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電子書籍

個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十九回

■はじめに
本ブログは隔週で掲載しているので、1回お休みすると約1か月ぶりとなります。
今回は情報系の内容で行ってみようと思いますが、約1か月の間のニュースからピックアップするので、タイミング的に微妙なトピックがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十八回

■はじめに
前回はAppleの電子書店であるiBooksストア向けの電子書籍を制作している方向けに、電子書籍の実機表示確認のプロセスを効率化するアプリ「Book Proofer」のトラブルについて紹介しました。

紹介したトラブルは記事掲載時の半年ほど前から確認されていたものなので、「まだ解決されていない」という中間報告的な意味合いが強い内容でした。

今回は、前回お知らせしたようにMac版のiBooksの校正機能(実機表示確認機能)について紹介します。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十七回

■はじめに
個人的な話ですが、メインで使っているMacのOSを先日Yosemite(10.10.3)にアップデートしました。それまでは仕事で使うアプリが確実に使える環境としてMavericks(10.9.5かなんか)を使っていたのですが、案件の区切りがよくなったので遅ればせながら今回アップデートを決行した次第です。

併せてiPhone、iPadのOSもアップデートし、いずれもiOS8.3にしてみました。手持ちのMac/iOSデバイスの環境が2015年4月時点の最新環境になったことで、電子書籍制作に関する環境を少し確認してみました。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十六回

■はじめに
かねてから告知があったとおり、家電量販店のヨドバシカメラが電子書籍サービスを開始しました。

せっかくなので(?)今回はヨドバシカメラの電子書籍サービスを少し触ってみた感想をお知らせしようと思います。

詳細な検証や他ストアとの比較などは他所さまにお任せするとして、こちらでは軽い感じで扱うことにします。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十五回

■はじめに
去る2015年3月11日にJEPA(日本電子出版協会)主催のセミナー「デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回」が開催され、私も参加させていただきました。

電子教科書や電子教材は、本ブログのメインテーマである個人出版とは少し距離のあるトピックですが、個人的に興味がある分野なので今までもたまにネタとして取り上げてきました。

これまでも何度かEDUPUB関連のセミナーに参加したことはあったのですが、正直なところ前提となる知識が不足していて、受講してもあまりピンとくることがありませんでした。

今回のセミナーでは具体的に技術的な部分に触れたセッションもあり、今までよりもEDUPUBの輪郭が少し明瞭に見えてきました。

■EDUPUBの技術的な面について
『デジタル教科書の国際標準「EDUPUB」 第5回』の様子と資料はJEPAによって公開されています。

JEPAセミナー報告ページ

EDUPUBは電子書籍のフォーマットとして世界で最も普及したEPUB仕様を、教育分野で利用・応用しやすくするために拡張するための取り組みのことです。

拡張される機能には様々なものがあり、既存の他の仕様を参照するものもあります。

「既存の他の仕様を参照する」というのは、EPUB仕様でも行われています。EPUBの場合はコンテンツ部分にはHTML(XHTML)やCSS仕様を利用し、パッケージ化にはZIP仕様を利用しています。

これにより、一から仕様を構築するよりも迅速に進めることができるというメリットがあります。

この辺りの技術仕様については、JEPAのリンクの高瀬拓史氏の資料が端的にまとまっていて分かりやすいと思います。

ちなみに高瀬氏は、本ブログでも何度か扱ってきたEPUB3ファイル生成サービス「でんでんコンバーター」の開発を手掛けておられます。

さて、EDUPUBでの拡張では個人的に以下のものが目を引きました。

・印刷版がある場合にはページ番号を含める
リフロータイプの電子書籍では閲覧環境によって1画面(=仮想的なページ)に表示される分量が異なるので、絶対的なページ数が存在しません。

ですが、教科書では先生が生徒に開く位置をページ番号で指示する、というのが一般的です。

EPUB仕様にも印刷版のページ番号をリフロータイプのコンテンツに指定することはできますが、EDUPUBではもっと厳密に指定するようになるようです。

これにより、電子教科書でも開くページを指定するような使い方ができるようになるでしょう。

先進的な機能やリッチな表現が可能になるのも重要ですが、こういった部分のサポートも電子教科書の普及には大きなポイントになりそうです。

・LMS(学習管理システム)との連携
もしかしたら勘違いがあるかもしれませんが、QTI(テストと採点に関する仕様)やCaliper Analytics(学習状況の収集と分析に関する仕様)あたりは、LMSとの連携に関わるものと理解しています。

LMSの仕様として広く使われているSCORMとの連携がスムーズに行えるようになれば、既存の多くのE-ラーニングシステムに組み込めるようになるのではないかと期待しています。

・Open Annotation in EPUB
Open Annotationは注釈の共有のことです。

W3Cによって仕様化が進んでいる「Open Annotation Data Model」をEPUBで利用するための仕様という感じでしょうか。

ある人が電子教科書につけた注釈を別の人が見られる、というものでニコニコ動画をイメージすると分かりやすいと思います。

うまく利用できれば深みのある学習に繋げられそうです。

・EPUB Scriptable Components
これはいわゆる「ウィジェット」と呼ばれるものです。
HTMLファイルとJavaScriptで構成されるインタラクティブオブジェクトとでも言えるものです。

詳細な仕様はまだ把握していませんが、Appleの電子書籍作成アプリ「iBooks Author」にもウィジェットと呼ばれるインタラクティブオブジェクトが用意されています。

iBooks Authorでは、あらかじめ用意されているウィジェットの他に、自分で制作したオリジナルのものも利用できます。

EDUPUBのScriptable Componentsもこれに近いイメージのものかと理解しています。

EPUB仕様ではJavaScriptの使用は許容されていたものの積極的ではありませんでした。EDUPUBでは必要性が段違いとなるので積極的に利用する前提となるようです。

