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11月も半ばを過ぎ、そろそろ冬の足音が聞こえてくる頃。寒くなると外出をためらうこともあるかもしれない。しかし、冬には冬の味覚があることをご存じだろうか。その王様は「牡蠣(かき)」だ。牡蠣を食べていい時期は、9月~12月の英語読みで「Rの付く月」だと思っている人も多いかもしれないが、実は11月~4月が旬。産卵を終えた牡蠣はそこから身がふっくらとしてきて、再び産卵の時期に入る3月~4月がおいしいのだ。牡蠣を食べるなら冬の季節なのだ。

そしてその本場として有名なのが広島県である。11月から牡蠣がおいしいというなら食べに行かない理由はない、ということで、牡蠣だけでなく、広島県のおいしいものを食べ歩くプレスツアーが開催されたので紹介しよう。

■まずは鞆の浦のある福山から三原、竹原へ
ツアー初日はJR福山駅に集合。そこからバスでまずは鞆の浦に向かう。鞆の浦は江戸の昔、紀伊水道と燧灘(ひうちなだ)が合わさる所で、いわゆる“潮目”に位置する。このため瀬戸内海を行き来する船が多く、とても栄えた町であった。紀伊藩の船と衝突して沈没したいろは丸の賠償について、坂本龍馬が交渉したのが鞆の浦だ。

ところで鞆の浦は漁港なので、上がる水産物もさまざま。道を歩きつつ商店を見ていくと、タコの干物が目に入る。冷たい風が吹くので、とてもおいしい干物ができるのだとか。


鞆の浦で目立つところにあるのが常夜燈。船の出入りを誘導した灯台だ



昔からの街並みなので、細い路地が多い



船として使われた材木を壁に利用。潮を浴びているので腐らないし、シロアリも寄りつかないのだそうだ



いろは丸の事件を知ることができる「坂本龍馬・いろは丸展示館」。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」に詳しい内容が書かれている

■ユネスコの世界記憶遺産にも登録された絶景スポット
また福禅寺対潮楼も観光スポットとしては欠かせない。ここは江戸時代に朝鮮からの使節を受け入れた場所だ。江戸時代、元禄年間に建てられた客殿には1711年に来た朝鮮通信使の李邦彦が「日東第一形勝」と賞賛した額も飾られている。


ここが対潮楼



柱を額に見立てると、とても風光明媚な瀬戸内海を望める

ところで、ジブリファンならご存じだと思うが、「崖の上のポニョ」のモデルは鞆の浦だと言われている。それは宮崎駿さんがその風景を好んでここに滞在したことがあり、鞆の浦の風景に似せて作られているからだ。


宮崎駿さんがよく来ていた喫茶店「深津屋」



味のある雰囲気を持つ店内



この手前の席に座ってコーヒーを飲んでいたそう

■三原でタコを味わう
鞆の浦を訪ねた後のお昼は三原にある和食処登喜将本店へ。三原はタコが捕れるので、町のそこかしこにタコに関連するものがある。ここではタコづくしの「たこお手軽コース」(2900円:税別)をいただいた。タコのやわらか煮や活たこ刺身(醤油と梅肉醤油の2種類が味わえる)、たこピリ辛鍋(府中味噌を使用)、たこ天、たこ釜飯といったラインアップ。タコのやわらか煮は本当に柔らかくておいしかった。また梅肉醤油はさっぱりとしてタコをいただけるのでこれも美味であった。


お昼は和食処 登喜将 本店へ



タコづくしのたこお手軽コースは2900円(税別)とリーズナブル

■食後のデザートにたこもみじ
おなかもいっぱいになったあとは、デザートがほしくなるというもの。三原駅前の通りに移動して、ゑびす家を訪ねた。筆者的には広島のお菓子というと「もみじまんじゅう」を想像してしまうのだが、このもみじまんじゅうの中にタコが入っている「たこもみじ」があるのだ。三原に来たのならぜひお土産に買っていきたい。


