一部、非鉄金属の国際価格が上昇傾向にある。とくにニッケルの値上がりは顕著で、ロンドン金属取引所(LME)での地金価格は年初から一時約50%上昇し、2年3カ月ぶりに約2万1600ドル/トンを超えた。フィリピン産ニッケル価格は、2月下旬以降、2倍を超える上昇を記録した。



背景は、今年に入って、ニッケルの世界シェアの2割を産出するインドネシアが鉱石輸出を停止したことと、ウクライナ問題と関連したロシアからの供給に不安感が高まっていること。5月になると、ブラジル・ヴァーレのニューカレドニア製錬所が事故で生産を停止し、不安感に拍車をかけた。ニッケルなどからつくられるステンレスの生産にも影響が出始めている。


■ニッケル需要は減らず
一方、いまのところ需要減退の気配は見えない。たとえば、2014年の世界のニッケル需要は191万5000トンと予想されており、昨年比で6.8%の増加となる。需給はタイトとなり、世界で3万トン不足するという意見もある。中国など新興国の需要が順調なことと、米欧の景気回復基調が影響を与えている。また、世界の緩和マネーが流入していることも価格を底堅くさせており、ニッケル価格は年末までにさらに上昇する可能性が高い。

一方、世界最大の鉱山会社であるBHPビリトンが、オーストラリアのニッケル事業の売却を検討中と報じられるなど、国際的な事業再編の動きも垣間見える。

■注目される非鉄株
以上のようなことから、非鉄金属銘柄への注目が集まっている。非鉄金属銘柄は、長く低迷してきたが、ここへきて底打ち感が強まったと言えるだろう。

住友金属鉱山は2014年3月期経常利益が前期比で0.6%の微減。当時はニッケルなどの価格が下落しており、悪化したため。今期は増収減益となる見込みだ。当面、インドネシアの代替として、フィリピンなどからの調達を増やしている。他方、構造改革の一環として、金属粉末射出成形品事業を日本ピストンリングに譲渡し、同分野から撤退する。

大平洋金属は、フェロニッケル(鉄とニッケルの合金)の最大手。2014年3月期経常損益は18億円強の赤字だが、今期は28億円の黒字に回復することを見込んでいる。ニッケルが主力であるため、その確保に努めるとともに、湿式製錬などの技術開発を重視する計画である。

東邦亜鉛は、製錬事業のほか、使用済み電池のリサイクルなども手がける。2014年3月期最終損益は前期の赤字から、16億円の黒字に転換した。今期は、59億円の経常利益を見込んでいる。鉛製錬分野に強いが、ここでは鉛価格が低位で推移しているため、鉛製錬で使う鉛鉱石と廃バッテリーの割合を変更、廃バッテリー原料の比率を減らすなどのコスト対策を行っている。

■株価再スタートへの期待高まる
インドネシアが輸出を停止した理由は「自国製錬産業の育成」だが、折から、同国では総選挙が行われており、夏には大統領選挙も行われる。輸出停止はこれへの影響を狙ったポピュリズム的手法とも考えられ、政局の落ち着きとともに解除される可能性もある。また、ロシア産品は米欧などからの制裁措置の対象となることが懸念されるが、そうはならないという予想が支配的だ。

その意味で反落も考えられるが、中長期的な流れとしては、新興国での非鉄金属需要の増加は確実である。このほぼ確実な法則をしっかりとつかんでおけば、非鉄市況関連は大いに狙い目といえよう。上記3社、とりわけ大平洋金属の動きには大いに注目したい。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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