ざっといくつか挙げてみましたが、これら以外にもさまざまな拡張仕様やルールがあり、相当なボリュームとなりそうです。

ふと思い出したのは、EPUB3仕様が正式リリースされた後のことです。EPUB3仕様は当時かなり大きな仕様と認識され、リーダーアプリのEPUB3対応がなかなか進みませんでした。EDUPUBも仕様が決まってからのリーダーアプリ側の対応が大変そうです。

■最後に
前回の第四十四回では、佐賀県立高校の電子教材の運用について触れました。

電子教科書の仕様やリーダーアプリといった環境が整っても、それをどうやって運用するのか、いつまで電子教科書を利用できるのかといった部分でも色々問題が出てきそうな気がします。

先日、政府が義務教育課程における電子教科書を無償配布の対象とする検討を始めた、というニュースも目にしました。

コスト面に加えて周辺の問題についても、様々な想定のもと議論をしていただきたいと思います。

例によってハンズオントレーニングのお知らせです!
いずれも原宿のロクナナワークショップのハンズオン講座です。

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いずれも、電子書籍の制作はハンズオン、リリースの手順はセミナー形式で行います。

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■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi


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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十四回

■はじめに
今回は、電子書籍に関係する権利(範囲が広くて恐縮です)について少し扱ってみようと思います。

「電子書籍に関係する権利」については、第四〇回の中で電子初期の読者の権利について触れたことがあります。

このときは、電子書店のサービス終了に関連して、「電子書籍について読者は書籍を購入しているのではなく、書籍の読書権を購入している」という内容を紹介しました。

今回は読者の権利だけでなく「コンテンツの権利」に関連したトピックを2つ紹介します。

■佐賀の県立高校の電子教材
佐賀県では2014年度から全県立高校の1年生に、標準教材としてタブレットPCの購入を義務付け、電子教材を導入しました。

導入された電子教材は、教科書を始め辞書、問題集、地図などの副教材も含まれているそうです。

ただし、これらの教材は業者との契約により、利用期限が平成26年度のみとされていたらしいのです。

そのため、これらの教材は26年度中(春休み前)にアンインストールする必要があり、その際に電子的に追加したメモなども失われてしまうとのこと。

PCからは教材がなくなっているので、春休み中に電子教材を利用した復習もできません。

なお、これらの情報はニュースサイトから得たもので、私自身が佐賀県教育委員会に直接確認を取ったわけではないので、事実誤認の可能性があるかもしれないことをお知らせしておきます。

さて、私はこの件について表面的なことしか知らない上に、教師・生徒といった利用者の方々にお話しを伺ったわけでもないので、ことの是非については意見を控えさせていただきます。

ただ、この件から考えさせられることは少なからずあると感じます。

まず、このケースではPCおよび教材の購入決定者(県教育委員会)と料金を支払う者(生徒家庭)が、異なっているのが注意点です。

生徒(家庭)の立場としては、電子教材については印刷物の置き換え程度の意識しかなかったのではないかと想像します。

電子書籍というものにある程度理解のある私でも、教育委員会が選んだ電子教材なら疑問を持たずにずっと利用できると思い込んでいただろうと思います。教材のライセンスが1年であったことについてはどうでしょう。その理由は知りませんが、第一印象としてはコンテンツ業者を一概の責めるのは酷な気がしました。

まずはその理由を伺いたいものです。

電子教材のライセンスとその影響については、まず業者と教育委員会での十分な情報と理解の共有が必要でしょう。そしてさらに教育委員会と生徒家庭の間での情報と理解の共有が必要になってきます。

普通の結論ですが、普通のことを普通に実行するのはなかなか難しいことです。今後同様のことを検討している自治体には、参考になることが多いでしょう。

■著作権侵害の非親告罪化
まず、このトピックは電子書籍に限らず、もっと広い範囲の話になります。

ただ、個人の商業出版が容易に可能となった電子書籍では、今後気を留めておくべき問題だと思います。

現在、著作権侵害については著作権者が告訴することで、検察が起訴できるものとなっています。これを「親告罪」といいます。

あるコンテンツの二次創作モノなどは著作権侵害にあたるものがあったとしても、著作権者が黙認していれば罪に問われることはありません。

二次創作モノなどは、作品の知名度を高めたり作品を取り巻くコミュニティを活性化させたりといった作用もあるので、黙認されているケースは少なくないと思います。

これが「非親告罪化」つまり、著作権者以外からの通報などにより起訴されるようになると、その影響は想像以上に大きくなる可能性があります。

様々な分野での創作活動の委縮や、足の引っ張り合いのようなことも起こってくるかもしれません。

近年、著作権侵害が非親告罪になる可能性についての議論を聞くことが増えてきました。

これは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が締結された場合の影響として想定され得る事態であるためです(本記事執筆数日前の深夜の番組でも取り上げられていました)。

