2018年5月、ひとつの衝撃的な研究成果が英医学雑誌「GUT」に報告された。中国で「フアイア」というキノコ由来の生薬が、肝臓癌の延命に効果があったというのである。フアイアは、槐(えんじゅ)の老木に寄生するキノコで中国では、このフアイアから作り出した薬「フアイア(顆粒)」が1992年より抗がん剤として認可されている。このフアイアを日本でも医療用薬品として認可してもらうという動きがある。
今回、日本フアイア研究会の「フアイア」記者会見およびセミナーが開催されたので、その様子をレポートしよう。
※薬としてのフアイアは、フアイア(顆粒)と表記
■フアイアのために研究会を発足
今年10月、福岡で開催された「第57回日本癌治療学会学術集会」では、フアイア研究会として中国におけるフアイア(顆粒)の抗がん作用に関する研究結果を報告した。その際、多くの反響があったことから、日本フアイア研究会は今回の記者会見とセミナーを開催するに至ったとのことだ。
松井淳一氏は東京歯科大学副学長かつ教授であり、同大市川総合病院外科部長としても、長年、肝臓癌や膵臓癌の治療を専門にしてきた。癌治療のエキスパートだ。
「日本フアイア研究会は、フアイアを日本で医療用薬品として認可してもらうことを目的として発足した研究会でございます。研究会がどのように飛躍していくのか、私自身も楽しみにしている研究会です。」と松井理事長。
■フアイア先進国の中国で当たり前に使われているフアイア(顆粒)
前述の通りフアイアは槐(えんじゅ)の老木に寄生するキノコだ。そのキノコの菌糸体から抽出したエキスに、様々な成分を添加して薬にしたものが「フアイア(顆粒)」と呼ばれる抗がん剤だ。中国では、政府が産官学の連携でフアイア(顆粒)の開発を行い、抗がん剤としての正式認可が1992年におりた。
現在の中国では、フアイア(顆粒)は肝臓がん、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんで医療保険が適用されている。肝臓がんに至っては、手術後6か月の医療保険が適用される。また一部の地域では、膵臓がん、前立腺がん、膀胱がん、甲状腺がんにも医療保険として適用されている。
しかし日本では、フアイア(顆粒)は抗がん治療薬ではなく、食品として輸入され、流通しているのが現状だ。そこで日本フアイア研究会は、フアイア(顆粒)の抗がんエビデンスを積み重ねることによって、日本でも中国のように抗がん剤として正式に認可を受けられるように働きかけていきたいとの考えだ。
■日本でもフアイアを正式な抗がん剤としての承認を目指す
引き続き、日本フアイア研究会学術担当理事の新見正則氏からフアイア(顆粒)についての説明があった。同氏は公益財団法人愛世会理事長・帝京大学大学院東洋医学講座指導教授で、血管外科・移植免疫学・漢方医学のエキスパートだ。2013年に「マウスとオペラ」の実験でイグノーベル医学賞を受賞したことでも知られている。
新見理事によれば、2018年5月、英国の権威ある医学専門誌「GUT」によれば、中国で肝臓がん手術後の患者約1000例にフアイア(顆粒)の大規模ランダム化臨床試験を行った結果、フアイア(顆粒)を摂取した人と、そうでない人とでは生存率で明らかな差(有意差)が確認できたという。そして現在も、各種がん治療、およびがん以外の領域について、医療界における「エビデンスレベル」トップの臨床研究が進行されているとのことである。
前述のようにフアイア(顆粒)は承認されていないため、日本国内ではただの食品でしかない。日本フアイア研究会では、ファイア(顆粒)の抗がん作用に関してのエビデンスレベルを上げていくことで、ファイア(顆粒)を抗がん剤の新薬としての日本で正式に認可を得るための活動を推進していく。
ここでひとつ注意してもらいたいのは、現時点で健康食品扱いとなっているフアイア(顆粒)のがん治療への効果は、日本癌治療学会として正式に検証したものでないため、日本癌学会が推奨しているものではないという点である。承認を受けるための正式な臨床試験を実施し、効果があると認められて初めて推奨するかどうか検討される。つまり、現時点では日本においてフアイア(顆粒)で取り沙汰されている各種効能は、保証されるものではないという点に注意してほしい。こうした不安を拭い去るためにも、正式な承認を1日でも早く実現してもらいたいところだ。
今後フアイア(顆粒)が日本で効果のある抗がん治療薬として認可されれば、これからのがん治療を一変させるような一石を投じる可能性がある。そういう意味で、今後の日本フアイア研究会の活動に注目していきたい。
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