欧州中央銀行(ECB)は6月5日、理事会を開き、マイナス金利を軸とする追加の金融緩和策を決めた。スウェーデンやデンマークでは経験があるが、主要国としては初めてのマイナス金利である。

異例ずくめの対応策は、何を意味しているのであろうか。



■マイナス金利だけではない
マイナス金利とは、金融機関によるECBへの預金に対し、▲0.1%の手数料を徴収するというもの。このほか、ECBが発表した緩和策は、政策金利の0.15%への引き下げ、条件付き長期流動性供給オペ(TLTRO、4000億ユーロ)の導入、資金の無制限供給を延長、国債購入の際の不胎化中止などのパッケージである。さらに、資産担保証券(ABS)を購入するための準備を始めることも発表した。

結局、これらは市場の資金量を増やすということに尽きる。

■背景は南欧諸国のデフレ
背景は、欧州(ユーロ圏)経済の低迷である。1〜3月の国内総生産(GDP)成長率は、ユーロ圏全体で0.2%にしかならなかった。とくにフランス、イタリアといった(ドイツ以外の)大国がマイナスあるいはゼロ成長に落ち込んだ。とくに、ギリシャやキプロスなどの南欧諸国は、財政赤字を削減するための政策を行っているため、必然的に景気が後退している。

不況に加え、ユーロ高傾向で輸入物価が低下したこともあり、ユーロ圏はデフレ傾向にある。これを放置すれば、日本のように「失われた20年」になりかねない。異例のマイナス金利などは、これを避け、資金が設備投資などに回りやすいよう手を打ったということだ。

もう一つに、5月末に行われた欧州議会選挙結果の影響も考えられる。選挙の結果、各国で左右両極の政党が影響力を増した。第2次世界大戦後の欧州政治は、おおむね、中道右派と中道左派が民主的な政権交代を繰り返すことで安定してきた。左右両国の台頭は、この政治バランスを崩す可能性がある。こうした政党が勢力を伸ばした背景は経済の低迷なので、政治を安定させるためにも、景気回復が必要という理屈だ。

■経済は好転するか?
マイナス金利を経験したデンマークなどの経験を見ても、これで設備投資が増える効果は期待薄だ。結局、「ユーロ安」に誘導して輸出を増やすということに行き着く。

ところが、直近ではユーロ安に振れていない。日本や米国も金融緩和を行っているという影響が大きいのだろう。となると、ECBは「検討」にとどめた資産担保証券の買い取りを決断することになるだろう。そうなれば、米国、日本、英国と併せ、主要国すべての中央銀行が量的緩和を行う「異常事態」となる。

世界経済は、まだまだ「波乱含み」のようだ。

(編集部)

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