私が最初に、TPPの影響による著作権侵害の非親告罪化の可能性について耳にしたのは、4~5年前の電子書籍系飲み会での参加者によるLT(ライトニングトーク)でした。

当時、私の妻が某コンテンツの二次小説を自費出版(印刷物)していたので、頭の片隅にずっと残っていたのです。

前述の通り、電子書籍による個人出版の敷居が下がっている今、この件は推移を見守っていきたいトピックの1つと考えています。

■最後に
世間話になりますが、受験シーズンもそろそろ大詰めですね。

個人的な話になりますが、今年は長女と次女がそれぞれ大学受験と高校受験の受験生です。

そんなこともあり、佐賀県立高校の電子教材の件は興味深いものがありました。

今後はEDUPUBの仕様策定も進み、電子教材を採用する学校も増えてくるでしょう。

実際、長女は既に電子辞書を利用しています。さらに自分の娘たちが副教材ではなく、電子版の教科書を使う日が来たら、なんだか感慨深いものがあるんだろうな、と感じています。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十三回

■はじめに
最近KDPの規約が変わり、「amazon.co.jp(要は日本のアマゾン)での売り上げに対しては、米国の源泉徴収税がとられないようになったらしい」という話を聞きました。

前回もKDPの源泉徴収関連のトピックをとりあげたので、今回も関連して扱ってみようかと思ったのですが・・・。今回は別のトピックを採用することにしました。

やはり、以前に扱ったトピックの続報なのですが、デスクトップ版リーダーアプリ2種のリリースについてご紹介します。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十二回

■はじめに
昨年公開した第三十七回の記事で、TIN(納税者番号)の取得に関して最近米国の方針に変更があったのではないか?という内容を取り上げました。

その根拠の1つに、KDPヘルプ「米国TIN(Taxpayer ID Number)の申請」ページの内容の変化を挙げました。

その後、この記事を読んでいただいた読者の方から情報をご提供いただきました。

それはKDPアカウントの「税に関する情報」の登録方法の変更に関する情報で、第三十七回の記事の続報としてご紹介しようと思います。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四十一回

■はじめに
今回が年最初の記事となります。今年もよろしくお願いいたします。

今回は、デスクトップ版のKindleアプリを紹介しようと思います。

デスクトップ版のKindleアプリそのものはしばらく前からあることはあったのですが「amazon.co.jp」(日本のamazon)に非対応で日本のKindleストアで購入した書籍を読むことができませんでした。

それがこのたび、ようやく「amazon.co.jp」に対応したアプリが登場したのです。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第四〇回

■はじめに
早いもので2014年最後の記事になります。

今年の十大ニュースなど扱うのが定番かもしれませんが、もっとユルい感じでいくつかのトピックをピックアップしてみたいと思います。

■最近のトピック
前回扱おうとしていて忘れていたトピックがあります。
楽天Koboの個人出版サービス「楽天Koboライティングライフ」がβ版ながらリリースされたことです。

楽天Koboライティングライフについては、夏ごろにも触れたことがあります。そのときは、海外版のKobo Writing Life用のEPUB制作ガイドラインが発表されたことを紹介しました。そのときも、海外版のKobo Writing Lifeを利用できる状態ではあったものの、日本で正式に公開されている状況ではありませんでした。

それからほどなく開催された東京国際ブックフェアで、2014年中の日本でのリリースがアナウンスされたこともお伝えしました。

それが何とか12月に、しかもβ版の位置づけでリリースされた、ということで若干の不安がないでもないですが、大手日本企業の運営する個人出版サービスということで大いに期待したいところです。

AmazonのKindle ダイレクト・パブリッシングやAppleのiBooksストアでの個人出版では、米国企業の運営になるので米国での源泉徴収が発生してしまいます。

これを回避するためにTIN(米国納税者番号)を取得する必要がありますが、これがなかなか面倒くさいのです(これについても触れたことがあります)。その面倒がない点だけでも個人出版の敷居は随分低くなると思います。

なお、海外版Kobo Writing Lifeに登録した楽天アカウントでは、日本版楽天Koboライティングライフが利用できません(2014年12月現在)。その場合、新たに楽天アカウントを作成して、そちらで日本版楽天Koboライティングライフの登録をする必要があります(Koboライティングライフへの問い合わせ回答)。

次のトピックは年末恒例のJEPA(日本電子出版社協会)主催の電子出版アワードです。こちらも投票受付が始まったときに取り上げました。

結果はJEPAさんのこちらのリンクからご確認いただけます。

・「電子出版アワード2014

大賞は本ブログでもご紹介したことのある「たびのたね(JTBパブリッシング)」でした。

本ブログではソーシャルDRM(弱いDRM)に着目して紹介しましたが、それ以外にもいくつかのマイクロコンテンツ(記事)を組み合わせて、読者が自分だけのガイドブックを作れる合本機能などが特徴的なサービスです。電子書籍ならではの取り組みが少ない昨今、個人的に選考委員特別賞にはフリーのWebベースEPUBリーダー用ライブラリのBiB/iが選ばれました。

BiB/iはEPUB書籍をWebブラウザで閲覧するためのEPUBリーダーをWebページ内に組み込めるフリーのJavaScriptライブラリです。

電子書籍ストアで販売しているEPUB書籍のお試し版を、自分のサイトで公開する場合などに大変役立ちます。

お試し版のEPUBファイルをダウンロードできるようにしておくのではなくその場で読めるようにしておくというのは、読者にコンテンツに触れてもらうための障壁を大幅に減らすことにつながります。

■2014年のトピック
1年を通して私が個人的に印象に残っているのは、電子書店サービスの淘汰が進んだことです。

2010年当時、日本にも電子書籍が本格上陸すると話題になったときには、様々な事情からなかなか想像したほどには電子書店サービス(クラウドやスマホなどを利用した新世代の)が起ち上がりませんでした。

その後いつの間にか様々な企業から電子書店サービスがリリースされ、ちょっと戸惑うくらいの様相になっていましたが、2014年はサービスを終了するニュースをちょくちょく目にしました。

