以前から耳にしていた、はりけ~んず前田のオタクコントLIVE「登風(のぼるかぜ)」が面白いという噂が本当かどうかを確かめるため、去る9月15日の東京ルミネ公演に行って参りました。この手のオタク芸人系LIVEは過去に何度も行っているのですが、大概はどこかの市民ホールとか住宅街に紛れ込んでる小劇場といったノリが多い中、今回の「登風」は新宿の駅ビルにある「ルミネtheよしもと」で開催。完全に別世界の立派さです。入場時、観客にオロナミンCがサービスされるというおもてなしぶりも含めて上場企業の貫禄みたいなものを感じてしまいました。
座席数458というこの劇場はお笑い専門なのですが、普通に演劇が行われても全く遜色がない劇場でありました。舞台左右には大きなスクリーンが設置されており、開演前には吉本のアイドルユニット「YGA」(※1)のPVが流されていたり。
(※1)YGA:「よしもとグラビアエージェンシー」の略称。東京吉本新喜劇に出演している8名の女優によるグラビアアイドルユニット(らしい)。各メンバーのルックスはなかなかインパクトがあり、ある意味一度見たら忘れられない。
ちなみに「登風」の観客はほとんどが男性で、私が確認できた女性と思われる人は10人程度でした。女性の比率に関しては漫才のネタで2%とか、前田氏のブログで1割とか諸説がありますが、要は男だらけであったということであります。
観客の年齢層は20代後半~40代といった感じ。30代以上と思われるベテラン勢が目立っていたのが印象的でした(10代もいたようですが全体からみるとごく少数)。アニメをつまみに酒を呑むというライフスタイルが想像されるような層で埋め尽くされた客席は、一種独特の雰囲気を醸し出しておりました。
LIVEは前田氏の1人コントからスタート。アニオタ(※2)ならではのあるあるネタの連発で観客は早くも大盛り上がりです。たむらけんじがなんでプリキュアに出れんねんとか、オリンピックのせいでアニメの録画を失敗して悲しいとか、業界的なことから個人的なことまで思いつくネタをふんだんに投入。LIVEはコント、漫才、トークコーナー、ゲームコーナー、カラオケ大会と盛りだくさん。約3時間という長丁場でしたが、途中で退屈することなく楽しむことができました。
(※2)アニオタ:「アニメオタク」の略称。前田氏は自分のことをアニオタと称している。他人にそう呼ばれることはあっても、自らをアニオタと呼ぶ人間はそうはいないところからも前田氏の本気っぷりがうかがえる。
一連のネタはアニメ関連の情報(声優・アニソン含む)にある程度精通していないと楽しめないものばかりで、予想以上に見る人を選ぶ内容になっていました。私は元ネタをほぼ理解できたのですが、自分が見てないアニメのネタを振られるととっさに反応できないという場面も度々発生。「登風」は前田氏が見ているアニメを観客も見ている(知っている)ほうが楽しめると実感した次第です。
ちなみに元ネタとして使用されたアニメの一部を以下に書いてみます。
・『YAWARA!』(1989)
・『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)
・『バトルアスリーテス 大運動会』(1997)
・『Di Gi Charat』(1999)
・『ONE PIECE』(1999~放送中)
・『マリア様がみてる』(2004)
・『創聖のアクエリオン』(2005)
・『極上生徒会』(2005)
・『苺ましまろ』(2005)
・『びんちょうタン』(2006)
・『天元突破グレンラガン』(2007)
・『Yes!プリキュア5GoGo!』(2008)
・『おねがい♪マイメロディ きららっ★』(2008)
・『ひだまりスケッチ×365』(2008)
・『To LOVEる -とらぶる-』(2008)
・『きらりん☆レボリューション STAGE3』(2008)
・『紅』(2008)
前田氏は現役でアニメを見ている人物だけに最近のアニメネタも多く見受けられました。このあたりはそんじょそこらのアニメ好き芸人とは一線を画しているといっていいかと思います。若干少女向けアニメが多いようにも思えましたが、それは自身が『おねがい♪マイメロディ きららっ★』に声優(バク役)として出演していることの影響もあるのかも?(ただ単に好きなだけかも知れませんが)。
色々な面でハードルが高いLIVEにも関わらず観客の反応はかなりのもので、ネタに対するコール&レスポンスや歌に合わせたサイリュームの振りっぷりなどには相当な年期が感じられました。細かいネタにも敏感で「このネタが分かる人間がこんなにいるのか!」と驚いてしまうこともしばしば。普段は女性ばかりというルミネの劇場を埋め尽くした男性オタの猛者ぶりだけでも一見の価値ありでした。
ゲストとして出演した女性声優も新谷良子、福井裕佳梨、稲村優奈、野中藍といったアイドル系を取り揃えたなかなか豪華な面々。本職のお笑い芸人と声優のコンビによるコントの出来は、正直カップリングによってかなり差がありましたが、一定水準はギリギリ保たれていたと思います。
