「日本屋根ドローン協会」が発足

屋根の点検事業社に加えドローン技術に関わる有識者が集結し、一般社団法人「日本屋根ドローン協会」が設立された。同協会は、屋根事業に関連した事業者が正しい知識と法律の下でドローンを使うことの普及を図る。そして日本の屋根産業の健全な発展と向上を目指すとしている。

屋根業界は今、大きな節目を迎えているという。少子高齢化が進み、人口が減少していくのに従い、業界の年間売上も年々減少してきているのだ。こうした状況では、新築物件が右肩上がりに増えるということは望めない。

屋根業界が生き残っていくために、既存の戸建て住宅における屋根のメンテナンス事業に注目。戸建て住宅で発生する問題の上位に「屋根のトラブル」があり、今後も屋根点検へのニーズは高まると見ているのだ。

■人が上って点検する危険な作業からドローンを使った安全な点検へ
屋根の点検は、これまでは専門家が屋根に上がって点検を行う必要があった。そのため落下事故などの危険が常に付きまとう。実際、屋根からの墜落や転落の事故は年間856件発生し、うち40件が死亡事故であるという。屋根を専門とする職人さんも高齢化が進み、点検作業自体が難しくなりつつあるのだ。

また、先述したように人口の減少による一軒家の減少により、業界が縮小傾向にあり、少ないリソースで生産性の向上を目指す、あるいはビジネスモデルを大きく転換する必要が出てきたわけだ。こうした問題を解決する手段として、ドローンの技術を活用しようというのである。
屋根点検に利用されるドローン

■ドローンの利用が従来までの屋根点検作業を大きく変える
代表理事の石川商店代表取締役石川弘樹氏(以下、石川氏)は、「ドローンのカメラを使い屋根を点検すれば、屋根に上がるという不安、落下の危険もない。手軽に屋根を点検することが可能になり、天災による被害時の高値作業の押し売りや屋根点検のリフォーム詐欺による被害を防ぐことができる」と語る。

実は筆者、以前自宅をリフォームしている最中に「屋根の点検に来ました」という飛び込みの屋根業者に出くわしたことがある。リフォーム業者に連絡しても「そんなことは聞いていない」との返答。これは怪しいと思いその場で断った。

話を聞くと“点検”と称して屋根に上ったら、自ら屋根を破壊し「ほら壊れている」と言って修理費用を稼ぐ悪徳業者がいるという。そうした悪質な業者を排除する手段としても、ドローンによる屋根の点検は有効であるという。

■これまで2時間かかっていた作業時間が10分に短縮!
石川氏によれば、従来は人間が2時間かかっていた屋根点検が、ドローンなら同じ作業が約10分で完了できることもあるという。長時間かかるのは困ると屋根点検に躊躇している人たちも10分程度で済むなら頼んでみようかという気持ちに変わるだろう。

日本屋根ドローン協会は、今後、セミナーや技術交流、資格制度確立などを取り組み、社会へ情報を発信していくとしている。できたばかりなので、こうした協会がありますよと周知していくことが重要だ。
代表理事の石川商店代表取締役石川弘樹氏

■屋根とドローンの未来
トークセッションでは、屋根とドローンの未来についての熱いトークがあった。顧問の東海大学名誉教授石川廣三氏は新幹線のぞみの台車に亀裂が入った事件を例にあげて、「建物は動かないので即不具合に結びつかないが、屋根には劣化と耐久性の問題がある。雨漏りや地震による脱落などだ。経済性の問題もある。比較的短い周期で定期的点検を行うことで、維持保全の総費用を抑えられる。」と語る。
顧問の東海大学名誉教授石川廣三氏

同じく顧問の東京都瓦工事職能組合理事長藤井禎夫氏は屋根点検について「人間の体は簡単に壊れる。頭から落ちたら致命的、足から落ちても腰の骨を折る。全国の屋根屋さんは足場がない危険な状態で作業している。ドローンを使えば落下事故がなくなり、死亡事故もなくなる」と語る。
顧問の東京都瓦工事職能組合理事長藤井禎夫氏

今は物珍しさが先行するドローン。本体価格もまだまだ高い。カメラ設備などを含めると結構な値段になる。今後ドローンを使った屋根点検がもっと身近になってくれば、ドローンの価格も落ち着くだろうし、技術者が増えてくれば屋根点検に掛かるコストはおのずと下がってくるだろう。

今よりも頻繁に屋根点検ができるし、屋根点検による事故も減らせる。このようにいいことずくめのように聞こえるドローン点検だが、ドローン点検の導入に課題や問題点はないのだろうか?

■ドローン導入の課題や問題点は?
顧問の東京大学教授土屋武司氏によると「マルチコプターと呼ばれるドローンは10年くらい全く飛ばなかった。ドローンは安定して飛ぶと思うかもしれないが、基本的に不安定な機体だ。ドローンの中にあるコンピューターやセンサーが完璧に機能して細かい微調整を行うから、何とか安定して飛んでいる。細かい微調整に不具合が起きれば、途端にバランスを崩して落ちていく危険性がある。落ちるリスクは捨てきれない。風にも弱いので、ドローンを飛ばす環境を見極める必要もある。バッテリーも限られている。飛行時間は10~20分だ。屋根は数分の飛行なので耐えられるが、他の用途では課題が残る。」と語る。

現状、ドローンにも解決すべき課題は残るものの、屋根点検に利用するメリットのほうがデメリットよりも大きいという印象だ。飛行の安定性の確保、長時間飛行といったドローンが抱える問題点は今後の技術進化により少しずつ改善されていくだろう。そうみると屋根とドローンの未来は明るそうだ。
顧問の東京大学教授土屋武司氏

ドローンは「空飛ぶスマートフォン」と呼ばれることもある。カメラが付いていて飛ぶことができ、データ通信ができるからだ。今回の取材を通して、今まで見えなかった屋根を気軽に見るツールとして、ドローンは大きな可能性を秘めているのだ。そうしたことに気が付き、ドローンを積極的に利用しようという動きは、屋根業界だけでなく、別種の業界にも広がっていくだろう。

ドローンの屋根活用が我々の暮らしの役に立ち、結果として屋根業界の活性化にも繋がる。そんな時代が今まさに、やってこようとしているのだ。

日本屋根ドローン協会

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