ITライフハックでは、今年の2月に「見てきました!“夢のリゾートテレワーク”「ワークラボ八ヶ岳」でテレワーク実地体験」、3月に「リゾートワークの魅力をたっぷり紹介!『信州リゾートテレワークフォーラム IN 東京』」 という記事で、長野県で行われている「リゾートテレワーク」についてご紹介してきた。今回は軽井沢町と信濃町での取り組みについて取材してきたので、2回にわたってご紹介していこう。
■ 新幹線で62分。都心に近い立地の軽井沢町
誰もが知っているリゾート地の軽井沢町。北陸新幹線で約1時間という距離のため、軽井沢町に住んで東京まで通勤している人も多いのだとか。このような地理的優位を生かして、軽井沢町ではリゾートテレワークの啓発・普及に取り組んでいる。
現在では長野県全体で取り組んでいるリゾートテレワークだが、実はその先駆けとなったのが軽井沢町だ。別荘地でもあり、さまざまな人材が集結できるので、ビジネスの人脈も作りやすいのだという。いま、その活動拠点となっているのが、今回ご紹介する「ハナレ軽井沢」だ。
ハナレ軽井沢は、軽井沢駅北口から歩いてすぐの所にある。NTTコミュニケーションズが主体となって作られた貸し切り型ワークスペースだ。最大20名程度が収容でき、テーブル席のほかカウンターがあり、本格的なキッチンスペースも作られている。カウンターには電源コンセントも配置されているほか、壁際には同社が実証実験中のサイネージ型テレワークウィンドウ「NoMado」が設置されており、同社の拠点との常時接続で一体感のあるリモートワークが体験できたり、モバイルなどリモートからも参加できるようになっている。そのほかの設備としては、高速無線LAN、Wi-Fi、USB充電器などが用意されている。運営だが、週の半分はキッチンを利用した「食イベント」に使うほか、平日の2日間をワークスペースとして提供していく方向だ。
これらの運営を取り仕切っているのが、同社のSmart Work Team。このチームはハナレ軽井沢のほか、外出先でワークスペースを探せる「Workspace Engine」(仮称)、先ほども述べたNoMadoの実証実験のほか、テレワークの文化醸成への取り組みと情報集中、ワーケーション・リゾートテレワーク事業を行っている。
リゾート地で仕事をするというと、ともすると「サボれていいよね」と見られがち。また木曜と金曜が仕事で、土曜日はリゾートを楽しむという形となると、行きは出張費だが帰りの電車賃はどう考えるのか、また休日の労務管理はどうするのかなど、課題もある。このためどのような形であれば納得のいく仕事ができるようになるのかは、同社の人事部を含めて制度面の着地点を見極めている最中だという。
また、最近では各企業が会社を越えて横断してチームを作り、新しいものを生み出していく「オープンイノベーション」もキーワードとなっているが、軽井沢という非日常感の中で取り組んでいくための場所となることも一つの選択肢だ。そして宿泊や観光、交流といったソフト面については同社だけでなく、周辺のサービスや企業と連携することで、軽井沢に滞在して仕事をするという体験の価値と競争力を高めることも目的となっている。
■ 軽井沢でリゾートテレワークをするということ
軽井沢という立地を生かしたリゾートテレワークはどのようなものなのだろうか。いまは場所を確保して設備を整えている段階で、ソフト面の充実はこれからの課題だという。ハナレ軽井沢では食イベントとワークイベントを半々で実施していく予定だが、料理を作りながらワークショップに取り組んだり、チームわけして献立に取り組んでみるといったことも可能性として考えられる。用意されている厨房は本格的なもので、ほかにも菓子厨房もあるので、こちらを活用して8月からはスイーツを販売する予定となっている。
なぜ軽井沢の地でリゾートテレワークを推進することになったのかというと、2018年7月に軽井沢リゾートテレワーク協会が発足したことを受けて、地方の観光地でテレワークが推進されているという報道がなされた。NTTコミュニケーションズは働き方改革やスマートワーク領域での新規事業を考えており、「何か新しいことができそうだ」ということでアプローチ。そこから企画が広がっていったのだそうだ。
