最大7.2Mbpsの定額データ通信を他社に先駆けて導入し音声通話サービスも開始したイー・モバイル株式会社からHTC製スマートフォン「EMONSTER lite(S12HT)」が発売された。「EMONSTER lite」はOSにWindows Mobile 6 Professional、液晶に大型2.6インチフラットタッチパネルを採用しているが、QWERTYキーの代わりに10キーを備えるなど、先に発売された「EMONSTER(S11T)」に比べてケータイ色が強い端末に仕上がっている。
「EMONSTEER lite」は株式会社NTTドコモ「HT1100」と同じ端末をベースとしているが、「EMONSTEER lite」と「HT1100」との違いはどこにあるのだろうか?
また、音声サービスに参入し好調な成長を続けるイー・モバイルは、今後はどのような展開を考えているのだろうか?
今回はEMONSTERシリーズの担当者であるイー・モバイル株式会社 経営戦略本部 商品企画部 中村 力 氏に、同シリーズを発売するまでの経緯と同社のモバイル戦略についてうかがってみた。
■2台目需要を想定した端末
編集部:まずはじめに「EMONSTER」の発売までの経緯を教えていただけますか?
中村氏:今年の春に音声通話サービスをはじめるときに、EM-ONEの流れをどのように継承していくかをまず考えました。その時点で「EMONSTER lite」も候補にあがっていましたが、EMONSTER(S11T)のチルトという動きがお客様に目で見てわかりやすく、イー・モバイル初のスマートフォンとしてインパクトのある商品だと考え、最初に発売することになりました。
編集部:「EMONSTER」という名称の由来を教えていただけますか?
中村氏:【EM Net Smart Terminal】の略で、フルスペックのQWERTY配列のキーボード、GPSやBluetooth、無線LANも内蔵されていることから、"ポケットから出てくる最強のインターネット/ビジネスツール"というイメージでネーミングしました。
編集部:「EMONSTER」の売れ行きはいかがですか?
中村氏:お陰様で好評です。街中で使用している人を見かけるようにもなってきました。
編集部:ターゲットしては、どのあたりのユーザーを想定されてますか?
中村氏:ITリテラシーの高い人です。なかなか一般のお客様がこのQWERTY配列のキーボードを使うというのも難しいと思いますし、このスタイルでスマートフォンというのもなかなかわかっていただけないと思います。
編集部:ユーザーの反響はいかがでしょうか?
中村氏:そうですね。コアユーザーを中心に、多くの反響をいただいています。弊社の場合には料金もほぼ定額で、あれしちゃ駄目、これしちゃ駄目という規制がなく、「好きに使ってください」というスタンスで提供させていただいています。そもそもITリテラシーの高い方はご自身でカスタマイズされるので、そういう面でも好評だと聞いています。
編集部:EMONSTERのユーザーは、どのような使い方をされている人が多いでしょうか?
中村氏:やはり会社のメールを読まれている方が多いですね。あとはカスタマイズされている方がわりと多いです。
具体的には、「ナビタイム」や「Googleマップ」を使われている人がけっこういるようです。パソコンを使っている人であれば、あまり変わらない感覚で触れる端末なので、その点はケータイよりも便利だと思います。
編集部:「EMONSTER lite」についてですが、こちらの端末が販売されるまでの経緯を教えていただけますか?
中村氏:スマートフォンを使ってみたいが「EMONSTER」のような端末は扱いづらいという人の敷居を下げる意味で投入いたしました。
そういう方にとっては「EMONSTER」のようなQWERTY配列のキーボードではなく、ケータイライクな10キーのほうが扱いやすいと考えたからです。
編集部:ターゲットとしては、ケータイからの乗換ユーザーも視野に入れている感じでしょうか?
中村氏:そうですね。あと我々は2台目の端末としての市場も狙っているところがあります。ふだんはケータイ、何かあるときはEMONSTERという感じです。EMONSTERはタッチパネル式で、普通のケータイにできない部分を補えますので……。
編集部:「EMONSTER lite」もHTCさんの端末ですが、海外の端末を国内で販売するにあたり、苦労された点はどこですか?
中村氏:そうですね。電話の部分は世界標準ですが、日本語化の部分はわりと苦労しましたね。
社内的なところでいえば、ネットワーク関連ですね。「EMnet」との連携の部分が難しかったです。実は発売の2週間前まで天気表示がうまく出ないなど、けっこうギリギリのスケジュールでやっていました。
■iPhone対抗端末としてのEMONSTER lite
編集部:「EMONSTER lite」はドコモさんも同じような端末を発売されていると記憶しております。差別化と申しますか。独自の機能はどこにあるのでしょうか?