中でも特に素晴らしかったのが新谷良子の女優っぷり。ほぼぶっつけ本番で事前のネタ合わせが1回だけだったとは思えない安定ぶりもさることながら、舞台映えする発声の良さやネタの完成度は今回の演目の中でも1・2を争う内容だったと思います。この新谷良子×はりけ~んず前田のコンビは、今後真剣にお笑いユニットとしての活動を視野に入れるべきではないかと思った次第。あと福井裕佳梨の天然ぶりは異常(笑)。
コントや漫才の合間には劇場のスクリーンを有効活用した映像企画も流れてました。その内容は前田氏が愛車を痛車にするためブロッコリーに協力を要請しに行ったり、マンガ『べしゃり暮らし』への出演交渉をしに原作者のオフィスに押しかけたりといったもの。それらは芸歴20年のはりけ~んず前田が今やるようなものとは思えない、まるで若手芸人が低予算バラエティで強要されるような内容でありました。そんな企画をキッチリこなす前田氏のプロ根性に本人の「登風」への熱中ぶりを感じた次第。
個人的にはそれなりに満足できたLIVEでしたが、点数的には65点くらいだったように思います。ネタの内容が偏るのは仕方がないのですが、できればネタの善し悪しを客観的に判断できるスタッフと協力して、もう少し観客の温情に甘えなくても笑える内容であればもっと良かった気がします。あとネタ合わせなどのリハーサル回数も増やして純粋に完成度を上げて欲しいとも思いました(特にはりけ~んず前田本人)。笑ってごまかすというのも度が過ぎると学芸会っぽくなりますので、プロとして締めるところは締めて欲しいものです。
こういう活動に対してアキバ系の皆さんは生暖かく応援するのが常のようになってますが、前田氏のことを真剣に応援するならば、私は気になった点を正直に語ることも必要だと思っています。とりあえず「登風」にはまだまだ伸びしろがあるはずですので、改善すべきところは改善して、もっと面白いものを見せてくれるLIVEになってくれればと思っております。はりけ~んず前田の芸人魂にもっと火が付きますように(願)。
■カオス通信バックナンバー
・93万部「ヤンマガ」vs 1.5万部「IKKI」の意外な共通点
・50歳オーバーのアキバ系が萌えている
・映画『デトロイト・メタル・シティ』の評判はホンモノか?
・女装コスプレは市民権を得られるのか?
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独女通信
レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
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座席数458というこの劇場はお笑い専門なのですが、普通に演劇が行われても全く遜色がない劇場でありました。舞台左右には大きなスクリーンが設置されており、開演前には吉本のアイドルユニット「YGA」(※1)のPVが流されていたり。
(※1)YGA:「よしもとグラビアエージェンシー」の略称。東京吉本新喜劇に出演している8名の女優によるグラビアアイドルユニット(らしい)。各メンバーのルックスはなかなかインパクトがあり、ある意味一度見たら忘れられない。
ちなみに「登風」の観客はほとんどが男性で、私が確認できた女性と思われる人は10人程度でした。女性の比率に関しては漫才のネタで2%とか、前田氏のブログで1割とか諸説がありますが、要は男だらけであったということであります。
観客の年齢層は20代後半~40代といった感じ。30代以上と思われるベテラン勢が目立っていたのが印象的でした(10代もいたようですが全体からみるとごく少数)。アニメをつまみに酒を呑むというライフスタイルが想像されるような層で埋め尽くされた客席は、一種独特の雰囲気を醸し出しておりました。
劇場ロビーで販売していた「登風」のDVD。私も思わず買ってしまいました。はりけ~んず前田の某聖闘士なコスチュームが目印です。価格は3,675円(税込)。 | ジャケット裏はこんな感じ。新谷良子が漫才の相方になったり、折笠富美子が性格キツ目のアニメイトの店員をしたり、清水愛が面接でしくじったりしております。 |
LIVEは前田氏の1人コントからスタート。アニオタ(※2)ならではのあるあるネタの連発で観客は早くも大盛り上がりです。たむらけんじがなんでプリキュアに出れんねんとか、オリンピックのせいでアニメの録画を失敗して悲しいとか、業界的なことから個人的なことまで思いつくネタをふんだんに投入。LIVEはコント、漫才、トークコーナー、ゲームコーナー、カラオケ大会と盛りだくさん。約3時間という長丁場でしたが、途中で退屈することなく楽しむことができました。
(※2)アニオタ:「アニメオタク」の略称。前田氏は自分のことをアニオタと称している。他人にそう呼ばれることはあっても、自らをアニオタと呼ぶ人間はそうはいないところからも前田氏の本気っぷりがうかがえる。
