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働く個人は、コロナ禍をきっかけに、仕事に「意義」と「没頭」をますます求め始め、心から夢中になれる異領域に挑戦する人が増えて、異業種・異職種を選択する「越境転職」の割合が過去最高になっている。

企業は、コロナ禍でも人材不足。転職支援サービス『リクルートエージェント』を利用する企業へのアンケートによれば、7割もの企業が中途採用計画を満たせていない。また別の調査では、ビジネスモデルの変化等に伴い「求める人材の要件を、3年前と比較して変更した」企業のうち、「人材要件を全面的に変えた」と、「重視する項目を絞り新しい観点の項目を加えた」企業を合わせると約5割に上るなど、変化が加速している。

企業も個人も成長の機会を求め異業種・異職種に越境をしだしている。
そうした状況を踏まえ株式会社リクルートは昨年12月、「コレカラ会議」を開催。8回目のテーマとして、コロナ禍で広がる「ディグるキャリア」について事例とデータを交えながら兆しを語った。担当者に取材したコメントを交え、ディグるキャリアを紹介しよう。

■企業の再成長を促すカギ
株式会社リクルート HR統括編集長 藤井 薫氏によれば、ディグるキャリアの「Digる」には、『自らの経験をDigる(深く掘り起こす)ことで、新たな業界・職種・キャリアに挑戦する』という意味があるという。

いま、社会人インターンシップ・キャリア採用・派遣の領域で、ディグるキャリアの実践者が増えつつある。Digるとは、掘り起こす・宝物を掘り当てるの意。ディグるキャリアの実践者は、自らの宝物の探索者でもある。これまでの経験やスキル、感情を深くDigることで、心から夢中になれる異領域へ挑戦する人が増加した。背景には、個人のキャリア観の変容や、構造的な人材不足による異能人材への企業の期待がある。
実際、コロナ禍の転職市場では、業種や職種を越えた“越境転職”の割合は過去最高であり、コロナ禍で将来のキャリアを見つめ直した人は6割近くにのぼる。

藤井 薫氏
「ディグるキャリアという大きな潮流は、構造的な人材不足ニッポンにおいて、個人に眠る才能を掘り起こして、企業の再成長を促すカギになると思っています。」

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■コロナ禍でも人材不足!変わる雇用市場
コロナ禍でも人材不足は解消されていない。株式会社リクルートの転職支援サービス『リクルートエージェント』を利用している企業へのアンケートによれば、中途採用計画を満たせていない企業は7割もある状況だ。

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事業拡大等に不可欠な人材獲得に向けて、人材要件の変容が加速している点も見逃せない。
実際、越境人材の獲得に向けて、雇用市場は大きく変化している。

社会人インターンシップ領域では「お試し機会」を提供する企業が増加傾向にある。会社を越えて成長企業に参画できるサービス『サンカク』の累計利用社数は2015年から6年で8倍になった(※1)。

キャリア採用領域では、いまや「異業種×異職種」の転職が最多パターンになっている。転職支援サービス『リクルートエージェント』の転職決定者分析(2009年度〜2020年度)(※2) を見ると、雇用市場は「異業種×異職種」への転職が増加。2009年度の時点では、「異業種×異職種」の転職は24.2%だったが、2020年度では36.1%となり、他の3つの転職パターンを上回る。

派遣領域ではリスキリング(Re-skilling:職業能力の再開発・再教育、近年は特にデジタル系職種に転換するための職業能力再開発という文脈で使われることが多い)(※3)を前提とした異業界や異職種からのキャリアチェンジが増加。技術者・ITエンジニアの人材総合サービスを展開する『スタッフサービス・エンジニアリング』のリスキリングを前提とした新規採用決定数は、2019年と比較して増加している(※4)。

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※1 株式会社リクルート『サンカク』累計利用社数(2015年5月を1とした推移)
※2 株式会社リクルート「転職決定者データ分析 10年間で起きた中途採用市場の構造変化」(2021年8月)
(https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20210805_hr_02.pdf)
※3 株式会社リクルート リクルートワークス研究所「リスキリング 〜デジタル時代の人材戦略〜」(2020 年 9 月)
(https://www.works-i.com/research/works-report/item/reskilling2020.pdf)
※4 株式会社スタッフサービス『スタッフサービス・エンジニアリング』
・ 新規採用決定数:2019年の新規採用決定数の平均を1とした場合
・ 微経験の定義:理系出身者で実務経験のない方や、周辺領域も含め半年以上(〜おおむね3年未満)の経験のある方(文理問わず)などを指す。


■「ディグるキャリア」を加速!雇用市場の3つの変容
個人は自身の経験を、企業はジョブや求めるスキルを、微細に掘り起こすことが、個人に眠る才能を掘り起こし、個人と企業の再成長を促すことに繋がる。