中村氏:中身については、ドコモさんの端末を触ったことがありませんので、何ともいえないところではあります。ただ、カタログやメディアを見ている限りでは、「EMONSTER lite」のほうがドコモさんの端末よりも若干薄いですね。その薄さが手に持ったときにわかるかと思います。
編集部:ボディカラーは毎回ブラックのみですが、何かこだわりがあるのでしょうか?
中村氏:とくにこだわってブラックにしている訳ではありませんが、「スマートフォンなのであまり派手な色はユーザーの嗜好に合わないのでは」と考えました。
たとえば、この端末が真っ赤であったら、操作しているときに「遊んでいるのかな」と思われることがあるのではないかと思います。ボディがブラックですと、どことなく仕事をしている雰囲気が感じられるイメージがあります。
ボディカラーについては、色付きを出そうと思えば出せますが、それはお客様の反応をみてからですね。まずはブラックからということです。
編集部:ボディの表面はラバー加工が施されておりますが、持ったときに滑りづらいからでしょうか。
中村氏:そうですね。あとは触り心地です。またブラックでツルツルにしてしまうと、どうしても汚れが目立ってしまいますので、ラバー加工を採用させていただきました。
編集部:ソフトウェア的な面で、どこか違いはございますか?
中村氏:ドコモさんの端末はiモードメールができないようですが、弊社は事業者のプッシュメールがあります。インターネット接続サービス「EMnet」に加入していただければ、ケータイメール(EMnetメール)が利用可能なほか、パソコン向けのメールも扱えます。
編集部:iPhoneが発売されましたが、ライバルとして意識されているのでしょうか?
中村氏:そうですね。ライバル的には、iPhoneになると思います。「EMONSTER lite」には、「TouchFLO」というiPhoneの操作に対抗する武器もあります。iPhoneのインターフェイスとは違いますが、実際に触ってみると、これまでにないスピーディな操作で非常に使いやすいと思います。
編集部:「EMONSTER lite」もiPhoneのように前評判がけっこう高かった端末と記憶しております。発売日は、iPhoneのように店頭に並ばれたお客様もいたのでしょうか?
中村氏:品切れにまではなっていませんが、発売日に店頭に並ばれたお客様もいたようです。
■次世代のデータ通信とグローバル戦略
編集部:ほかのキャリアでは、HSDPAの次のデータ通信や、次世代PHSを検討されているようです。イー・モバイルにおける次世代データ通信への取り組みを教えていただけますか?
中村氏:詳細についてはまだお話できませんが、現在提供している3.5Gから3.9Gへというような正常進化を考えています。弊社独自というのはおそらくありません。我々の戦略としてはグローバル戦略ですので、世界と同じような動きをしていくはずです。
編集部:その場合でも、やはり定額制というところにはこだわっていきたいでしょうか?
中村氏:そうですね。定額制にはこだわりたいと思っています。
編集部:イー・モバイルの通信サービスでは、最大7.2Mbpsのデータ通信がございますが、EMONSTERのようなスマートフォンでは最大3.6Mbpsです。通信速度が半分なのは、なぜ、でしょうか?
中村氏:そもそも7.2Mbpsのデータ通信サービスはパソコンを想定しています。スマートフォンであれば、画面が小さいので、3.6Mbpsでまずは十分かと考えています。
編集部:エリア的には、もう都内はどこでも使える感じでしょうか?
中村氏:関東・都内はほぼ網羅しています。また、地下に関しては現在拡大準備中ですが、年末頃から徐々に使えるようになる予定です。地方も、政令指定都市および県庁所在地はほぼカバーしています。そのほかの地域はこれからですね。
編集部:本日はお忙しい中、取材に応じていただきましてありがとうございました。
・EMONSTER lite(S12HT)
・イー・モバイル
■これもオススメ!ケータイ最新ニュース
・使えるOffice閲覧!ビジネスの世界標準 BlackBerry 8707h
・iPhoneの対抗馬「EMONSTER lite」の強みと弱み
・iPhoneはケータイじゃない? インターネットのための「iPhone 3G」
・3つのスタイルで高い実用性を誇るスマートフォン「EMONSTER S11HT」 - 2008年7月24日10時00分
・【ケータイラボ】記事バックナンバー
編集部:関口哲司
「EMONSTEER lite」は株式会社NTTドコモ「HT1100」と同じ端末をベースとしているが、「EMONSTEER lite」と「HT1100」との違いはどこにあるのだろうか?