終了したサービス名をピックアップはしませんが、それらのニュースを目にする度に考えたのは、「電子書籍を購入することで何を得るのか」ということと「サービスの終わり方」です。

「電子書籍を購入する」と言っても、販売の形態によってその性質は異なります。

今回は電子書店のサーバーで購入したDRM保護された電子書籍をその書店用のリーダーアプリで閲覧するという、商用電子書店のスタンダードな形態に絞っています。

このような形態では、読者は書籍の読書権を購入するイメージです。

この場合、書籍を購入した電子書店がサービスを終了すると、一般的に購入した電子書籍は読めなくなってしまいます。

この点は、紙の書籍と大きく異なる点です。サービスが継続している間には気づきにくいですが、サービスが終了するときにクローズアップされます。

サービスが終了する場合、読者は購入した電子書籍が読めなくなります。購入した権利はどうなってしまうのでしょう?

何らかのポイントで購入額分を返還や、別の既存サービスへの統合など、何らかの形で保障するのが一般的です。

しかし、あるサービスでは保障なしにサービスを中止する旨アナウンスがあり、ネット界隈が騒然としたことがあります。結局そのサービスでは購入額分のポイント還元が行われることになりましたが、「電子書籍を購入することで何を得るのか」ということと「サービスの終わり方」を考えるための代表的な事例でした。

■最後に
2015年は電子書籍界隈でどのような動きがあるのでしょうか。

2014年はもう少し教育分野での利用について進展があるかと思っていましたが、2015年はその辺りを引き続き注目していきたいと思っています。

広く教育関連ということでは、図書館への導入なども進んでいくことでしょう。

2014年はコミックの電子化も大きく広がりました。コミックは電子書籍を牽引する大きな分野なので、今後どのような展開があるのか期待したいと思います。

2015年は1回お休みをいただき、1/22を初回とさせていただきます。

皆さまよい年末年始をお過ごしください。

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林 拓也(はやし たくや)
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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十九回

■はじめに
今回は久しぶりに技術的なトピックで行ってみます。元ネタはhon.jpさんの記事「固定レイアウト型EPUB電子雑誌で、アプリ側UIを不用意に表示させないためのJavascriptコード」です。

記事を読んでもInDesignの知識が無いと分かりにくいかもしれないので、その辺りも補足しつつ進めていきます。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十八回

■はじめに
今回は個人的な都合により、雑談とさせていただきます。

雑談の内容であうが基本的に、電子書籍系情報サイトに掲載されていたニュースで個人的に気になった話題を見繕って感想を述べてみる形でいきたいと思います。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十七回

■はじめに
今回はKindleストア(KDP利用)やiBooksストアなど、米国企業の運営する電子書店で電子書籍を販売する際に利用するTIN(納税者番号)について触れてみようと思います。

というのは、このTINの取得に関して最近米国の方針(?)に変更があったようで、従来書籍や情報サイトで紹介されてきた方法では対応できなくなっているという話を聞いたからです。

ただ申し訳ないのですが、変更に対応した解決策の提示ができるほど調べが進んでいません。ということで、本エントリの趣旨は、TINの取得方法が変わったことの周知を進めることです。予めご承知おきください。

■TIN(納税者番号)とは
そもそもの話になりますが、TIN(納税者番号)とはどういうもので何に使用するのか、ということについて確認しておきます。

まず、TIN(納税者番号)とは特定の番号体系のことではなく、TIN(納税者番号)として利用できるいくつかの番号体系の総称です。

TIN(納税者番号)として利用できる番号には次のものがあります。

・SSN(社会保障番号)
・EIN(雇用者番号)
・ITIN(個人納税者番号)


これらのいずれかの番号を取得するのは、「米国企業の運営する電子書店で電子書籍を販売し売上を計上した場合に、米国に源泉徴収税を徴収されるのを回避する」という目的からです。

TIN(納税者番号)を取得し、電子書店の示す方法で米国での源泉徴収を回避する情報を提出することになります。

さて、TIN(納税者番号)の取得については、電子書籍関連本や情報サイトの他、KDPのヘルプサイトでももっぱらEIN(雇用者番号)の取得方法が紹介されていました。

他の番号に比べて申請方法が比較的容易で、個人・法人を問わず取得できたためです。
申請には特別な身分証明書などは不要で、発行元の米国IRS(内国歳入庁)のサイトから申請フォームをダウンロードし必要事項を記載してFAXするか、英会話が可能なら電話で取得することも可能でした。

KDPのヘルプサイトでは、申請フォームへのリンクや記入例が詳しく掲載されていて、申請の敷居を下げてくれていました。

私もTIN(納税者番号)の取得に関して人に紹介するときはKDPヘルプの該当ページをお知らせしていたのですが、2014年の夏あたりにKDPヘルプの記入例に基づいて作成した書類をFAXして申請したものが受け付けられないという事例の報告を受けました。

書類の不備ではなく、どうやらEIN(雇用者番号)の取得方法が変わったのではないか、という話も小耳にはさみました。

加えてKDPヘルプの記載も変更になっていました。

KDPヘルプ「米国TIN(Taxpayer ID Number)の申請

詳細は実際のKDPヘルプを見ていただくとして、かいつまんで言うと、「個人はITIN(個人納税者番号)を取得し、個人以外はEIN(雇用者番号)を取得してください。取得方法は米国IRSのサイトを確認してね」という感じです。

