増税後の景気動向が心配された日本株だが、その悪影響は想定内のものとなった。割安感から、年金の買いに加え、外国人も再び参戦し、東京市場は戻りを試す展開となっている。このところ小型株への言及が多かったが、主要銘柄の値戻りにも注目してみたい。




■トヨタ、今秋には高値奪回か!
まず、トヨタ自動車。2014年3月期は6年ぶりに過去最高益を更新した上、グループの世界生産・販売台数が初めて1000万台を超えた。日本市場では消費税増税前の駆け込み需要があったほか、北米で222万台が売れるなど海外市場も好調だった。

他社に比べて国内生産の比率が高かったトヨタだが、前期は国内生産台数が990万台と1000万台を割った。徐々に海外生産を増やしてきたことの反映だが、それだけに、やや出遅れぎみの新興国市場の開拓を急ぐことが課題となる。中国市場では、現在の倍以上となる200万台の販売を目標とし、2017年末までに15車種以上を投入する計画だ。また、得意とする北米でも、販売を引っ張るのはピックアップトラックの「タンドラ」であり、二の矢、三の矢が欲しいところ。

単純な業績の変化率ということでは上値も限られようが、マーケットが評価しているのは、その中期的な展開力。その意味では、レシオ10倍台前半というのは評価不足。今秋には昨年高値6760円奪回へ挑戦となりそうだ。押し目買い堅持。

■突っ込み買い好機の日立
次に日立製作所。自動車関連や情報・通信システム事業の好調、さらに構造改革の成果があり、2014年3月期の営業利益は5328億円(前期比26%増)と、23年ぶりに過去最高益を更新した。2015年3月期も最高益の更新を見込んでいる。

今後は、何と言っても、政府も後押しするインフラ輸出における恩恵が期待できる。これを首尾良く進めるため、シンガポールにインフラシステム事業の東南アジア地域統括拠点を設立、電力・交通分野や水処理システムなど、幅広い領域を手がける予定だ。また、ビッグデータをはじめとするIT(情報技術)や、社会産業・システム関連も有望だ。ただ、火力発電システム事業を三菱重工業と統合したため、電力システム分野は減収となる見込みだ。

日立も独自に海外との取引を増やすため、世界の有力企業60社を大口顧客にするという目標を掲げて「キーアカウント60」という活動を始めている。これに基づき、2015年初にサウジアラビアでガス絶縁開閉装置事業の合弁会社を設立することに合意している。

いち早く構造改革に着手し、その効果が出てきた日立。今後はGEやシーメンスに比べ、大きく劣る売上高営業利益率改善など、収益力強化が重要なポイントとなろう。

年初来高値から大きく調整した株価だが、時価近辺は魅力的。ここは突っ込み買いの好機と判断する。

■なべ底から反転、コマツの期待!
最後に、コマツ。2014年3月期の営業利益を見直したことから、昨年秋以来下落傾向だったが、ここにきて復活傾向だ。

同社の特徴は、国内での新工場への投資を強化していること。2016年3月期に国内の電力使用量を2011年3月期比で半減させる目標を掲げ、油圧ショベルなどを生産する主力の粟津工場(石川県小松市)をはじめ、大阪工場(大阪府枚方市)や小山工場(栃木県小山市)などを順次建て替える。粟津工場は、太陽光発電などの活用で、電力購入量を9割減らした高効率な新拠点。2つの向上を集約、床面積は3割小さく、生産能力は逆に1.5倍となって生産性が飛躍的に向上している。

新興国経済の成長率鈍化懸念から、2015年3月期も減益を予想するが、北米などでは旺盛な需要が見込まれる。また新興国の問題も既に峠を越えており、今後は着実な需要増加が期待できそうだ。国内でも、2020年の東京五輪の開催をめぐる再開発需要が期待できる。コマツは、徹底した効率化で競争力の高い製品を投入する戦略だ。

株価は典型的ななべ底形成から、25日移動平均線を下値支持線とした上昇トレンドへと転換。悪材料はほぼ織り込んだだけに、今後は主力株の中でパフォーマンスは上位に位置しよう。

(小沼正則)

※投資の判断、売買は自己責任でお願いいたします。

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