駅前の通りには、このようにタコのオブジェが並べられている



三原駅前にあるゑびす家本店



これがたこもみじ。中にはタコがクリームチーズにくるまれて入っている

■昔ながらの景観が保たれている竹原
そして次に訪れたのが竹原だ。かつては塩田で栄えた竹原だが、ここにも昔ながらの家がたくさん保存されている。350年前にできた大通を歩く。ここでは電線がすべて地下に埋められているので、かつての景観を保っているのが特徴だ。

ここ竹原にはNHKの朝ドラ「マッサン」で有名になった竹鶴酒造がある。通りにはそのお店のほか、重要文化財となっている家々もある。


ここが竹鶴酒造。昔ながらの家並み



重要文化財である松坂家住宅も

■造り酒屋で大正おけを使ったお酒を堪能
竹原で最後に訪ねたのは日本酒の銘柄「龍勢」を作る藤井酒造だ。ここでは大正時代のおけを復活させての酒造りを始めたのが特徴だ。日本酒は菌が重要。大正時代のおけには、昔からの“素敵な菌”が眠っているので味がまったく違うのだそう。いまではフルーティな日本酒が好まれているが、これは科学的に必要な菌を入れているので同じような味ができる。しかし昔のおけにはどんな菌がいるのかわからないが、とても味のあるお酒ができるそうだ。

造られるお酒はそのときの菌の状態によるので、「昔ながらの作り方では同じような酒ができるわけがない。でもそれが酒造りの面白さ」と語る、藤井酒造の代表取締役である藤井善文さん。「そのまま飲めるのが醸造酒。ワインがダメだからブランデーを作ったし、ビールがダメだからウイスキーを作った。一番複雑な作りをするのが醸造酒」とも。


ここが藤井酒造



「酒蔵交流館」も併設されており、造られているお酒のほか、おちょこやとっくりなども購入できる



藤井酒造では「八反」「八反錦」という米を使って日本酒を造っている



これが大正時代に造られたおけ



事務所では試飲もさせていただいた。この金のラベルの龍勢はシリアルナンバー付きの限定酒。某ネットショップでは2万2,000円の値が付いていた

■広島の夜は牡蠣に始まり牡蠣に終わる
夜は広島駅近くまで戻り、さらに牡蠣づくしの料理を食べることに。ここでは牡蠣を食べ歩く“はしご牡蠣”で、裏路地にある名店を訪ねた。まずはお好み焼を食べられる広島赤焼えんへ。牡蠣がたっぷり乗っている「マシマシ牡蠣(お好み焼)」(2,315円:税別)をいただく。とても大きなお好み焼きなので3人でシェアしたが、プリプリの牡蠣はとてもおいしかった。やはり本場で味わうと違うものですな~。このほかにも宮島ビール」(621円:税別)に、ご当地ものの瀬戸田レモンハイ(538円:税別)も。瀬戸田レモンハイはスッキリとしたレモンの風味が生きているチューハイ。これも押さえておくべきでしょう。


ここが広島赤焼えん



たっぷりの牡蠣をまず炒めて



お好み焼の上にどーーん



宮島ビールと瀬戸田レモンハイで乾杯

次に訪ねたのはEARTORYというおしゃれなお店。ビールの種類が豊富なのが特徴で、メニューには世界各地のビールがずらっと並んでいる。おつまみとしていただいたのは「広島県産牡蠣の天ぷら」(1コ150円:税別)、「広島県産牡蠣のアヒージョ」(780円:税別)、それに牡蠣グラタン(880円:税別)だ。ふっくらとした牡蠣の天ぷらを頬張ると、中からアツアツの牡蠣汁が。これはお酒が進む。アヒージョ、グラタンとこれまた牡蠣。何ともおいしいじゃないですか。

そして広島の夜はふけていった。


ここがEARTORY。外見がおしゃれ



奥左が牡蠣グラタン、その右が牡蠣のアヒージョ、手前が牡蠣の天ぷら



これが飲んだビールたち


(後編へ続く)

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