また、音声サービスに参入し好調な成長を続けるイー・モバイルは、今後はどのような展開を考えているのだろうか?
今回はEMONSTERシリーズの担当者であるイー・モバイル株式会社 経営戦略本部 商品企画部 中村 力 氏に、同シリーズを発売するまでの経緯と同社のモバイル戦略についてうかがってみた。
■2台目需要を想定した端末
編集部:まずはじめに「EMONSTER」の発売までの経緯を教えていただけますか?
中村氏:今年の春に音声通話サービスをはじめるときに、EM-ONEの流れをどのように継承していくかをまず考えました。その時点で「EMONSTER lite」も候補にあがっていましたが、EMONSTER(S11T)のチルトという動きがお客様に目で見てわかりやすく、イー・モバイル初のスマートフォンとしてインパクトのある商品だと考え、最初に発売することになりました。
編集部:「EMONSTER」という名称の由来を教えていただけますか?
中村氏:【EM Net Smart Terminal】の略で、フルスペックのQWERTY配列のキーボード、GPSやBluetooth、無線LANも内蔵されていることから、"ポケットから出てくる最強のインターネット/ビジネスツール"というイメージでネーミングしました。
編集部:「EMONSTER」の売れ行きはいかがですか?
中村氏:お陰様で好評です。街中で使用している人を見かけるようにもなってきました。
編集部:ターゲットしては、どのあたりのユーザーを想定されてますか?
中村氏:ITリテラシーの高い人です。なかなか一般のお客様がこのQWERTY配列のキーボードを使うというのも難しいと思いますし、このスタイルでスマートフォンというのもなかなかわかっていただけないと思います。
編集部:ユーザーの反響はいかがでしょうか?
中村氏:そうですね。コアユーザーを中心に、多くの反響をいただいています。弊社の場合には料金もほぼ定額で、あれしちゃ駄目、これしちゃ駄目という規制がなく、「好きに使ってください」というスタンスで提供させていただいています。そもそもITリテラシーの高い方はご自身でカスタマイズされるので、そういう面でも好評だと聞いています。
編集部:EMONSTERのユーザーは、どのような使い方をされている人が多いでしょうか?
中村氏:やはり会社のメールを読まれている方が多いですね。あとはカスタマイズされている方がわりと多いです。
具体的には、「ナビタイム」や「Googleマップ」を使われている人がけっこういるようです。パソコンを使っている人であれば、あまり変わらない感覚で触れる端末なので、その点はケータイよりも便利だと思います。
編集部:「EMONSTER lite」についてですが、こちらの端末が販売されるまでの経緯を教えていただけますか?
中村氏:スマートフォンを使ってみたいが「EMONSTER」のような端末は扱いづらいという人の敷居を下げる意味で投入いたしました。
そういう方にとっては「EMONSTER」のようなQWERTY配列のキーボードではなく、ケータイライクな10キーのほうが扱いやすいと考えたからです。
編集部:ターゲットとしては、ケータイからの乗換ユーザーも視野に入れている感じでしょうか?
中村氏:そうですね。あと我々は2台目の端末としての市場も狙っているところがあります。ふだんはケータイ、何かあるときはEMONSTERという感じです。EMONSTERはタッチパネル式で、普通のケータイにできない部分を補えますので……。
編集部:「EMONSTER lite」もHTCさんの端末ですが、海外の端末を国内で販売するにあたり、苦労された点はどこですか?
中村氏:そうですね。電話の部分は世界標準ですが、日本語化の部分はわりと苦労しましたね。
社内的なところでいえば、ネットワーク関連ですね。「EMnet」との連携の部分が難しかったです。実は発売の2週間前まで天気表示がうまく出ないなど、けっこうギリギリのスケジュールでやっていました。
写真1 EMONSTERは、QWERTY配列のキーを使用できる | 写真2 左がEMONSTER lite、右がEMONSTER |
■iPhone対抗端末としてのEMONSTER lite
編集部:「EMONSTER lite」はドコモさんも同じような端末を発売されていると記憶しております。差別化と申しますか。独自の機能はどこにあるのでしょうか?