一連のネタはアニメ関連の情報(声優・アニソン含む)にある程度精通していないと楽しめないものばかりで、予想以上に見る人を選ぶ内容になっていました。私は元ネタをほぼ理解できたのですが、自分が見てないアニメのネタを振られるととっさに反応できないという場面も度々発生。「登風」は前田氏が見ているアニメを観客も見ている(知っている)ほうが楽しめると実感した次第です。
ちなみに元ネタとして使用されたアニメの一部を以下に書いてみます。
・『YAWARA!』(1989)
・『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)
・『バトルアスリーテス 大運動会』(1997)
・『Di Gi Charat』(1999)
・『ONE PIECE』(1999~放送中)
・『マリア様がみてる』(2004)
・『創聖のアクエリオン』(2005)
・『極上生徒会』(2005)
・『苺ましまろ』(2005)
・『びんちょうタン』(2006)
・『天元突破グレンラガン』(2007)
・『Yes!プリキュア5GoGo!』(2008)
・『おねがい♪マイメロディ きららっ★』(2008)
・『ひだまりスケッチ×365』(2008)
・『To LOVEる -とらぶる-』(2008)
・『きらりん☆レボリューション STAGE3』(2008)
・『紅』(2008)
前田氏は現役でアニメを見ている人物だけに最近のアニメネタも多く見受けられました。このあたりはそんじょそこらのアニメ好き芸人とは一線を画しているといっていいかと思います。若干少女向けアニメが多いようにも思えましたが、それは自身が『おねがい♪マイメロディ きららっ★』に声優(バク役)として出演していることの影響もあるのかも?(ただ単に好きなだけかも知れませんが)。
色々な面でハードルが高いLIVEにも関わらず観客の反応はかなりのもので、ネタに対するコール&レスポンスや歌に合わせたサイリュームの振りっぷりなどには相当な年期が感じられました。細かいネタにも敏感で「このネタが分かる人間がこんなにいるのか!」と驚いてしまうこともしばしば。普段は女性ばかりというルミネの劇場を埋め尽くした男性オタの猛者ぶりだけでも一見の価値ありでした。
ゲストとして出演した女性声優も新谷良子、福井裕佳梨、稲村優奈、野中藍といったアイドル系を取り揃えたなかなか豪華な面々。本職のお笑い芸人と声優のコンビによるコントの出来は、正直カップリングによってかなり差がありましたが、一定水準はギリギリ保たれていたと思います。
中でも特に素晴らしかったのが新谷良子の女優っぷり。ほぼぶっつけ本番で事前のネタ合わせが1回だけだったとは思えない安定ぶりもさることながら、舞台映えする発声の良さやネタの完成度は今回の演目の中でも1・2を争う内容だったと思います。この新谷良子×はりけ~んず前田のコンビは、今後真剣にお笑いユニットとしての活動を視野に入れるべきではないかと思った次第。あと福井裕佳梨の天然ぶりは異常(笑)。
コントや漫才の合間には劇場のスクリーンを有効活用した映像企画も流れてました。その内容は前田氏が愛車を痛車にするためブロッコリーに協力を要請しに行ったり、マンガ『べしゃり暮らし』への出演交渉をしに原作者のオフィスに押しかけたりといったもの。それらは芸歴20年のはりけ~んず前田が今やるようなものとは思えない、まるで若手芸人が低予算バラエティで強要されるような内容でありました。そんな企画をキッチリこなす前田氏のプロ根性に本人の「登風」への熱中ぶりを感じた次第。
個人的にはそれなりに満足できたLIVEでしたが、点数的には65点くらいだったように思います。ネタの内容が偏るのは仕方がないのですが、できればネタの善し悪しを客観的に判断できるスタッフと協力して、もう少し観客の温情に甘えなくても笑える内容であればもっと良かった気がします。あとネタ合わせなどのリハーサル回数も増やして純粋に完成度を上げて欲しいとも思いました(特にはりけ~んず前田本人)。笑ってごまかすというのも度が過ぎると学芸会っぽくなりますので、プロとして締めるところは締めて欲しいものです。
こういう活動に対してアキバ系の皆さんは生暖かく応援するのが常のようになってますが、前田氏のことを真剣に応援するならば、私は気になった点を正直に語ることも必要だと思っています。とりあえず「登風」にはまだまだ伸びしろがあるはずですので、改善すべきところは改善して、もっと面白いものを見せてくれるLIVEになってくれればと思っております。はりけ~んず前田の芸人魂にもっと火が付きますように(願)。
■カオス通信バックナンバー
・93万部「ヤンマガ」vs 1.5万部「IKKI」の意外な共通点
・50歳オーバーのアキバ系が萌えている
・映画『デトロイト・メタル・シティ』の評判はホンモノか?
・女装コスプレは市民権を得られるのか?
・カオス通信バックナンバー一覧
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独女通信
レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。
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