軽井沢では、本格的に仕事ができるスペースがあまりない。年間870万も観光客は訪れるが、ワークスペースはわずか。そこで駅前にワークスペースを作り、ワーケーションやテレワークをしたいという企業向けのスペースとすることとした。
2020年にオリンピック・パラリンピックが行われるが、開催期間は交通機関が大きく溢れることが予想される。これをきっかけに、働き方を考えている企業が増加しており、働く場所や働く時間の境界線が曖昧になり、働き方が多様化することは間違いない。まだ一部企業にとどまっているが、これを広げていくのが同社の使命でもある。
■ 人口2万人の軽井沢が滞在型のリゾートテレワークを目指す理由
軽井沢町は人口2万人程度だが、別荘が1万7000件近くあり、観光客は870万人。その多くは日帰りとなっており、宿泊する人は少ない。そのため長期滞在型のリゾート地にしたいというのが、軽井沢観光協会の命題だった。そのため国際学会などを誘致することに力を入れており、G20のエネルギー・環境大臣会議を軽井沢で開催するなど、国際的なコンベンションが増えてきた。そして新たな課題として、そうしたものに付随するビジネスマンを誘致することも目的の一つとなった。
そこで2018年7月に、先ほども述べた軽井沢リゾートテレワーク協会が発足。その目的は、軽井沢にビジネスマンを誘致すること。そしてほかの別荘地にない圧倒的な人的ネットワークが軽井沢にあり、別荘客、地元の人、移住者、半移住者、観光客が街のバーやレストランで交わり、さまざまな取り組みの上でイノベーションにつながっていく。そして多種多様なビジネスが生まれていくのが軽井沢のよいところだ。
また、東京から新幹線で1時間なので、東京とのタイムラグがないのも利点。そして軽井沢を訪れているキーパーソンも多いため、「打ち合わせは次回軽井沢で」となることも多いのだそうだ。東京では分刻みで仕事をしているが、軽井沢では時間があるので打ち合わせが可能、ということも。
長野県の中でもリゾートテレワークに付いての取り組みが抜きん出ている軽井沢だが、それはなぜなのだろうか。理由として考えられるのは、歴史的にテレワークが関係あること。もともと別荘に住んでいる人は、ある意味テレワークをしていたとも言えるし、小説家などが軽井沢に滞在して書くのもそうだといえる。別荘でバーベキューやっているとしても国際電話をしていたり、パソコンで何かをやっているのは日常茶飯事なのだとか。シームレス時代の新しい働き方が軽井沢にはあるわけだ。
「拠点型の仕事は昭和の時代に終わった。会社でないと仕事ができないのは昭和。平成になってそれが緩んできて、令和の時代には非拠点型のワークスタイルが主流になる」と語るのは、軽井沢リゾートテレワーク協会・副会長の鈴木幹一さん。「満員電車で通勤するのはいやだとみんな思っている。なので積極的にテレワークをしていく企業は増えていく。軽井沢は東京からの距離も近い上、自然環境が豊か。そして人的ネットワークが得られてビジネスには非常によい環境が整っている」とも。
テレワークの議論でよくあるのは、管理職が部下を管理しにくい、という意見。「しかしそれは古い。目の前に部下がいないと管理できない上司は管理職としてふさわしくないのでは。大企業はフリーアドレスにして、社員の6割しか座席がないというケースもある。テレビ会議はできるし、今後主流になるのはテレワーク」と語る鈴木さん。「豊かなライフスタイルを実現するために仕事をするのが大事。その中で必然的にテレワークはフォーカスされる」(鈴木さん)。
現在はテレワークをする人が軽井沢に集まっているほか、テレワーク主体で仕事をしている会社が、たまにはフェイス・トゥ・フェイスで議論したい、と合宿したいというケースもあるのだとか。「ありとあらゆるところでワーカーが軽井沢に集まっている。これからはリゾートテレワークができる施設も増えてくるだろう。今はスキーでもパソコンを持っていく時代。ちょっとした空き時間に仕事ができるショートタイムテレワークができる施設がいっぱいできればよい。時代はどんどん進化していきます」(鈴木さん)。
軽井沢町が目指すテレワーク構想。今後の展開に期待したいところだ。
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NTTコミュニケーションズ株式会社
ハナレ軽井沢事務局
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