■はじめに
今回の記事のネタを考えていたら、電子書籍界隈で大きな話題となる出来事がありました。本記事が公開される頃にはネタとしての新鮮さは無くなっていそうですが、興味深い出来事なので少し触れてみようと思います。

とある雑誌の電子版に関するもので、雑誌名を明示するかやや悩んだのですが、明示することとしました。
話題の主役は「an・an(アンアン)2015年9月16日号No.1970」(以下、アンアン16日号と表記します)の電子版です。



■コトの経緯
さて、ご存知の方も多いと思いますが、一応コトの内容をかいつまんでお知らせしておきます。

アンアン16日号では、巻頭にタレントの佐々木希さんのグラビアが掲載されているのですが、電子版ではそれが掲載されず、アンアンのロゴのみが表示されている空白ページと数センテンスの短いテキストが掲載された一面グレーのページが8ページ分続いているとのこと。テキスト入りのグレーページには本来写真が掲載されていたようですが、電子版ではそれが抜けてしまっています。

さらに「第6回an・anマンガ大賞」という特集でも、マンガ作品に賞を与えてその作品を紹介しているのですが、印刷版では作品の画像が掲載されているのに、電子版では削除されてしまっています。紹介文は掲載されているものの、マンガの紹介で画像が無いのはちょっと考えられません。

作品の画像が削除された背景には、作品を強調するための集中線が描かれていて、謎の疾走感を醸しだしています。

ちなみにこのマンガ大賞は9ページ分。

さて、グラビアは写真が掲載されていなければコンテンツとして成り立ちません。マンガ大賞の特集も、作品の画像が無いとほとんど興味を掻き立てられません(個人的感想)。こちらもアリかナシかで言えば、ナシだと考えます。この判断は恐らく多数派に属するものだと思います。ではナゼ出版社はこの状態で出版したのでしょうか。

それは出版社にしか分かりませんが、手がかりは電子版の説明に付属されている次の文章にあるかもしれません。

以下引用-----------------------------------------
※電子版では、紙の雑誌と内容が一部異なる場合や、掲載されないページや特別付録が含まれない場合がございます。
※本雑誌はカラーページを含みます。お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。
※「Pretty in Pretty」の佐々木希さんの写真は掲載されておりません。
以上引用-----------------------------------------


電子版の内容が印刷版とは異なる旨明示してある上に、佐々木希さんの冒頭グラビアについては特に単独の注意として記載してあります。
さらに、2週前の同誌9月2日号では嵐の松本潤さんが冒頭グラビアで、16日号の佐々木希さんのケースと同様の対応だったようですが、特に話題にはなりませんでした。

両者のケースで大きく異るのは、販売ページの表紙に本人の写真が掲載されているかどうか、というのが大きいと考えます。
16日号の電子版の表紙にはグラビアの内容を想像させる佐々木希さんの写真が掲載されていますが、9月2日号には松本潤さんの写真部分はグレーで塗りつぶされています(ジャニーズ共通の措置ですね)。

つまり、説明文に記載されているテキストよりも、表紙の写真の方が雄弁にコンテンツの内容を伝えてしまった訳です。それが事実に反する内容であっても。

■出版社と電子書店の対応
さて、本記事執筆時点では出版社は特段の対応を取っていないようです。16日号の電子版を扱っているほとんどの電子書店では引き続き購入可能となっています。

ただ、Kindleストアは9月15日には販売停止となり、9月16日には返金に対応しました(購入者による返金手続きが必要)。さらに、返金後も16日号の電子版は利用可能とのこと。

これは明らかにKindleストアの独自の対応だと思いますが、ちょっとスゴイですね。

出版社が(多分)非を認めていない中で、返金およびコンテンツは引き続き利用可能という十分な対応をこのタイミングで行えるというのは、ショップの評価を高めるのに役立ったのではないでしょうか。

今後出版社が何らかの対応を行うかもしれませんが、ここまで見る限りKindleストアの手際の鮮やかさが際立った一件だと感じます。

■最後に
書籍の告知をさせていただきます。

Dreamweaverを使ったWebサイト制作の入門書を執筆させていただきました。

いちばんやさしいDreamweaver -作りながら覚える、ウェブサイト制作の基本
ビー・エヌ・エヌ新社/2,808円(税込)


ちょうど本記事掲載日あたりに店頭に並ぶ予定です。
HTMLやCSSの基礎からモバイルサイト制作の基本概念まで、なるべくDreamweaverを触りながら習得できるような構成にしました。

Webサイト制作に興味はあるけれど、手を出しかねている方にオススメです。

以下告知です。

トレーニングスクール ロクナナワークショップにて、電子書籍関連のハンズオン講座を行います。ロクナナの講座は少人数制でしっかり深く理解できます。

■「Amazon:Kindleストア用電子出版講座
日時:2015年10月15日(木)11:00~18:00
料金:29,800円(税込み)
会場:東京原宿(ロクナナワークショップ)

■「Apple:iBooksストア用電子出版講座
日時:2015年10月30日(金)11:00~18:00
料金:29,800円(税込み)
会場:東京原宿(ロクナナワークショップ)

■「Amazon:Kindleストア用写真集講座
日時:2015年11月21日(土)11:00~18:00
料金:29,800円(税込み)
会場:東京原宿(ロクナナワークショップ)


講座内容のご確認などはロクナナワークショップお問い合わせフォームよりお送りください。

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi


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