■TIN(納税者番号)取得について
さて、本来ならここで詳しい取得方法を紹介できればよかったのですが、英語が不得手なせいでピシっとした方法が紹介できません。冒頭でお知らせした通りです。申し訳ありません。

以下、SNSで知人に教えていただいた話に推測を加えて、思ったことを書いてみようと思います。情報を提供していただいた方ありがとうございます。

どうもEIN(雇用者番号)は外国から取得する場合は、FAXでの申請は受け付けられなくなったらしく、電話で行う必要がありそうです。

KDPヘルプによれば個人以外向けとのことですが、個人事業主ならイケるかもしれません。どの道、ある程度の英会話力が必要になるので、英語が苦でない個人事業主の方は米国IRSに電話で問い合わせてみるとよいでしょう。

KDPヘルプに従ってITIN(個人納税者番号)を取得する場合、必要書類として…

・パスポートのコピー(米国領事館または公証人役場で公証を受けたもの)
・前年度の納税証明書
・フォームW-7(米国IRS書類)


などが必要になるようです。

また、ITIN(個人納税者番号)には5年の有効期限があり、失効後には再発行の申請が必要になるとのことです。

EIN(雇用者番号)、ITIN(個人納税者番号)のいずれを申請するにしても、英会話や書類の準備等で難易度が高くなっていることは間違いありません。

少し調べたところ、EIN(雇用者番号)、ITIN(個人納税者番号)の取得代行業者というのも存在しているようです。

取得代行で数万円、電話相談で数千円程度の料金がかかるようですが、このようなサービスを利用するのも一つの方法でしょう。

あるいは、源泉徴収税の徴収を甘んじて受ける(場合によっては還付手続きも諦める)前提で、販売してしまう、というのもアリかもしれません。

しばらく我慢して、コストをかけずに個人で取得するための情報が出てから改めて自分で申請する、という感じで。

■最後に
ネット検索は便利ですが、検索条件(期限)の設定をしないと古い情報がいつまでも引っかかってしまうのが難しいところです。

TIN(納税者番号)の取得についても同様で、EIN(雇用者番号)をFAXで申請する、という方法が上位の検索結果に掲載されてしまうと思います。

検索結果が変わるには相応の期間が必要になると思いますが、まずは内容(本件であれば、申請方法の変更)が周知されることが第一歩です。

ということで、解決策を示せない中途半端な内容ではありますが、取り上げてみた次第です。

内容に間違いなどございましたらTwitter(@HapHands)、メール等で林までお知らせください。

また、有用な情報などございましたらご提供をお願いいたします。

林拓也のKindle出版講座、iBooks出版講座、ロクナナワークショップで受講生募集中です。詳細はロクナナワークショップのWebサイトでご確認ください。

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高解像度化でより美麗に! Amazonの新型端末「Kindle Voyage」【デジ通】

Amazonが電子インク採用の電子ブックリーダーの最上位モデルとなるKindle Voyageを発売した。日本でAmazonがKindleのサービスを開始してから2年。電子書籍の利用者も伸びているようで、電子インクデバイスの愛用者も増えている。新しいKindle Voyageは電子書籍の利用者にとって、より利便性の高い電子ブックリーダーに仕上がっている。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十六回

■はじめに
今回はAdobeのページレイアウトソフト、InDesignのEPUB書き出し機能について触れてみようと思います。

今回InDesignのEPUB書き出し機能を扱おうと思ったのは、1つには最近InDesign CS6のEPUB書き出し機能に関するトレーニングを担当させていただいたこと、もう1つは最近CC2014がアップデートしてEPUB書き出し機能が強化されたことがキッカケです。

ということで、今回は少し前のバージョンのCS6と最新バージョンのCC2014.1(以後「CC2014」)の違いなども少し触れていきます。

とはいうものの、正直なところ私InDesignについては全く詳しくありません。その辺り不備がございましたらご容赦ください。

■基本的な部分について
個人的に、シンプルながら評価したい点は、メタデータの指定が1ヵ所で行えるようになった点です。

CS6では、書籍タイトルや著者名などは[ファイル]メニュー→[ファイル情報]で[ファイル情報]パネルを開いて指定し、出版社や書籍IDなどは書き出し時の[EPUB書き出しオプション]パネルで指定しました。

CS6 [ファイル情報]パネル CS6 [ファイル情報]パネル

CS6 [EPUB書き出しオプション]パネル CS6 [EPUB書き出しオプション]パネル

CC2014では[EPUB書き出しオプション]パネルで全て指定できるようになっています。

CC2014 [EPUB書き出しオプション]パネル CC2014 [EPUB書き出しオプション]パネル

次に評価したいのは、EpubCheckに通るようになった点です。

EpubCheckというのは、EPUBファイルがEPUB仕様に適合しているかどうかをチェックするためのアプリです。

CS6で書き出したEPUBは、EPUB2用の目次ファイルであるNCXファイルに問題があり、EpubCheckでのテストでエラーが出ていましたが、CC2014ではこの点が修正されて、エラーが出なくなりました。

ただ改めて考えると、エラーが出なくなったというのは、今までマイナスだったのが0になっただけ、とも言えるので「普通になった点」と言った方がいいかもしれません。

さて、基本的な部分での残念な点は、日本語のファイル名に関する部分です。

例えば、inddファイルの名前はEPUB化したときの、コンテンツ部分のXHTMLのファイル名として使われます。つまり、inddファイルの名前に日本語を使っていると、EPUB内にも日本語名のファイルが含まれることになります。