中村氏:中身については、ドコモさんの端末を触ったことがありませんので、何ともいえないところではあります。ただ、カタログやメディアを見ている限りでは、「EMONSTER lite」のほうがドコモさんの端末よりも若干薄いですね。その薄さが手に持ったときにわかるかと思います。
編集部:ボディカラーは毎回ブラックのみですが、何かこだわりがあるのでしょうか?
中村氏:とくにこだわってブラックにしている訳ではありませんが、「スマートフォンなのであまり派手な色はユーザーの嗜好に合わないのでは」と考えました。
たとえば、この端末が真っ赤であったら、操作しているときに「遊んでいるのかな」と思われることがあるのではないかと思います。ボディがブラックですと、どことなく仕事をしている雰囲気が感じられるイメージがあります。
ボディカラーについては、色付きを出そうと思えば出せますが、それはお客様の反応をみてからですね。まずはブラックからということです。
編集部:ボディの表面はラバー加工が施されておりますが、持ったときに滑りづらいからでしょうか。
中村氏:そうですね。あとは触り心地です。またブラックでツルツルにしてしまうと、どうしても汚れが目立ってしまいますので、ラバー加工を採用させていただきました。
編集部:ソフトウェア的な面で、どこか違いはございますか?
中村氏:ドコモさんの端末はiモードメールができないようですが、弊社は事業者のプッシュメールがあります。インターネット接続サービス「EMnet」に加入していただければ、ケータイメール(EMnetメール)が利用可能なほか、パソコン向けのメールも扱えます。
編集部:iPhoneが発売されましたが、ライバルとして意識されているのでしょうか?
中村氏:そうですね。ライバル的には、iPhoneになると思います。「EMONSTER lite」には、「TouchFLO」というiPhoneの操作に対抗する武器もあります。iPhoneのインターフェイスとは違いますが、実際に触ってみると、これまでにないスピーディな操作で非常に使いやすいと思います。
編集部:「EMONSTER lite」もiPhoneのように前評判がけっこう高かった端末と記憶しております。発売日は、iPhoneのように店頭に並ばれたお客様もいたのでしょうか?
中村氏:品切れにまではなっていませんが、発売日に店頭に並ばれたお客様もいたようです。
写真3 指先の動きで写真の拡大や縮小が可能 | 写真4「TouchFLO」を使って片手でアプリを起動できる |
■次世代のデータ通信とグローバル戦略
編集部:ほかのキャリアでは、HSDPAの次のデータ通信や、次世代PHSを検討されているようです。イー・モバイルにおける次世代データ通信への取り組みを教えていただけますか?
中村氏:詳細についてはまだお話できませんが、現在提供している3.5Gから3.9Gへというような正常進化を考えています。弊社独自というのはおそらくありません。我々の戦略としてはグローバル戦略ですので、世界と同じような動きをしていくはずです。
写真5 次世代のデータ通信について語る、中村 力 氏 |
編集部:その場合でも、やはり定額制というところにはこだわっていきたいでしょうか?
中村氏:そうですね。定額制にはこだわりたいと思っています。
編集部:イー・モバイルの通信サービスでは、最大7.2Mbpsのデータ通信がございますが、EMONSTERのようなスマートフォンでは最大3.6Mbpsです。通信速度が半分なのは、なぜ、でしょうか?
中村氏:そもそも7.2Mbpsのデータ通信サービスはパソコンを想定しています。スマートフォンであれば、画面が小さいので、3.6Mbpsでまずは十分かと考えています。
編集部:エリア的には、もう都内はどこでも使える感じでしょうか?
中村氏:関東・都内はほぼ網羅しています。また、地下に関しては現在拡大準備中ですが、年末頃から徐々に使えるようになる予定です。地方も、政令指定都市および県庁所在地はほぼカバーしています。そのほかの地域はこれからですね。
編集部:本日はお忙しい中、取材に応じていただきましてありがとうございました。
・EMONSTER lite(S12HT)
・イー・モバイル
■これもオススメ!ケータイ最新ニュース
・使えるOffice閲覧!ビジネスの世界標準 BlackBerry 8707h
・iPhoneの対抗馬「EMONSTER lite」の強みと弱み
・iPhoneはケータイじゃない? インターネットのための「iPhone 3G」
・3つのスタイルで高い実用性を誇るスマートフォン「EMONSTER S11HT」 - 2008年7月24日10時00分
・【ケータイラボ】記事バックナンバー
編集部:関口哲司