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2023年11月22日に、「インボイス実施、デジタルインボイスを導入したあとの日本の消費税の将来像」と題したセミナーが開催された。セミナーにはMJS 税経システム研究所 税務システム研究会 客員研究員であり、青山学院大学大学院特任教授も務める 税理士 望月文夫氏が登壇し、解説した。

■インボイス導入のメリットとデメリットは
インボイスとは、英語で「請求書」や「送り状」を意味するが、日本では、消費税の軽減税率制度に関連した制度のことを指す。インボイス制度とは、正式には「適格請求書等保存方式」といい、2023年10月1日から施行された消費税の仕入税額控除の方式だ。

インボイス制度では、売手側である適格請求書発行事業者が、買手側である課税事業者に対して、正確な適用税率や消費税額などを記載した適格請求書(インボイス)を交付し、双方がインボイスを保存することで、消費税の仕入税額控除が適用される。インボイス制度の目的は、複数の消費税率が存在する中で、取引における正確な消費税額と消費税率を把握し、消費税の計算や納付を正しく行うことにある。

消費税が導入されたとき望月氏は国税庁で国際税務を担当していたそうだが、海外の人から「なぜインボイスを導入しないのか。入れなければ脱税やり放題じゃないか」と責められたという。当時の税務調査会でも入れた方がよいとされていたが、結局34年間インボイスなしで過ごしてきた。

「34年間インボイスなしでやってきた日本人はですね、インボイスがないのは当たり前という風に錯覚してしまっている。しかしインボイスは世界各国で実施されている。OECDの38の加盟国が1番問題視しているのが、税収の漏れだ」と望月氏。デジタルインボイスについても、紙のやり取りから電子メール送信、デジタルインボイス実施という流れで実施されている。なおインボイス発行事業者の登録申請件数は、令和5年9月15日の段階で約403万件となっている。

インボイス導入の長所と短所だが、課税取引に関する情報を示すこと、税務当局によるコントロールを可能とすること、買い手の仕入税額控除権の行使を可能とすることが長所となる反面、納税者の事務負担が多くなることが短所としてあげられる。そして今はデジタルの時代。インボイスについてもデジタルインボイスとすれば、適格請求書を電磁的記録で提供することが可能となる。デジタルインボイスを導入することについてはコスト削減がいちばんのメリットとなる。シンガポールでは45~92%、オーストラリアでは平均70%のコスト削減が見込めたという。なおデジタル化においては、EUで使われている「Peppol」をベースとして導入することが目指されている。

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MJS 税経システム研究所 税務システム研究会 客員研究員/税理士/青山学院大学大学院特任教授 望月文夫氏


■デジタルインボイスの採用と将来
望月氏は「関係者が日本はデジタル後進国であることを認識すべきだ」と語る。「いまこそインボイス制度の導入を契機として、できるだけ多くの課税事業者がデジタルインボイス採用すべきだ」とも。「デジタルインボイスを採用したら次のステップとして商取引全体のデジタル化に向かう。そして各社で新のデジタルトランスフォーメーションが達成できたとき、国際競争力の高い企業となっていく」(望月氏)。

加えて今では電子帳簿保存法(電帳法)が実施され、帳簿や書類の電子取引が義務付けられた。デジタルインボイスについても電帳法と連携することで、会計税務業務のデジタル化によるコストダウンが見込まれる。また行政機関としても、受発注から請求、決済に至る全ての商取引についてデジタル化してほしいと考えている。「中小企業でこれができれば、日本復活のきっかけになるかもしれない」(望月氏)。

「日本では感情的に消費税について議論しているところがある」と望月氏は語る。「将来は20%になるはず。これを阻止するべきだ」と。しかし消費税率の引き上げが全て悪なのではなく、本来どのような消費税制にすべきかを幅広く議論すべきだ。

「インボイスの廃止は国際的な視点では意味はない。諸外国ではデジタルインボイスを導入することで、生産性の向上を実現している。デジタル庁によるPeppol導入を早め、電帳法の改正を含めることも、効率化の面から重要になるだろう」と望月氏は語った。

インボイス導入を契機にデジタルインボイスの導入を見据え、さらなる生産性の向上を目指すことが必要になっていくだろう。
テクニカルライター 今藤 弘一


株式会社ミロク情報サービス
MJS 税経システム研究所

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