日本語のファイル名もEPUB仕様では許容されていますが、実際の運用上は日本語名のファイルが含まれていない方が何かと安心です。

また、画像をリンクしている場合、画像ファイルが日本語名の場合も同様で、日本語名の画像ファイルがEPUB内に含まれることになります。

他に、言語の指定(opfファイル内のdc:languageの指定)が「ja」ではなく「ja-JP」となっている点も残念です。

「ja-JP」になっていると、リーダーアプリが日本語の書籍であることを適切に理解できない場合があります。

例えば、iOSのiBooksでは「ja-JP」と指定されている場合、表示フォントの候補が欧文フォントになってしまいます。

言語指定が「ja-JP」の場合 言語指定が「ja-JP」の場合

これを「ja」に修正すると、適切に日本語の書籍であると認識され、表示フォントの候補が日本語フォントになります。

言語指定が「ja」の場合 言語指定が「ja」の場合

とりあえず、基本的な部分についてはこのぐらいにしておきましょう。

■応用的な部分について
何を以て「応用的」とするかという問題もありそうですが、単に私の主観です。

さて、評価ポイントとしてまず挙げたいのは、CC2014で固定レイアウトに対応したことです。

固定レイアウトとして書き出すには書き出し形式を「EPUB(固定レイアウト)」に設定します。

ebook0060

固定レイアウトの[EPUB書き出しオプション]パネルでは、2HTMLで見開きを構成する形の他、1HTMLで見開きを構成する紙芝居方式の指定も行えます([一般]カテゴリの[スプレッドコントロール])。

ebook0070

見た目の再現度も高く、新鮮な驚きを感じました。

InDesign上の表示 InDesign上の表示

iBooksでの表示 iBooksでの表示

固定レイアウトについては、CC2014.1のアップデートで[アニメーション]パネルを使ってエフェクトアニメーションの追加なども行えるようになりました。

例えば、ページを表示したときに画像をフェードインで表示させることができます。

ただし、もちろんこれはリーダーアプリ側の対応が必要です。

[アニメーション]パネル [アニメーション]パネル

設定したアニメーションは、InDesign内で[EPUBインタラクティブプレビュー]パネルで状態を確認できます。

[EPUBインタラクティブプレビュー]パネル [EPUBインタラクティブプレビュー]パネル

後は、epub:typeプロパティを設定した脚注を設定することもできるようになっています。
epub:typeプロパティを設定した脚注は、iBooksなど一部のリーダーアプリでは、脚注の内容がフキダシのようなポップアップで表示され、他のページに切り替える必要がありません。

iBooksの脚注ポップアップ iBooksの脚注ポップアップ

スペースの関係もあるのでここまでにしておきますが、固定レイアウトについてはなかなかいい感触を持ちました。

■最後に
CC2014の固定レイアウトの日本語対応について、次のような既知の問題がありました。

・縦中横や割り注が失われる。
・縦組で入力した文字が 90 度回転する。
・縦組テキストの各行末にハイフン「-」が追加される。
・縦組テキストの脚注位置にずれが生じる。

InDesingヘルプより


CC2014.1のアップデートでは、これらの問題の内、「縦横中が失われる」以外の問題は解消されたとのことです。

・InDesign CC 2014.1 リリース:固定レイアウト EPUB の日本語版対応について

InDesignのEPUB書き出し機能がEPUB3に対応したのは、たしかCS5.5だったと思います。

バージョンを重ねるたびにだんだん良くなっていますが、個人的には書き出されるCSSスタイルの制御をもう少し柔軟に行えるといいな、と思っています。

次回は私の個人的な都合により、お休みさせていただきます。ということで、次は11月に入ってからとなります。大分年の瀬が近づいてきますね。

風邪などひかないようお気を付け下さい。

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■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十五回

■はじめに
今回は雑記というか、目にとまったトピックを2つご紹介しようと思います。

1つはITmedia eBook USERさんに掲載された、西尾泰三氏の記事「明治図書出版はなぜDRMフリーの電子書籍販売に踏み切れたのか――担当者に聞いてみた」について。

もうひとつは、最近久しぶりのアップグレードが行われた無料のEPUB制作アプリ「Sigil」についてです。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十四回

■はじめに
Adobe社がリリースしているデスクトップ用EPUBリーダーアプリ「Adobe Digital Editions」(以下「Ditital Editions」)をご存じでしょうか。

Mac版、Windows版が共にリリースされている数少ないデスクトップ用EPUBリーダーアプリで、Adobe製ということもあり比較的よく利用されていました。

日本で広まり始めたのはver.2の頃で、その頃のEPUB仕様のバージョンは2.0.1でした。
EPUB2.0.1は、主に欧米の文書中心の仕様で、縦書き、ルビ、右開き、右から左方向へのテキストフローなどはサポートされていませんでした。

その後EPUB3仕様が策定され、世界の様々な書籍の電子化を想定して前述のような仕様が盛り込まれました。

Digital Editionsもver.3 になり、日本語の書籍で重要な、縦書き、ルビ、右開きなどがサポートされました。

ただし、EPUB3仕様がサポートされたわけではなく、Digital Editionsで縦書きのEPUBを利用する場合、EPUB2形式に縦書きの設定を追加したものや、EPUB2用の目次データを持たせることでEPUB2との互換性を持たせたEPUB3形式などが使われました。

さて、前振りが長くなりましたが、去る9/8(米現地時間)にDigital Editionsの新バージョンであるver.4がリリースされました。

今回は、Digital Editions ver.4を軽く触った感想を書いてみます。

■入手とインストール
Digital EditionsはAdobe Digital Editionsのページにアクセスし、[DOWNLOAD]ページに遷移してインストーラを入手できます。

