2014年11月に設立された一般社団法人未踏(Mitou Foundation)は2015年3月10日に発表会を開き、同団体が正式に活動を開始したことを発表した。

Mitou Foundationは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行っている「未踏事業」のOBやOG、関係者を中心に、起業家やクリエイターなど、天才的かつ創造的な人材を多角的に支援し、横断したネットワークを作ることで、ITを中心とした日本のイノベーションを加速させることを目的として設立された。



未踏事業とは、IPAが2000年から行っている活動で「IT技術を駆使してイノベーションを創出することのできる、独創的なアイディアと技術を有するとともに、これらを活用する優れた能力を持つ、突出した若い逸材(スーパークリエータ)を発掘育成すること」(IPAのWebサイトより)が目的。

今まで約1600人の才能あるクリエイターを輩出してきたが、現在は25歳未満の若いクリエイターを発掘することに力点を置いて活動を展開している。

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ITで大成功する人を生むためのMitou Foundation
発表会にはMitou Foundationの代表理事である竹内郁雄氏、東京大学情報学環教授である坂村健氏、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究家 特別招聘教授である夏野剛氏、ディー・エヌ・エー創始者である南場智子氏、IPAの理事長である藤江一正氏が登場した。

03 Mitou Foundation代表理事 竹内郁雄氏

まず竹内氏は、日本にはコアなIT・関連技術で大成功する人はいるが、それを育てる環境がないと述べた。日本には大のオトナのITリテラシーが欠如しており、出る杭は打たれる文化。こうした状況を変化させ、土壌を作るためにMitou Foundationを作ったとのこと。企業や研究機関、起業家やベンチャーキャピタル(VC)とMitou Foundationが一緒になり、未踏IT人材をバックアップ。日本型イノベーション・エコシステムを作ると話した。

夏野氏は未踏のプロジェクトに関わってから5、6年が過ぎていると前置きしながら、「私は皆さんご存じの通り、“打たれても折れない出る杭”。出る杭が出過ぎれば打たれない。打つ奴がけがをする」と会場内の笑いを誘いつつ持論を展開。「日本には優秀なクリエイティビティを持つ人間がたくさんいる」「ガラケーからAndroidもiPhoneもできあがった。LINEも日本のケータイメールがスマホに載る形で発展した。という意味で言うと、日本のテクノロジーはある意味最先端だ」(夏野氏)。

04 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究家 特別招聘教授 夏野剛氏

それにもかかわらず「大人がよってたかってつぶすのが日本だ」と夏野氏。未踏事業について、夏野氏もプロジェクトリーダーに就いているが、人の選択については個人の主幹に任されているそうだ。その代わりに選んだからにはきっちりと育てるのが流儀。こうして出てきた人たちが、先ほども書いた1600人。そしてその中から250人がスーパークリエイターという認定を受けている。

「プログラマー仲間の間ではスーパークリエイターは知らない人はいないほど知名度が高いが、世間的な認知度が低いのが問題だ」と夏野氏。いまは25歳以下を対象にしているため、ほぼ学生が占めているのだが、就職の時に企業の人事担当者がよく分かっていない。このため外資系の企業がどんどん採っていってしまうと語る。「いろいろ選択肢を与えるように、支え合う組織が必要だ。OB、OGだけでなく幅広い支援を募って、未踏人材を日本からたくさん輩出していきたい」と述べた。

■ディー・エヌ・エー創始者の南場氏は……



05ディー・エヌ・エー創始者 取締役 南場智子氏

南場氏はこのプロジェクトの話が来たときは二つ返事でOKしたそうだ。「戦後のようにどんどんと右肩上がりで成長していくという時代ではない。市場としての魅力としては世界に目を向けていないと成長しているとはとらえられない。そのような中だが、日本は創造するとか、何か新しいことをするという拠点となるべきだ」と南場氏。

しかし「現実としては、伝統的な企業はイノベーションを出さなくなっているし、起業の実態も、数の上でも質の上でも劣後している状況。これをどう変えていこうかと考えたときに、へそとなるのがプログラミング教育である」と南場氏。

「当社は未踏人材をたくさん採用している。彼らは優秀であるだけでなく、未踏人材であることをすごく誇りに思っている。力を持った人材がもっと大活躍をして、日本発の大きなうねりを起こしていくためにはどうしたらいいのか。少なくとも障害を取り除くのは可能なのではないか。日本が元気を取り戻すためにも、このプロジェクトが核となって、創造的なネットワークを作る動きに力を注ぎたい」(南場氏)。

06東京大学情報学環教授 坂村健氏

坂村氏はIPAが2000年に立ち上げたときの最初のPMだそうだが、未踏というのは言葉が重いなと感じているそうで、「今起こっているイノベーションというのは、誰も踏み入れたことのない土地を開拓していくだけでなく、LINEにしても“twitter スタンプつければ LINEだよ”と。“twitter 写真を送れば Flikr”というのもあるわけで、その手のたぐいのものが多い。SNSが出てきたときにそれを改善するものが出てくるわけだが、アメリカではそうした分野もベンチャーとして扱われているわけで、未踏というよりイノベーションといってしまえばよかったのでは」と語る。

「イノベーションというのは何も新しいことをするだけでなく、マッシュアップしていく。アメリカでも何かにちょっとした機能を追加してベンチャーを立ち上げているのはよくあること。こうしたイノベーションについてももっと発信できたらいい。“なんちゃって未踏”とか(笑)。そんな感じで、新しいことをやろうという人たちをつなぐイメージが打ち出せたらいい活動だと思っている」(坂村氏)。

本日の活動スタートを機に、日本にいる優秀な人材がどんどんと発掘され、起業家が増えて日本が元気になっていくことを期待したい。

一般社団法人未踏(Mitou Foundation)

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