「ディグるキャリア」を加速する雇用市場の3つの変容として、下記があげられる。
1. 転職以前の「お試し機会」拡大
社会人インターンシップ領域における「お試し機会」の拡大によって、自身の経験の活用機会や、自らが夢中になれる貢献機会への意外な気づきが拡大している。

2. 転職活動での「微経験採用」拡大
キャリア採用領域では、業界・職種経験によらない微細な経験を掘り起こし、異能スキルを評価する、新たなものさしが拡大している。それにより多様な出会いが拡大している

3. リスキリングの拡大
培ってきた経験に加え、新たなスキルを強化する入社後の学び直しが拡大している。それにより、入社後活躍が加速している。

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■自分の才能を開花できるチャンスに気づける
よい機会なので、今回、『ディグるキャリア』について株式会社リクルート HR統括編集長の藤井薫さんにメールで取材した。

編集部:ディグった転職は従来の転職と比べてどんなメリットがありますか?
藤井:自身の経験やスキル・感情を深くディグることのメリットは、異業種や異職種にも新たな選択肢が増え、自分の才能を開花できるチャンスに気づけることです。ディグることで気づいた、「やりがい」「やりたいこと」など自分の心の声に従って、夢中になれる異領域へキャリアチェンジすることは、自身の再成長を促す一歩に繋がります。

転職時には往々にしてスキルを棚卸する重要性は語られますが、ディグるキャリアは感情も深く掘るというのが大きな特徴です。何ができるかだけでなく、何をしているときにワクワクするかというのは、異領域に越境する時の大きな駆動力になります。

編集部:逆に今後ディグらない転職へのリスクはありますか?
藤井:外の流行にだけ目を奪われ、自分の持ち味や感情を見つめないまま転職をしてしまう事は大きなリスクです。なぜなら、自分の持ち味を活かせない業界や会社・職場に仮に転職できたとしても、自分の才能が開花する可能性が低くなってしまい、結果としてやりがいや更なる自己成長の意欲が失われてしまうからです。特に技術系のトレンドはとても速いので、自分の持ち味を原動力にしないと、変化に振り回されて疲弊してしまう事になりかねません。

編集部:具体的にディグるキャリアは、なにから始めればよいですか?
藤井:社外の勉強会に参加する、GitHubなどのラーニングコミュニティ(勉強会)に入る、近くの部署のプロジェクトを手伝うなど、異なる領域で自分の持ち味がどれぐらい活かせそうか、また喜ばれるかを試すことが初めの一歩になると思います。今なら社会人インターンシップのように会社を辞めずに試す形もありますし、派遣ではスキル研修を備えているところもあるので、そういった機会を見つけて、新たなキャリアを始めるのもアリでしょう。

編集部:Digるキャリアに興味がある人へ、ひと言いただけますか?
藤井:マイクロソフトの3代目社長のナデラさんは、新たなマイクロソフトに生まれ変わるために、achieverを評価するのではなく、learnerを評価していこうと人事制度を変えたそうです。これまでの既存の延長線上で高い達成率を実現すること以上に、新しい変化に対して挑戦し、何を学んだかを自ら推進できる人が重要だと考えたのです。

つまり変化の時代は、新しい姿勢や能力が必要だという事です。そこで、キャリアを拓いていくために伝えたい大切なことが2つあります。1つは変化に適応していくように学び、試し、挑戦し続ける事。そしてもう1つは、自らの持ち味を深く見つめ続ける事。自分は何をしているときにワクワクし、どんな事で貢献しているときに周りが喜んでくれているか。変化の時代にも、ぶれない自分の軸を見つめ続けることが大事なのです。

越境転職時代は、変化に適応し、自らをディグることで、自分にも気づかなかった新たな自分に出会えるキャリアの時代と言えるでしょう。

編集部:ありがとうございました。


新型コロナウイルス感染症によって日常生活が一変してから、我々は長い時間を過ごしている。こんな時だからこそ、一人ひとりが未来に向けて前向きな一歩を踏み出せる日本でありたい。働く個人のキャリア観や企業を取り巻く環境も大きく変化する中、リクルートは一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指し『コレカラ会議』という場を通じて未来に向けた提言を行っている。

「改めて自分自身のキャリアを”ディグる(深く掘り起こす)”」ことは、構造的な人材不足に悩む日本企業において、個人に眠る才能を掘り起こし企業の再成長を促すカギになるかもしれない。コロナ禍で自らのキャリアについて考えている人は、心機一転。ディグるキャリアを目指してみるのも面白いだろう。

株式会社リクルート

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