インテルに対抗できる最後の砦とも言えるAMDであるが、低価格パソコンやハイエンドデスクトップ、グラフィックスカード市場で欠かせないメーカーである。AMDがよい刺激を与えていることでインテルと、これまたよい意味での緊張感が維持されてきた。しかし時代は急激に変化し、スマホやタブレットといった端末へとユーザーの関心が移り、ここ数年はインテルにしてもAMDにしても、その市場を視野に入れた製品開発を急ピッチで行う必要があった。

しかも、AMDはインテルとやりあう一方でNVIDIAともやりあう必要があったため、全方位でのCPU戦略というものが取りにくかったことがあるだろう。そのため、ハイエンドノートパソコンでインテルに対抗できるだけの製品を出せていなかった。今回、その市場に向けて、デスクトップ版で好調な「Kaveri」のモバイル版を投入する。これでCore i7搭載ノートの牙城切り崩しを狙うわけだ。

そして問題の組み込み機器やスマホ&タブレット端末といった、新しい機器も今後のAMDには重要な市場となる。2012年までは売り上げの9割が従来型PCからだったが、2013年、2014年とそのウェイトを変化させ来年の2015年にはAMDの売上げは新しい市場からが5割程度を目指す。同社のビジネス構造がこの数年で大きく変わっていくという内容をCOMPUTEX 2014で公表した。

Core i7より上回る性能 Core i7より上回る性能

■好評なKaveriのモバイル版を投入し市場奪回を目指す
KaveriはCPUとGPUのコアを1つに統合したAPUで、ヘテロジニアス・システム・アーキテクチャー(HSA)に対応する。このモバイル版を投入することで、ノートパソコンでもHSAに対応できるようになる。モバイル版Kaveriを採用するAPUは、モバイル版の「AMD A」および「AMD FX」とビジネス向けのAMD PROシリーズとして展開。このモバイル版Kaveriによって、AMDのAPUを搭載するハイエンドノートパソコンでも、インテルのCore i7に対抗できることになるという。

急速に変わるAMD 急速に変わるAMD

もちろん従来市場も重要ではあるが、AMDの今後の成長のためにキーとなってくるのは、プロ向けのグラフィック、組み込み用途、超低電力といった従来型とは異なる分野だ。そして、この市場は大混雑の様相を呈しており、AMD以外のメーカー各社がしのぎを削っている。AMDは2012年は全体で1割程度の売上げだったこの市場での売り上げを2015年には5割まで持って行く。市場規模がそこまで急激に拡大できるのかといった懸念はあるが、そうなると売り上げの半分が従来の市場、残りの半分が新市場からということになる。

ちなみにプロフェッショナル向けグラフィック市場に向けて、Fire Pro S9150、FirePro S9150を紹介。ハイエンドサーバー向けにFirePro S4000Xを紹介。GPGPU向けにワークステーションやサーバーの分野で新製品を投入。また、組み込み向け市場にはハイエンドから低電力の各市場向けに製品を提供する。

x86とARMでピン互換となるSkyBridge x86とARMでピン互換となるSkyBridge

2016年に64bitのARMコアK12を投入 2016年に64bitのARMコアK12を投入

2015年にはWindowsやAnrdoidタブレット、組み込み市場に向け、x86とARMがピン互換となり、x86もARMも動くProject SkyBridgeを投入。さらに64bit版ARMコアとなる「K12」を2016年に投入する。

今年からかなりアグレッシブに動き始めたAMD。他社には真似できないProject SkyBridge、そしてグラフィック分野でゲーム機やプロ向け機材といった新市場を、どれだけ取って売り上げの50%に近づけて行けるか行けるか、2015年の結果が楽しみだ。

上倉賢 @kamikura [digi2(デジ通)]

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