を伝えて機材提供をお願いしたところ、この長期連載で使うNAS本体、およびHDD(2台)を無償で提供していただけることとなった。

今回、提供いただいたNAS本体はQNAPのSOHOおよびミドルレンジユーザー向けの「Turbo NAS TS-231+」だ。本製品はCPUにARM Cortex-A15(デュアルコア、1.4GHz)を搭載、メモリーは1GB(DDR3)を搭載する。読み出しは最大204MB/秒、書き込みが最大162MB/秒と十分なパフォーマンスを持っている。USB3.0ポートを3ポート、ギガビットLANを2ポート搭載している。

AES-256ビットという高度に暗号化されたデータを最大162MB/秒で転送できる性能を持つ。また家庭向けの機能としてDTCP-IPをサポートし、DTCP-IPで保護されたビデオまたはオーディオコンテンツの記録が可能だ。またこれらの記録されたコンテンツをDLNA経由で再生することもできるようになっている。またDropboxのように様々な端末でデータを同期できる「Qsync」といった機能により、個人的なクラウドサービスを構築できる。

装着するストレージは、WDことウエスタンデジタル製、そして“NAS専用HDD”であるWD Redの2TBモデル「WD20EFRX」が2台である。ということでTurbo NAS TS-231+に2TBのWD Redを装着し、構築した自宅NASをとことん使い倒す方法を紹介していく。なお、PCを使わないでスマホだけで可能な設定方法なども紹介していくので「PCがないからNASは設定できない」とあきらめていた人も、参考にしていただければと思う。

DSCF0095  これから連載を行っていくQNAP Turbo NAS TS-231+、WD Red「WD20EFRX」

なお次回は「PCを使わずにNASをセットアップする」方法を紹介しよう。

QNAP Turbo NAS TS-231+
WD Red「WD20EFRX」
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