なお、旧バージョン(ver.3/ver.2.0.1)も公開されています。

旧バージョンのダウンロードページ

既に旧バージョンがインストールされている場合、ver.4との共存はできないようです。念のため旧バージョンをアンインストールしておきましょう。

さて、ここでお知らせしておくべきだと思うのは、ver.4はどうも動作が不安定な印象だという点です。特にWindows版はver.3と比べて基本的な部分での機能の劣化すら目につきます。

以下、その辺りにも触れていきますが、ver.4をお試しになる場合はこの点ご注意ください。

■ver.4の新機能など
ver.4の売りはいくつかあるのですが、いくつかピックアップして紹介します。

・EPUB3対応
縦書き、右開きなどはver.3でサポートされていたので、実用面からはさほどインパクトはないかもしれませんが、EPUB3の目次データが使えるようになったので、その点はよかったです。

また、関連してCSSも使えるものが増えたようです。

例えば、少し複雑なCSSによる見出しのデザインなどは、ver.3ではサポートされないCSSプロパティが多かったために表示が簡素化されることが少なからずありましたが、ver.4ではかなりのところまでサポートされています。

以下、ver.3とver.4の表示の違いの例です。いずれもモノクロデバイスを想定して、グレースケールのデザインとなっています。

例1:ver.3での簡素化された表示例1:ver.3での簡素化された表示

例1:ver.4での本来の表示 例1:ver.4での本来の表示

例2:ver.3での簡素化された表示 例2:ver.3での簡素化された表示

例2:ver.4での本来の表示 例2:ver.4での本来の表示

・Media Overlays対応
Media Overlaysは本ブログでも何度か登場したEPUB3の仕様の1つです。

EPUB内に組み込んだ朗読音声データを再生し、該当箇所をCSSで指定したアクティブ表示(文字色を変えるなど)させるものです。

これも「EPUB3対応」の一環なのでしょうが、個人的に大きな機能強化なので敢えて別項目にしました。

Media Overlays対応の書籍を開くと[表示]メニューの[メディアオーバーレイを再生する]で再生を開始できます。

ebook0050

再生箇所はEPUB内のCSSで指定したようにアクティブ表示されます。

赤い部分が読み上げ箇所のアクティブ表示 赤い部分が読み上げ箇所のアクティブ表示

また、本文の任意のテキストをクリックすると、そこから再生を始めることもできます。

ただ、再生位置が次ページに移っても自動でテキストのページ遷移は行われず、手動でページ遷移すると再生位置が狂ってしまうようです。

また、再生中にウィンドウサイズを変更した場合にも再生位置が狂ってしまいました。
リフローでのメディアオーバーレイは技術的に難易度が高いであろうことが想像できます。

・固定レイアウト対応?
これも「EPUB3対応」かもしれませんが、やはり別項目で「?」を付けたのは、手持ちの固定レイアウト書籍があまりなく、テストが不十分だからです。

私が試した限り、1HTMLで見開きを構成する「紙芝居」タイプのものは概ね大丈夫そうでした。

ただ、2HTMLで見開きを構成する「書籍」タイプのものは、表示が崩れてしまいました。この辺りはデータの方の問題かもしれません。

・JavaScript対応
非常に驚いたのですが、JavaScriptにも対応していました。もちろん、どの程度までサポートされているのかは分かりませんが、jQuery+lightbox風ライブラリは動作しました。また、クリックで音声の再生・停止を切り替える処理も動作しました。

前述のCSSプロパティにも言えることですが、サポートされる範囲の公式な情報が欲しいものです。

・Windowsでの問題
Windowsでは、ver.3でサポートされていたいくつかの機能が無効になってしまっていました。これも個人的なテストの範囲なので、もしかしたら環境やデータの方の問題かもしれませんが、一応参考までに。

1.縦書きが表示されない
縦書きの書籍は横書きで表示されてしまうのですが、右開きの書籍の場合下部のナビゲーションは右開きが有効になります。その結果、横書きで右開き操作という気持ち悪い状況になってしまいます。

2.テキスト表示が低品質
ver.2ではDigital Editionsはテキスト表示がアンチエイリアシングの効かない残念な品質だったのですが、ver.3になってテキストの表示品質が改善されました。しかし、何故かver.4ではver.2時代の品質に戻ってしまっています。

3.埋め込みフォントが無効
ver.3ではEPUBに埋め込んだ埋め込みフォントが正しく表示されていましたが、ver.4では無効になってしまっていました。

他にもリリースノートを見ると、既知の問題などが掲載されています。やはりWindows関連が多いですね。

近いうちに更新版がリリースされるのを期待したいところです。

■最後に
Adobeの電子書籍向けレンダリングエンジンは、WebKitと並んで古くから様々なリーダーアプリに採用されてきました。

近年ではWebKitが多数派になってきている気がしますが、それでもAdobeのレンダリングエンジンのアップグレードはインパクトのある出来事だと思います。

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いずれも電子書籍の制作はハンズオン、リリースの手順はセミナー形式で行います。是非ご参加ください!

