オバマ大統領は5月28日、ニューヨーク州ウエストポイントの米陸軍士官学校で演説した。演説は、2017年1月までのオバマ大統領の任期の外交の指針となるものだ。

演説の内容は、中国を十分に意識しつつ、米国の力の限界も露呈させた内容となっている。



■中国への警戒感はあらわ
オバマ大統領は、「中国の経済的台頭と軍事的行動の拡大が近隣諸国に懸念を与えている」「米国は国際法を通じた領有権紛争の解決に取り組んでいる」「(ベトナムやフィリピンとの)南シナ海など地域紛争が解決されなければ、最終的には米軍が巻き込まれる恐れがある」と語り、中国への警戒と武力衝突の危険性に言及した。

他方、実際に武力を行使することには、「米国への直接の脅威が前提」と慎重な姿勢を見せ、国際機関との協力や多国間協力を重視することで、外交による解決をめざす姿勢を強調した。この「協力関係」の中で、米国が「指導的な立場」を維持するとも述べている。

つまり、現在では比較優位にある米軍の介入の可能性にふれることで、軍事介入なしで、中国のアジアでの「暴発」を抑止しようとしたということである。

「孫氏の兵法」ではないが、武力なしに政治目的を達成することはもっとも望ましいことである。オバマ政権はそれを狙っているわけで、この点については、従来のオバマ政権の立場との間に違いはない。アフガニスタンからの撤退も完了せず、シリアやウクライナなどの問題も抱え、イランや北朝鮮の核問題にも対応を迫られる米国が、「中国が問題を起こせば介入する」と明言できないことは当然ではある。

これは、4月の日米首脳会談で、安倍首相との間で合意した内容とも相違はない。

■中国の挑発は続く可能性
問題は、中国がこれをどう受け取ったかである。

ともすると、中国は「米国の武力干渉はない」と理解し、南シナ海でのベトナムやフィリピンとの領土紛争、東シナ海での日本との係争(尖閣諸島問題)で強気に出る可能性がある。

もっとも、オバマ政権が「アジアシフト」を強めている現在、中国がアジアで挑発的行動に出ることは「米国への直接の脅威」となる可能性もあり、なかなかに微妙だ。米国としては、あえて明言せずに「行動の自由」を保持しておきたいのだろう。言葉をあいまいにしておけば、「そのときの都合」で、態度を変更できるからだ。

日米安保条約を結んでいる日本国民の大多数は、「尖閣諸島は米国が守ってくれる」と思っている。日本国内には、先の日米首脳会談で「尖閣諸島は日米安保の適用範囲」とされたことを喜ぶ意見も多い。だが、他国の領土を守るかどうかは米国の判断次第で、どうにでも変わる。これは国際政治の常識だ。

「中国要因」は、日本の経済、社会に多大な影響を与えるようになっているだけに、冷静で現実的な見方が必要なのである。

(編集部)

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