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十三回

■はじめに
本ブログのネタを探すために電子書籍ニュースを配信している「hon.jp DayWatch」を見ていたらDRMに関する記事がありました。

Adobe DRMをやめて電子透かしへ、欧米出版界で電子書籍の脱DRM化の予兆

この記事を読んで、直近の「電子書籍元年」である2010年からの利便性の変化に思いを馳せました。

2010年の電子書籍元年で特徴的なのは、電子書籍を読むための環境としてスマートフォンやタブレットPCといった新たな携帯デバイス向けのアプリが登場したり、ストアによっては専用の電子書籍端末が登場したりしたことです。

今回はその辺りについて少し書いてみようと思います。記憶違いなどもあるかもしれませんが、ご容赦ください。

■過去からの変化
DRMについてはご存じかもしれませんが、一応簡単に説明します。

DRMは「Digital Rights Management」の略で、デジタル著作権管理を意味します。もう少し具体的に言うと、デジタルコンテンツの違法コピーを防ぐための技術を指すケースが一般的です。

細かく言うと、もっと広い意味がありますが話を簡単にするためにこの程度の簡単な説明に留めておきます。

さて、このDRMですが、著者や出版社の権利の保護を目的としていますが、反面読者の利便性を損なう側面もあります。冒頭にDRMの記事を読んで、利便性の変化に思いを馳せたと書いたのはそういう関係からです。

当時、スマホやタブレットPCなどの電子書籍端末として利用可能なデバイスが登場したことにより、読書に複数のデバイスを利用するケースが増加してきました。

外出時にはスマホを利用し家ではタブレットPCを利用する、といった形はその代表例ですね。まず、思い出したのはダウンロード期限が短いケースです。

電子書籍はデバイスにダウンロードして読みますが、当時のある大手電子書店ではその期限が1年でした。

スマホやタブレットPCは同じメーカーのものでも毎年のように新製品が登場します。毎年買い替える方は少数派と思われますが、2年で買い替える方はさほど珍しくないのではないでしょうか。

スマホを買い替えた場合、その時期が電子書籍を購入してから1年以上経過していたら、新しいスマホに再度ダウンロードすることはできません。その書籍を閲覧するには古い端末を利用しなければなりません。

書籍というのは、ともすれば10年単位で読み直すこともあるので、個人的に購入意欲を大きく削がれたものでした。

また、複数のデバイスで同時に読むことができないサービスもありました。私が経験したケースでは、あるデバイスで読んでいた本を他のデバイスで読む場合、電子書籍をサーバーの領域に一旦戻した上で別のデバイスからダウンロードするという手順を踏む必要がありました。

これもなかなかに残念な仕様でした。こういった制限は、広い意味でのDRMと呼べるのかもしれません。

恐らくは当時、書籍の電子化に今よりも強い警戒感を持っていた著者や出版社への配慮という側面が大きかったのでしょう。

現在では、再ダウンロードの期限が撤廃され、複数のデバイスでの同時利用も当たり前になってきています。現時点でもかなり利便性が向上したことを実感します。

■DRMの変化による期待
さて、元の記事の話ですが、世界最大の出版社グループが、ドイツ国内で電子書籍のAdobe DRM採用停止を検討している、という内容でした。

DRMでもっとも一般的な形態は電子書籍ファイルを暗号化する方式です。あるサービスで暗号化された電子書籍は、それをリーダーアプリで複合化することで正常に読めるようになります。

つまり、ストアに紐づいた専用のアプリでないと閲覧できません。このように暗号化を利用した強固なDRMを「強いDRM」と呼びます。

強いDRMに対するものとして、弱いDRMもあります。弱いDRMの代表は、購入者に関する情報(名前、メールアドレス、顧客番号など)を電子書籍ファイルに埋め込む形のものです。

これは技術的に電子書籍を限られた環境でしか読めなくするようなものではありません。
違法コピーが出回っても、どの購入者のものが出回ったのか調べられるので、技術的ではなく心理的に違法コピーを抑制する効果が期待できます。

記事の表題にある「電子透かし」とは、このような弱いDRMのことです。

さて、強いDRMから弱いDRMに置き換えられると、購入した電子書籍を自分の好きな閲覧環境で読めるようになる可能性があります。

例えば、A店、B店の2つのストアで販売されている電子書籍のフォーマットがEPUBだとします。それぞれが弱いDRMを採用し、販売した電子書籍は読者がEPUBファイルをダウンロードできるようになっていたら、そのEPUBファイルを読者が好きなEPUBリーダーアプリで読むことができます。

以前に比べたらそれぞれの電子書店は格段に利便性が高くなっていますが、それぞれの書店で購入した電子書籍は一元管理できません。著者、出版社、電子書店などそれぞれの思惑もあるのでなかなか難しいでしょうが、弱いDRMが主流になることで購入店に関わらず自分の好みの環境で読書ができるようになるかもしれません。

■最後に
9月9日にはAppleのイベントでiPhone6とiOS8の発表があるものと思われます。個人的に電子書籍関連ではiBooksやiBooks Authorの更新など興味のあるところです。

何か目新しいものがあれば次回の記事で扱ってみたいと思います。

以下、ハンズオン講座のお知らせです。

林拓也のAmazon:Kindleストア用電子出版講座
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Kindle向け、iBooks向けの電子書籍の制作とリリースについて6時間かけて紹介する講座です。

ご興味のある方は是非リンク先をご覧ください。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十二回

■はじめに
本ブログは電子書籍の制作に関する技術的な側面を取り上げることが多いのですが、今日はちょっと違う面を取り上げてみようと思います。

主に読者・著者として電子書店を利用する、といった部分を改めて考えてみます。

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個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第三十一回

■はじめに
始めにお断りしておきます。お盆休み目前ということもあり、連載は小休止ということで今回は完全に宣伝エントリーとなります。広い心でご覧いただけると幸いです。

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日本大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。理学博士。日本物理学会会員。データサイエンティスト協会会員。IT系記事を中心に著書多数。原稿の依頼歓迎。

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